理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-02
会議情報

ポスター発表
当院における脊椎圧迫骨折患者の離床と歩行獲得経過について
岩佐 志歩館 博明庄野 泰弘
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに、目的】 脊椎圧迫骨折における保存療法は、画像所見で骨折の程度を把握し急性期の安静臥床後、患者の状態に応じてコルセットを装着しリハビリテーション(以下、リハビリ)が開始される。当院においても、患者の状態に応じて離床しリハビリによってADLの拡大に取り組んでいる。しかし、離床から退院に至るまでの歩行獲得経過に不明な点も多い。今回、当院における脊椎圧迫骨折患者の離床と歩行獲得経過について検討を行った。【方法】 2009年1月から2012年3月までに入院加療した65歳以上の脊椎圧迫骨折患者45名(平均82.0±6.6歳)を対象とした。入院前は全例自宅で生活し、歩行は独歩もしくは伝い歩きであった。退院時の歩行レベルによって歩行自立群(自立群:27名)と歩行介助群(介助群:18名)に分類し、年齢、受傷椎体、受傷椎体数、圧潰率、コルセットの種類、離床までの期間、リハビリ開始までの期間、歩行開始までの期間、入院期間、リハビリ開始時の歩行能力、リハビリ開始2週目の歩行能力、退院時の歩行能力、退院時の転帰先につき電子カルテより後方視的に比較検討した。なお、歩行レベルは車椅子、歩行器歩行、杖歩行(介助)、杖歩行(自立)、独歩の5項目に分類した。また、統計処理にはunpaired t-testとカイ二乗検定を使用した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に基づき、個人が特定されないように個人情報の保護に配慮して検討を行った。【結果】 受傷椎体数(自立群:1.6±1.1椎体 vs 介助群:3.1±2.4椎体 p<0.01)、離床までの期間(自立群:1.7±2.3日 vs 介助群:3.9±4.8日 p<0.05)、歩行開始までの期間(自立群:5.9±4.7日 vs 介助群:11.2±6.2日 p<0.01)、入院期間(自立群:34.5±16.3日 vs 介助群:46.0±15.9日 p≦0.01)、に有意差があった。年齢、受傷椎体、圧潰率、コルセットの種類、リハビリ開始までの期間、リハビリ開始時の歩行能力に差はなかった。リハビリ開始2週目の歩行能力は、自立群では杖歩行(介助)が多かったのに対し、介助群では歩行器歩行が多かった(p<0.05)。退院時の歩行能力は、自立群では杖歩行(自立)以上であったのに対し、介助群では杖歩行(介助)が多かった(p<0.05)。転帰先は、自立群では全例自宅退院したのに対し、介助群では大部分が回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期)への転院を要した(p<0.05)。【考察】 当院の傾向として、受傷椎体数が少なく早期離床が可能であった患者は、リハビリ開始前より病棟での歩行を開始していたためリハビリ開始と同時に積極的な歩行練習を行うことが可能であり、リハビリ開始2週目には杖歩行(介助)、退院時には杖歩行(自立)もしくは独歩で自宅退院した。また、入院期間も短かった。それに対し受傷椎体数が多く離床までに時間を要した患者は、リハビリ開始後から歩行練習を行い、リハビリ開始2週目には歩行器歩行、退院時には杖歩行(介助)と歩行獲得までに時間を要したため回復期へ転院となった。受傷椎体数、離床までの期間、リハビリ開始2週目の歩行能力は、退院時の歩行レベルや転帰先、入院期間の指標になると考えられる。今後は、離床や歩行獲得までの経過に疼痛や併存疾患などがどのような影響を及ぼしているのかを含めて検討を重ねていきたい。【理学療法学研究としての意義】 脊椎圧迫骨折の保存治療は、安静臥床後、リハビリテーションによってADLの拡大を目指すのが一般的であるが、離床から歩行獲得経過に不明な点が多かった。歩行獲得までの経過を明確にすることで、患者の歩行レベルや転帰先を早期に予測する判断材料となり得る。

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top