理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-02
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ポスター発表
回復期病棟脳卒中患者におけるFIM歩行項目とMOAの関係とその時系列変化
~ロジスティック回帰分析を用いて~
山下 浩樹高階 欣晴小山田 彩未
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キーワード: MOA, 回復期病棟, FIM歩行
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抄録
【はじめに、目的】 脳卒中ガイドライン2009において歩行練習の量を増やすことは歩行能力の改善のために強く薦められている(グレードA)。その一方、理学療法士などリハビリテーションの専門職が一人の入院患者のために割ける時間は限られている。そのため、患者の歩行レベルが自立または監視となり、療法士と直接関わる時間以外にも歩行練習が可能となることは、患者の歩行能力向上に大きな役割を果たすと考えられる。全床が回復期病棟である当センターでは、全患者を対象とした運動機能評価として、下肢体幹運動機能の総合的指標であるMOA-T(Moter Age Test :下肢体幹運動機能検査 以下MOA)を実施している。これまで文献では、脳卒中患者のMOAと歩行自立度の関係について、急性期病院より回復期病院において、MOA得点が低くても自立しやすいことが報告されている。しかし、回復期病棟において時系列でMOAと歩行自立度の関係について調べたものはほとんど見られない。そこで本研究では、ロジスティック回帰分析を用いてFIM歩行項目とMOA得点から「歩行自立(FIM6点以上)」および「歩行自立または監視(FIM5点以上)」となるために必要となるMOA得点の目安を時系列で算出し、そのデータを現場で活用できることを目的とした。【方法】 対象は平成22年4月から平成24年3月に当センター(100床:全床回復期病棟)入院となった脳卒中患者218名(平均年齢61.9 ±12.4歳)とした。当センターでは入院時より1ヶ月ごとに各種評価を行い、その結果をデータベース化している。今回は、データベースの中からFIM歩行項目(満点:7点)とMOA(満点:72ヶ月)のデータを抽出し、両者の比較を行った。使用したデータは、両者ともに「入院1ヶ月後」「入院2ヶ月後」「入院3ヶ月後」とした。解析にあたってはIBM SPSS ver.18を使用して、ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。またP=0.5を基準として境界値、判別適中率を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者または家族に対し、データの研究目的での使用について説明し、書面にて同意を得た。データの使用に当たっては、匿名化し、個人情報管理に留意した。【結果】 ロジスティック回帰分析の結果、以下の式が算出された。入院1ヶ月後FIM歩行自立(6点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-5.867+0.132×MOA)) )入院2ヶ月後FIM歩行自立(6点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-6.076+0.172×MOA)) )入院3ヶ月後FIM歩行自立(6点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-4.560+0.137×MOA)) )入院1ヶ月後FIM歩行監視または自立(5点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-4.284+0.191×MOA)) )入院2ヶ月後FIM歩行監視または自立(5点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-4.416+0.206×MOA)) )入院3ヶ月後FIM歩行監視または自立(5点以上)となる確率P=1/(1+exp(-1×(-3.042+0.175×MOA)) )  これらの式からP=0.5を基準とした結果は次のようになった。入院1ヶ月後FIM歩行自立 44.5ヶ月 判別的中率(90.4%)入院2ヶ月後FIM歩行自立 35.5ヶ月 判別的中率(90.1%)入院3ヶ月後FIM歩行自立 33.5ヶ月 判別的中率(86.8%)入院1ヶ月後FIM歩行監視または自立 22.5ヶ月 判別的中率(89.4%)入院2ヶ月後FIM歩行監視または自立 21.5ヶ月 判別的中率(89.6%)入院3ヶ月後FIM歩行監視または自立 19.5ヶ月 判別的中率(90.2%)【考察】 今回の結果から回復期病棟脳卒中患者において入院期間が進むにつれて、MOA得点が低くてもFIM歩行得点が向上しやすいことが示唆された。この理由として入院患者が周囲の環境に適応しながら歩行能力の向上を続けている可能性が考えられた。また、「入院1ヶ月後FIM歩行自立」「入院2ヶ月後FIM歩行自立」の間でMOA得点に9ヶ月程度の差があった。入院後まもない時期に関しては、身体機能は良好であっても高次脳機能障害などの理由により歩行自立度が監視レベルにとどまっている患者が多く存在していることを示唆していると考えられた。今回は、FIM歩行項目得点についてMOA得点という運動機能評価のみというなるべくシンプルな形で説明しようと試みた結果、判別的中率は90%前後の高い値を示した。さらに精度を高めるには認知機能面などの要素も加味して行く必要もあると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 運動機能評価(MOA得点)というシンプルな一つの指標だけで監視歩行と自立歩行レベルの値をある程度判別可能であると考えられた。また、入院からの期間が長くなっていくとMOA得点が低くても歩行自立度レベルが上がる可能性があり、今後、臨床で自立度変更に際して考慮していくべき点であると考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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