理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-11
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一般口述発表
アキレス腱断裂術後患者の長母趾屈筋と母趾圧力に着目した特徴的底屈機能に対する経時的変化の検討
鈴木 徹倉田 勉矢内 宏二田口 英紀笹原 潤鮫島 康仁小黒 賢二
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抄録
【はじめに、目的】アキレス腱断裂術後患者に関する研究で長母趾屈筋(以下FHL)が足関節底屈筋力を代償するという報告がある。我々は術後3ヶ月経過したアキレス腱断裂術後患者を対象にFHL筋断面積と底屈運動時母趾圧力を計測し、健常成人と比較検討した。健常成人の母趾圧力が底屈圧力全体の約17%であったのに対し、アキレス腱断裂術後患者は約30%と、母趾が過剰に関与する特徴的な底屈機能が存在する可能性を報告した。術後長期にわたり継続的に母趾が底屈機能を代償すれば、下腿三頭筋機能不全など運動機能獲得遅延を招く可能性が予想される。しかし、実際この特徴が術後の運動機能獲得に及ぼす影響まで検討されていないのが現状である。今回はアキレス腱断裂術後患者の母趾が過剰に関与する特徴的底屈機能の術後経過に伴う変化を把握するため、筋断面積と底屈運動時母趾圧力の経時的変化を検討した。【方法】対象は当院で腱縫合術を施行し、術後1年経過したアキレス腱断裂術後患者5名(平均年齢41.80±7.19歳)の患側5足とした。筋断面積は下腿中央のヒラメ筋(以下SOL)膨留部でMRI下腿水平断像(T1強調画像)を撮像、画像解析ソフトImageJ(Broken Symmetry Software製)を使用してFHLとSOLの筋断面積を計測した。さらに各々の数値よりSOLに対するFHLの筋断面積比(以下FHL/SOL比)を算出した。足関節底屈運動はCon-Trex MJ(CMV AG社製)を用いて等速性運動30、90、180deg/secで行い、足底圧分布システムF-scanⅡ(ニッタ株式会社製)を使用して底屈運動時時の足底圧を計測した。足底圧は前足部圧積分値に対する母趾圧積分値の割合(以下、母趾貢献率)を算出した。計測は術後3ヶ月・6ヶ月・1年でそれぞれ実施し、FHL/SOL比・母趾貢献率について各時期で比較検討を行った。統計学的検討は反復測定による一元配置分散分析を行い、下位検定としてshaffer法を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究を実施するにあたり当院倫理委員会の承認と、各被験者へ研究目的や方法を十分に説明し同意を得た。【結果】FHL/SOL比は術後3ヶ月・6ヶ月・1年の順に21.60±3.96%、22.81±4.25%、17.16±4.60%であった。術後1年でのFHL/SOL比は術後3ヶ月・6ヶ月と比較して有意に低値を示した。また母趾貢献率は術後3ヶ月・6ヶ月・1年の順に等速性運動30 deg/secで32.30±19.61%、28.16±25.51%、27.78±15.92%、90 deg/secで36.32±19.74%、27.49±23.67%、26.81±15.42%、180 deg/secで31.55±18.33%、27.13±21.52%、27.52±15.84%であった。術後6ヶ月・1年での各等速性運動時の母趾貢献率は術後3ヶ月よりも低値を示したものの、各時期間で有意差は認めなかった。【考察】我々は先行研究より、アキレス腱断裂術後患者は母趾が過剰に関与する特徴的底屈機能を有している可能性があることを報告した。FHL/SOL比は術後3ヶ月・6ヶ月・1年と経過するにつれ有意に減少しており、特に術後1年では自験例での健常成人により近似した数値を示した。これは術後1年という期間を経て、本来在るべき筋バランスへの正常化が図られたと考えられる。しかしその一方で、等速性運動時の母趾貢献率は継時的に減少傾向にあるものの、各時期間で有意差は認めなかった。さらに母趾貢献率は健常成人の約17%に対し、アキレス腱断裂術後患者は約27%と、術後1年経過しても母趾が過剰に関与する特徴的底屈機能が残存している傾向にあることが分かる。これは術後経過において母趾が継続的に底屈機能を代償している結果ではないかと推察され、後療法では術後初期より足趾、特に母趾の過剰な働きに配慮した、計画的かつ継続的な底屈筋力強化が重要となると考える。また母趾貢献率が術後1年経過しても健常成人と近似した割合まで減少しなかったことから、アキレス腱断裂術後患者は受傷前より特異的な運動習慣としてこの特徴的底屈機能を有している可能性も考えられる。このアキレス腱断裂術後患者の特徴が術後経過において変化したものなのか、または受傷前から存在しているものなのか、今後症例数を増やし、長期フォローして調査を進める予定である。さらに、この特徴的底屈機能の残存が筋力回復など術後臨床成績にどのような影響を及ぼすか検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】アキレス腱断裂術後患者は母趾が強く働く特徴的底屈機能を有しており、それは術後1年経過しても残存している傾向がみられた。後療法において術後初期より足趾機能を把握するとともに、母趾の過剰な働きに配慮した計画的な底屈筋力強化を図ることが重要となる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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