理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-17
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ポスター発表
尿失禁対策を目的とした体操教室の効果
河邉 真如布施 陽子山下 剛司
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抄録
【はじめに、目的】 尿失禁は高齢女性に多い代表的なQOL疾患であり、その治療においてはQOLが代表的な評価項目であることが認識されている。日本でも多くの尿失禁患者がいると予想され、その中の半数以上は診断や治療を受けていない潜在的尿失禁患者である。要因として、日本では尿失禁に対する理学療法の必要性の認識は低く、実際に理学療法士が尿失禁に対して介入している施設も少ないためと考えられる。当院では尿失禁の対策として体操教室を開催している。本研究は、体操教室参加者に失禁の重症度を点数化する指標であるICIQ-SF(International Consultation on Incontinence Questionnaire-short Form)を使用し、介入前後のスコアの変化を比較検討することを目的とした。【方法】 体操教室は平成24年5月から7月までの3ヶ月間、月2回、1回30分実施した。運動内容は理学療法士を指導者とし、骨盤底筋群(以下PFM)の収縮方法の指導・触診による個別指導と腹横筋の促通運動を中心に行った。参加者は口頭とポスター掲示により募集した。対象は体操教室に最低でも月1回参加しており、当院で外来リハビリを受けている高齢女性19名(平均年齢74.0±4.41歳)とした。参加者にICIQ-SF質問票を体操教室介入前後で配布し、その場で記載・回収を行った(回収率100%)。この質問票は無症状を0点とし、点数が高いほど失禁の重症度も高い構成である。また、質問4「どんなときに尿がもれますか?」では、8項目の失禁症状を重症度により独自に点数化したものを使用した(0~3点)。 統計学的処理にはPASW statistics ver18を使用した。介入前後のICIQ-SFのスコアは対応のあるt検定を用いて比較検討した(有意水準5%未満)。home exの頻度による介入前後のスコアは各項目ごとに平均値を算出した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究にあたり、医療法人社団淳英会倫理委員会の承認を得た。また、被験者には体操教室の効果を比較する事を目的とすること、方法について十分に説明を行い同意を得た。【結果】 19名中18名に尿失禁症状がみられた。ICIQ-SFのスコアは介入前6.8±4.7点、介入後2.8±4.0点で有意差を認めた(p<0.01)。home exの頻度による介入前後のスコアの平均値は毎日行った者(7名)は介入前6.4±1.0点、介入後2.7±1.0点であった。週2~3回行った者(7名)は介入前5.7±2.0点、介入後1.0±0.8点であった。週1回行った者(3名)は介入前7.7±3.2点、介入後3.7±1.9点であった。体操教室の時のみ行った者(2名)は介入前12.0±7.0点、介入後8.0±8.0点であった。【考察】 今回の体操教室参加者のうち18名に尿失禁症状があり、全員診断を受けていない潜在的尿失禁患者である可能性が考えられた。3ヶ月間、理学療法士がPFMを中心に運動指導することで症状の改善が見られた。集団で体操を行いながらも、個別指導により収縮法を確実に行わせたため症状の改善に繋がったと考える。home exの頻度においては運動頻度に関わらずスコアが改善する傾向にあった。要因として、参加者から「トイレが我慢できるようになった」という意見が多かったことから、馴染みのないPFMの収縮経験はhome exの頻度に関わらず尿意を感じた際の収縮が意識づけにつながり、症状を改善させたと推察される。また、home exを毎日行った者はICIQ-SFの全ての項目でスコアが改善する傾向にあり、home exの頻度が多い程改善しやすいことが伺えた。【理学療法学研究としての意義】 今回の研究で、尿失禁も運動により改善することが示唆され、理学療法士の介入する余地が十分あると考えられる。今後はエコーでPFMの収縮を確認し、より確実なPFMの運動指導を行い、高齢女性や産後女性の尿失禁を始めとする骨盤周囲の問題の改善に努めたい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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