理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-S-04
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セレクション口述発表
人工膝関節全置換術後早期の最大歩行能力と退院時の歩行能力の関係について
歩行補助具に着目して
佐野 佑樹岩田 晃松井 未衣菜藤原 明香理堀毛 信志西 正史渡邉 学
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キーワード: 歩行補助具, TKA, 歩行
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抄録
【はじめに,目的】 変形性膝関節症(以下膝OA)に対する治療として,人工膝関節全置換術(以下TKA)が行われる.当センターでは,TKA後クリニカルパスに従ってリハビリテーションが進められ,術後3週で退院となる.また,医療情勢の変化により入院期間が短縮する傾向にあり,今まで以上に早期の歩行能力の向上が必要となる可能性が高い.西川らによると,早期の杖歩行獲得は,術後の運動機能の改善に貢献することも報告されており,早期に歩行能力を向上させる必要性を示唆している. 一方で,術後早期の独歩,杖歩行,歩行器歩行といった歩行能力に関わる歩行補助具の判断は,セラピストの主観による部分が大きい.また術後早期の最大歩行能力が,退院時の歩行能力とどのように関わるのかを示した報告は,我々の知る限りでは見られない.そこで本研究は,術後早期の最大歩行能力と退院時の歩行能力の関係について,術後早期の歩行補助具に着目して報告する.【方法】 2012年5月~9月までに,当センター整形外科に入院し,膝OAと診断されTKAを施行された症例39例39膝を対象とする.測定項目は,5m歩行速度,Timed Up & Go test(以下TUG),Visual Analog Scale(以下VAS)とした.5m歩行速度は,対象者に通常速度で歩くように説明し,8m の歩行路の中央5m の歩行に要した時間から算出し,術前と退院時に計測した.TUG は,Podsiadlo らの原文に基づき,椅子から立ち上がり,通常速度で3m 先のラインまで歩き,方向転換し,椅子に戻り坐位になるまでに要した時間を退院時に計測した.VASについては術後1週と退院時に,歩行時の最大の痛みを測定した. また,術後早期の最大歩行能力として,歩行補助具を指標に用いた.歩行補助具は,補助具なし(独歩),杖歩行,歩行器歩行の3種類から,術後1週の時点で5m歩行を可能な補助具はどれかを検者が判断した.術後1週の歩行補助具について,独歩群,杖群,歩行器群の3群に分け,退院時の5m歩行速度とTUGについて,3群を比較した.統計処理はBonferroniによる多重比較検定を行った.統計ソフトはSPSS ver.20を用い,有意水準を5%とした.【倫理的配慮,説明と同意】 当センター臨床医学倫理委員会並びに,大阪府立大学研究倫理委員会の承認を経た.また,全ての対象者に本研究の内容及び測定データの使用目的について書面を用いて十分な説明を行い,書面による任意の同意を得た.【結果】 対象者は,年齢75.8±5.8歳,身長151.3±6.5cm,体重60.0±10.4kg,BMI26.1±3.3,性別は男性8例,女性31例であった.術前の5m歩行速度の平均は,1.02±0.25(m/s)であった.5m歩行速度が平均±2SD以上の2例については,解析対象から除外し,男性8例,女性29例の計37例を解析対象とした. 各群の人数と平均年齢,VASを記載する.独歩群が15名,74.5±5.6歳,30.6±23.6,杖群が14名,76.9±6.4歳,38.4±23.6,歩行器群が8名,77.9±4.5歳,44.8±23.1であった.各群の退院時の歩行補助具の内訳を以下に示す.術後1週で独歩可能な15名のうち,退院時14名が独歩,1名が杖であった.術後1週で杖可能な14名は,退院時5名が独歩,9名が杖であった.術後1週で歩行器であった8名は,6名が独歩,2名が杖であった. 次に退院時の各群の5m歩行速度(m/s),TUG(s),VASを順に示す.独歩群は1.13±0.13,9.8±1.5,3.2±5.8,杖群は0.82±0.16,13.0±3.1,14.4±17.1,歩行器群は0.91±0.17,12.5±2.6,17.0±18.6であった. また,多重比較による結果を以下に示す.退院時の5m歩行速度について,独歩群と杖群(p<0.01),独歩群と歩行器群(p<0.05)は,ともに独歩群の方が有意に速かった.一方杖群と歩行器群には有意差を認めなかった.退院時のTUGについて,独歩群と杖群では有意に独歩群が速かった(p<0.01)が,その他に有意差は認めなかった.【考察】 今回の我々の研究では,術後1週で独歩が可能な群は,独歩が不可能であった杖群,歩行器群に比べ退院時に歩行速度が有意に速かった.VASの値が示すように,術後早期の痛みは杖群や歩行器群に比べて独歩群の方が少なく,積極的な歩行練習が可能であることが考えられる.TKA術後の理学療法において,早期に独歩を獲得することは,退院時に高い歩行能力を有することが示された. 一方で,術後早期に独歩が不可能であった杖群と歩行器群では,退院時の歩行速度,TUGともに有意差を認めなかった.さらに,術後1週の最大歩行能力が杖や歩行器であっても,退院時には全員が杖または独歩を獲得している.この結果から,独歩不可能な症例では,術後早期の最大歩行能力が退院時の歩行能力に影響しないことが示された.【理学療法学研究としての意義】 TKA術後早期の歩行補助具の選択による最大歩行能力と,退院時の歩行能力の関連を示した点.
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© 2013 日本理学療法士協会
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