抄録
【はじめに、目的】訪問リハビリテーション(以下、訪問リハ)の役割には、入院生活から在宅生活へのソフトランディング、退院後の廃用症候群の予防、在宅生活の自立支援、本人・家族指導等と多岐にわたる。訪問リハの効果に関する先行研究では、高齢者の移動能力の向上、日常生活活動(以下、ADL)の向上、離床時間の短縮、安定した在宅生活の継続など一定の効果が報告されている。しかし、その一方で病状の悪化等により入院を余儀なくされ、在宅生活を営むことが困難になる事が少なくない。そこで本研究では、在宅生活継続困難となる要因を検討し、Functional Independence Measure(以下、FIM)を用いてボーダーラインを明らかにする事を目的とした。【方法】平成21年度~平成23年度の間に当院訪問リハを終了した利用者307名のうち、入院により訪問リハを終了となった利用者(以下、入院群)と目標達成により訪問リハを終了した利用者(以下、達成群)を対象とした。その他の理由での終了者は対象除外とした。調査項目は年齢、性別、主疾患、要介護度、FIM、利用頻度、利用期間、同居者の有無、通所サービス利用の有無とした。そのうち、入院群175名(男性78名、女性97名、平均年齢81.6±9.3歳)、達成群48名(男性17名、女性31名、平均年齢79.6±9.1歳)の両群間を比較した。FIMはMann‐WhitneyのU検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者および家族に対して口頭と書面にて説明し、同意を得た。【結果】入院群の介入初期時のFIM(以下、初期FIM)の平均は79.2±28.7点、終了時のFIM(以下、最終FIM)の平均は79.7±29.5点であった。達成群のFIMの平均は、初期FIM92.7±22.3点、最終FIM95.9±23.9点であった。入院群と達成群のFIMの比較では、達成群で初期FIM、最終FIMともに有意に高値を示した(p<0.01)。しかし、入院群と達成群でのFIMの改善率には有意差はなかった(p>0.05)。通所サービスの利用の有無では入院群が通所サービス利用者50.3%、非利用者49.7%であった。達成群では通所サービス利用者66.7%、非利用者33.3%であり、達成群で通所サービス利用者が多かった。その他、年齢、性別、主疾患、要介護度、利用頻度、利用期間、同居者の有無において関連は認められなかった。【考察】本研究では、入院により終了となる利用者では初期FIMが達成群と比較して低く、80点未満であった。また、通所サービスの利用が少ない事も入院により終了との関連が示唆された。介入頻度に関連は認められなかったことから、外出の頻度が重要ではないかと考えられ外出機会があることで、閉じこもりを防止するとともに着替えなどの準備や他者との触れ合いを通して活動性が保たれることも在宅生活を継続する要因となっているのではないかと考える。訪問リハで活動性・耐久性の向上を図り、ケアマネージャー(以下、CM)等と連携して通所サービスの促しや検討も重要といえる。初期FIMが80点をボーダーラインとして、初期FIM80点未満で、通所サービス利用無しの2項目に該当する利用者については、入院リスクの高い在宅生活継続危険群として捉え、本人・家族だけでなく、CM等の他職種との連携を密に図ることで入院リスク軽減が図れるのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】本研究では、在宅生活が困難となり入院による終了者の特徴を捉えることができた。また、本研究により得られた知見は訪問リハだけでなく、入院患者における在宅復帰に向けた1つの指標となる。