理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-39
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ポスター発表
大腿骨近位部骨折患者におけるASSWS装具を用いた歩行練習の効果
高橋 幸司上野 貴大座間 拓哉荻野 雅史鈴木 英二
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抄録
【目的】近年、大腿骨近位部骨折では術後早期からの歩行練習の重要性が報告されている。また、回復期では異常歩行や筋痛が残存する報告もあり、臨床上問題となる場合を多く認める。そこで当院では、大腿骨近位部骨折患者の歩容改善と大腿四頭筋部の筋痛の改善を目的に、当院で開発した歩行補助装具:Assistance of Swing、Stance、and Weight Shift(以下ASSWS装具)を用いた歩行練習を試験的に実施している。ASSWS装具は補助者の牽引力により膝関節、股関節伸展を補助する機構を有している。ASSWS装具の片麻痺患者における有用性については、鈴木らにより既に報告されている。大腿骨近位部骨折患者に対しても、実際にASSWS装具を使用した歩行練習により、観察上歩容の改善、大腿四頭筋部の疼痛が改善した症例を認めた。そこで、今回は大腿骨近位部骨折術後患者に対する歩行練習におけるASSWS装具の有用性を検証することを目的とし、ASSWS装具を使用して歩容の改善と大腿四頭筋の筋痛の改善が認められた大腿骨近位部骨折患者5例の三次元歩行分析結果から考察を交えて報告する。 ASSWS装具は、厚地のアクリル繊維等の帯体が下腿のレベルから上方へ延び、膝蓋骨前面を覆い、大腿下部で内外側の2本に分かれて後方に回り込み、横の連結帯で殿部覆い、その上にループ状の牽引部がある。牽引部の後上方への牽引により、膝関節を後方に押す力が生じて膝関節伸展が補助され、殿部には股関節を前方に押す力が生じて股関節の伸展が補助される。【方法】対象は当院へ入院した大腿骨近位部骨折患者で術後杖なし歩行が自立もしくは監視で行え、歩行中に大腿四頭筋に筋痛を有していた5例(平均年齢67.6±20.46歳)とした。また、認知機能が正常(MMSE≧20pt)であり、動作能力に大きな影響及ぼす重篤な既往がない例とした。基本特性は男性2名、女性3名、診断名は大腿骨頚部骨折3名、大腿骨転子部骨折2名、術式は人工骨頭置換術2名、C-CHS1名、髄内釘2名であった。身体運動計測には三次元動作解析装置VICON MX(Oxfordmetrics社製)と床反力計(Kistler社製)を用いた。標点位置は左右の肩峰、股関節、膝関節、外果、第5中足骨の計10点とした。計測時期は、術後2~3週の間とし、ASSWS装具を使用した歩行と使用しない歩行の2設定で各3回づつ計測した。計測方法は床反力計の手前1mから歩行を開始し、床反力計を通り過ぎる1mまで実施した。各3歩行周期のデータを、解析ソフト(Wave Eyes)を用いて解析した。解析データは、関節運動モーメント、床反力鉛直成分を算出した。分析結果について、装具使用の有無での患側立脚期の比較、健側と患側立脚期の比較検討を実施した。比較検討にはWilcoxonの符号付順位検定を用い、有意水準5%とした。【倫理的配慮】対象者には、研究の主旨等について説明を行い、書面にて同意を得た。本研究は当院及び研究協力機関における倫理委員会の承認を得ている。【結果】装具なしとASSWS装具使用での患側立脚期の比較では、ASSWS装具使用で、膝関節屈曲モーメントピーク値は有意に小さかった。股関節屈曲モーメントピーク値は有意に大きかった。床反力鉛直成分ピーク値に有意差はなかった。装具なしでは、患側膝関節屈曲モーメントピーク値は健側と比較して有意に大きかったが、ASSWS装具使用で健側比に有意差はなかった。ASSWS装具使用で全例において大腿四頭筋部の筋痛は減少した。【考察】結果からASSWS装具の使用で、患側立脚期での股関節屈曲モーメントピーク値が向上し、膝関節屈曲モーメントピーク値は低下し、健側比の均一化が図れた。これはASSWS装具の膝関節、股関節伸展補助が、患側立脚期で矢状面上の適正な重心移動を可能にした効果であると考えられる。また、大腿四頭筋の筋痛の減少は、患側膝関節屈曲モーメントの低下、股関節屈曲モーメントの向上により、膝関節の伸展負荷量が軽減したことが要因として考えられる。以上を統合すると大腿骨近位部骨折術後患者の歩行練習で歩容の改善と大腿四頭筋痛の改善にASSWS装具の使用が有用である可能性が示唆されたと考えられる。今回は5症例のため、今後症例数を重ねASSWS装具使用による歩行練習効果について更なる検討を続けていく意義はあると考える。【理学療法学研究としての意義】ASSWS装具は脳卒中患者の歩行練習ではその有用性が既に報告されているが、今回運動器疾患患者の歩行練習での有用性が示唆されたことは有意義と考える。今後、更に症例数を積み検討を重ねていく意義があると考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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