抄録
【はじめに、目的】理学療法士の卒後の継続教育は、専門職としての義務であり、進歩する専門的知識や技術を修得し、質の高い理学療法を国民に提供するために必須である。その継続教育を支援する資源は、その質・量ともに整備の途上であり、その基盤を確立するためには、現状の理学療法学継続教育の現状とニーズを把握することが必要である。本研究の目的は、本学卒業生の理学療法士を対象に理学療法学継続教育に関する質問紙調査を実施し、その現状と今後の課題を分析することである。【方法】本大学理学療法学専攻1期生(平成13年卒)から11期生(平成23年卒)までの卒業生240名のうち、連絡先不明者を除く217名を対象に無記名自記式質問紙調査を郵送法にて実施した。質問紙の構成は、属性、臨床活動の状況、理学療法学継続教育と学術活動の状況、臨床教育への関与、卒前教育に対する意見、本学に対する理学療法学継続教育についての期待や意見などであった。理学療法学継続教育に関連する内容について、回答結果を集計し、卒業年および勤務施設の種類との関連性をクロス集計にて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】回答は無記名とし、質問紙の返送をもって同意取得とすることを文書で説明した。【結果】質問紙回収数は122名、回収率は56.2%であった。すべての卒業年からの回答があった。回答者の属性では、性別は男性60名(49.2%)、女性62名(50.8%)、年齢の平均(標準偏差)は28.4(4.4)歳であった。現在の理学療法士としての勤務形態は常勤110名(90.2%)、非常勤8名(6.6%)であり、勤務施設は医療施設92名(82.1%)、老人福祉施設11名(9.8%)などで、その所在地は本学の位置する当該県が76名(68.5%)と最も多く、本県以外の関東が13名(11.7%)であった。主な対象疾患(複数回答)は、脳血管障害89名(81.7%)、運動器疾患95名(87.2%)、心大血管疾患22名(20.2%)、呼吸器疾患38名(34.9%)、小児8名(7.3%)などであった。継続教育の状況では、修士課程への進学が38名(31.1%)、博士課程は9名(7.4%)で、修士取得が26名(21.3%)、博士取得4名(3.3%)であった。日本理学療法士協会へは112名(91.8%)が入会しており、60名(49.2%)が新人教育プログラムを修了していた。専門領域研究部会へは23名(18.8%)が所属し、専門理学療法士の取得は6名(4.9%)であった。主な継続教育の手段(複数回答)は、書籍101名(82.8%)、都道府県士会主催講習会92名(75.4%)、施設内勉強会86名(70.5%)、専門雑誌85名(69.7%)、理学療法関連学会57名(46.7%)などであった。学術活動では、国内学会での発表(複数回答)は都道府県学会41名(33.6%)、日本理学療法学術大会32名(26.2%)、ブロック学会28名(23.0%)、その他関連学会24名(19.7%)で、国際学会発表はのべ7名(5.7%)であった。また、筆頭著者としての論文掲載は28名(23.0%)であった。日本理学療法士協会への入会、進学、学会発表や論文掲載と、卒業年および勤務施設の種類には有意な関連性を認めなかった。本学に対する継続教育についての期待や意見では、症例検討会、各種講習会、学会等の開催や卒後研修制度などを含む独自の継続教育プログラムの作成、学部教育への聴講や参加、臨床的な知識や技術の修得を重視した大学院教育プログラム、大学の教育・研究資源の共同利用や開放などの回答が得られた。【考察】回答者の勤務施設の所在地は関東偏重ではあるが、医療施設以外に勤務する卒業生も含めた傾向が把握できた。継続教育として大学院が活用されており、日本理学療法士協会入会率も高く、新人教育プログラム修了率は全国平均と同程度である。継続教育の手段は多様で、学会発表等の学術活動も経験している回答者が多かった。本学に期待する継続教育に関する役割についても多様な意見が寄せられた。回答の結果は、卒業年や勤務施設の種類による明らかな偏りはなかったが、さらに少人数職場や勤務状況などの職場環境、地域性など継続教育の機会が得られにくい要因を分析し、卒後研修制度や地域連携、リカレント教育なども含めて、大学としての継続教育支援プログラムを開発する必要がある。【理学療法学研究としての意義】理学療法学の卒前教育の充実と並行して、卒後の教育資源の整備は火急の課題である。その資源の種類や形態などは利用者のニーズに適合することが重要であり、現状や要望等を定期的に調査、分析することが必要である。