理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-48
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ポスター発表
食道癌術後患者の筋量変化の特徴
三森 由香子佐野 由布子川上 途行
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キーワード: 食道癌, 筋量, 術後変化
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抄録
【はじめに】胸腹部外科手術後は呼吸器合併症などの周術期合併症を生じやすいが,中でも食道癌に対する食道切除再建術は身体に対する侵襲が特に大きく,周術期合併症だけでなくADL低下や体力低下を伴いやすい。食道癌術後の運動機能や体力は,術後有意に低下する事が報告されているが,筋量の変化の詳細については報告がない。そこで今回,食道癌に対する食道切除再建術後の患者の四肢・体幹における術前後の筋量の変化について検討したので報告する。【対象・方法】当院において2012年6月~10月の間に食道癌に対して食道切除再建術を施行し,術前および退院時に評価が可能で,術後重篤な合併症を認めない者を対象とした。評価は術前および退院時に施行し,筋量の測定には生体電気インピーダンス方式体組成計(Physion MD,フィジオン社製)を使用した。Physionとは,仰臥位で4肢誘導12電極で電気インピーダンスを用いて,体脂肪率,体内水分量,体内骨量,体内筋量等を測定する機器である。体内筋量については,四肢・体幹の左右各分節ごとに評価が可能である。評価項目は,左右の上肢,下肢,体幹の各筋量とし,術前と退院時の差および変化量(術前に対する退院時の筋量の割合)を検討した。統計学的分析には, SPSS ver.19を使用し,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析した。なお,手術後の理学療法介入は術後2日目より開始し,離床のサポート,筋力トレーニング,起立・歩行練習,自転車エルゴメーターによる持久力トレーニングを疼痛や疲労に応じ症例ごとに適宜施行した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は慶應義塾大学病院研究倫理審査委員会に申請し,「既存資料等のみを用いる観察研究」にあたるので,この研究の実施についての情報を公開した。個人情報は連結不可能匿名化して扱い,発表の際には個人を特定可能な情報は明示しない。【結果】対象者は6例で全例男性,平均年齢65±7歳,手術から退院時評価までの日数は26±7日であった。BMIは術前22.6±2.9,術後21.7±2.4であり,術前と退院時では有意な差を認めなかった。また,癌の病期分類はStage0が2名,Ⅱが1名,Ⅲが2名,Ⅳが1名であり,遠隔転移を認める症例はいなかった。術前の筋量(中央値±四分位範囲,単位;kg)は,左上肢1.2±0.1,右上肢1.3±0.1,左下肢5.5±0.4,右下肢5.4±0.4,左体幹5.7±0.6,右体幹6.0±0.6であり,退院時は左上肢1.1±0.1,右上肢1.2±0.1,左下肢4.6±0.5,右下肢4.5±0.5,左体幹4.8±0.7,右体幹5.2±0.6で術前に比べ退院時は全ての項目において有意に低下しており,変化量は88~90%であった。【考察】結果より,四肢および体幹の筋量は術後に有意な低下を認め,いずれの部位においても術後約4週の退院時において10%程度の低下を認めた。その変化は上肢や下肢,体幹など部位ごとにおける特徴は認めず,筋量は全身一様に低下することが確認された。よって,術後の理学療法介入においては,部位ごとに優先度をつけず,全般的な筋力トレーニングを遂行する必要があると考える。また本研究における術前後の筋量の変化は,先行研究における握力や膝伸展筋力などの筋力指標の変化と同程度であった。食道癌術後患者における筋力低下は筋量の減少によるものと推察され,栄養素の関与も視野に入れなければならないことが示唆された。今回は術後約4週での評価であったが,食道切除による栄養摂取への影響等も考慮すると,退院後さらなる筋量低下の可能性も予測されるため,長期的なフォローが必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】食道癌に対する手術後の筋量変化の特徴がわかったことは,術後リハビリテーションにおけるプログラム立案の一助に寄与できると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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