理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-48
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ポスター発表
地域がん診療連携拠点病院におけるがんリハビリテーションの現状
皮居 達彦藤本 智久西野 陽子岡田 祥弥行山 頌人陽川 麻子森本 洋史中島 正博大道 克己大島 良太岡 智子濱根 弥恵中野 朋子橋本 しおり田中 正道
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抄録
【はじめに】 当院は,2007年に地域がん診療連携拠点病院の指定を受け,質の高いがん医療を提供することを目指している.今回,当院におけるがん患者に対するリハビリテーション(リハ)の現状調査を行い,今後の課題を見出す目的で検討したので報告する.【方法】 2010年4月~2011年3月の間に,当科を受診したがん患者199例(男120例 女79例・平均年齢67.3±14.7歳)を対象とし, 1疾患別内訳(MDC),2がんに対する治療内容,3リハ依頼内容,4平均入院期間,5リハ開始までの平均期間, 6平均リハ期間,7平均リハ実施日数,8平均リハ実施率(リハ実施日数/リハ期間),9退院時移動能力,10リハ開始時と終了時の平均Barthel index(B.I)の点数,11転帰を調査した.また,調査項目4~11について疾患別比較検討を行った.統計学的分析にはkruskal-WallisのH検定を用いて,危険率5%以下を統計学的有意とした.【倫理的配慮】 ヘルシンキ宣言に沿って, 個人情報の取り扱いに十分に留意し,患者情報を後方視的に診療録より抽出した.【結果】 疾患別内訳は,神経系10%,耳鼻咽頭系11%,呼吸器系5%,消化器系24%,筋骨格系15%,乳房系1%,腎系11%,女性系2%,血液系21%で,がんに対する治療は,手術・化学療法・放射線療法76%,積極治療なし24%であった.リハ依頼内容は,全身性の機能低下・廃用症候群50% ,嚥下・構音障害15%,脳腫瘍による麻痺8%,脊髄腫瘍による麻痺8%,呼吸合併症の予防7%,その他12%であった.入院期間は43.4±32.8日,リハ開始までは14.9±16.5日,リハ実施期間は26.2±26.3日,リハ実施回数は15.5±14.2日,リハ実施率は64.6±16.0%であった.退院時移動能力は,歩行65%,車椅子28%,ベッド上17%で,B.Iは,開始時45.0±32.9点,終了時58.5±38.0点であった.転帰は,退院67%,転院17%,中止2%,死亡14%であった. 疾患別比較は,リハ開始までの期間,退院時移動能力,終了時のBI点数に有意差を認めた.リハの開始までの期間は,耳鼻咽頭系15.1日・消化器系23.1日・腎系13.4日・血液系17.9日が筋骨格系3.6日に比べ有意に遅かった. 退院時移動能力は,血液系が耳鼻咽頭系に比べ有意に低く,BI終了時点数は,血液系44.8点が筋骨格系71.0点に比べ有意に低かった.【考察】 がんリハの現状は,様々な疾患が対象となっており,積極的に実施されていた.治療と並行してリハを実施する場合がほとんどであった. 病状に応じて,治療方針が変更される場合もあるので,主治医と緊密に連携し,臨機応変な対応が必要である.リハ依頼内容は, 全身性の機能低下・廃用症候群に対するリハが最も多く, 続いて嚥下・構音障害,脳,脊髄腫瘍による麻痺に対するリハとなっていた.リハの状況は,がんの種類や進行度などがん自体の影響に加え,がんの治療,さらに治療過程によっても大きく左右されることから,一概に説明することは困難であった.今後さらに多面的に調査する一方で個別に検討していく必要もあると考える.転帰は,転院・死亡例も多く含まれており,地域連携,緩和ケア体制の充実を図っていく必要もあると考える.  疾患別比較では,リハの開始までの期間は,耳鼻咽頭・消化器・腎・血液系が,筋骨格系に比べ有意に遅かった.これは筋骨格系以外ではルーティンで早期からリハの依頼が出される仕組みが整っていないことや,もともと移動能力に問題ない患者であることから,治療後の有害反応によって廃用症候群を引き起こすことを想定されにくいためと考える. 退院時移動能力は,血液系が耳鼻咽頭系に比べ低く,終了時BI点数は,血液系が筋骨格系に比べ低かった.血液系の治療では化学療法が主体となることで悪心・嘔吐・倦怠感・骨髄抑制といった身体症状で活動性が低下する場合が多く,中には積極的な治療を行えない終末期の患者も含まれるためであると考える. リハの関わり方は,がん自体による障害やがんの治療過程において生じる障害は多岐にわたることから,主診療科と連携して,原発巣・治療目的別に治療前・後で可及的早期よりリハを実施するシステムを確立することや病期別に患者の状態に応じて適切なリハを選択する必要もあると考える.【理学療法学研究としての意義】 がんリハは,がん自体の影響に加え,がんの治療によっても大きく左右されることから,一概に説明することは難しい.がんリハの現状を調査し検討することは,今後がんリハを整備していくための基礎資料として意義がある.
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© 2013 日本理学療法士協会
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