理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-21
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一般口述発表
肩関節外旋筋に対するReal-time Tissue Elastographyによる筋硬度測定
島 俊也金澤 浩越山 晋平白川 泰山
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抄録
【はじめに、目的】 投球動作の反復により、投球側の肩関節内旋可動域(以下、IR)は減少し、IR制限と投球障害は密接に関係する(岩堀、2007)。野球選手は投球翌日にIR制限が出現し、肩関節後方の筋群が要因(高村ら、2010)とする報告や、現場でのIRの問題のほとんどは筋腱に起因している(宮下、2010)という報告があり、肩関節のコンディショニングを行う際には、継時的に変化する筋腱の状態を把握することが重要と考えられる。IRを測定し、肩関節後方の筋群の伸張性を推察することがあるが、IRは筋腱以外に関節包や上腕骨の形態などの様々な因子が影響するため、個々の筋の影響を捉えることは困難である。現場では触診で筋硬度を確認しIR制限の因子を推察するが、生体内での筋硬度の変化を定量的に捉えることができれば、投球障害の予防や治療に有用と思われる。近年、体表からの圧迫操作に対する組織の変形率を、ひずみ画像として撮影領域内で表示することが可能な、日立アロメディカル社のReal-time Tissue Elastography(以下、RTE)による筋硬度評価が注目されている。我々はこれを使用すれば肩周囲筋の筋硬度を客観的に評価できると考えたが、現時点では肩関節の外旋筋個々の筋硬度を正確に測定できるかは不明であり、今後、筋硬度変化の検討を行う上で、測定方法を検討する必要があると思われる。本研究では、主な外旋筋である棘下筋、小円筋および三角筋後部線維に対してRTEを用いて筋硬度測定を行い、検者間信頼性の検討を行った。【方法】 20歳代の健常成人男性10名20肩を対象とした。対象の平均年齢(±SD)は24.5±2.5歳、身長は169.9±1.5cm、体重は57.5±5.7kgだった。なお、投球を伴うスポーツの経験者は対象から除外した。測定項目は、棘下筋、小円筋、三角筋後部線維の筋硬度およびIRとした。棘下筋の筋硬度の測定は、肩甲骨の下角と肩甲棘三角の中点と肩峰の後角を結ぶ線上で、小円筋は河上(2002)の方法を参考に触診し、その筋腹上で、三角筋後部線維は肩甲棘三角と肩峰の後角の中点と三角筋粗面を結ぶ線上で行った。各筋の皮膚上に音響カプラーを置き、その上からRTEを用いて測定を行った。音響カプラーに対する各筋の筋硬度を算出し、Strain Ratio(以下SR)とした。測定は2名の理学療法士(検者A、検者B)で行った。測定肢位は肩関節1stポジションと2ndポジションの2つの肢位とし、それぞれのSRを1stSR、2ndSRとした。測定は3回行い、平均値を採用した。また、1stポジション、2ndポジション各々の3筋のSRを合計し、total SR(以下、TSR)として検討に用いた。IRは肩関節2ndポジションで、検査者2名で測定した。統計学的分析には検者間での差の比較に一元配置分布を用い、棘下筋に対するRTEの検者間信頼性(ICC)を検討した。また、1stポジションおよび2ndポジションのTSRとIRとの関係をピアソンの相関係数を用いて検討した。危険率5%未満を有意とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象には本研究の趣旨を十分に説明し、同意を得た。また、本研究は当院倫理委員会の承認を得て行われた(承認番号:MRH120009)。【結果】 1stSRは検者Aで棘下筋が2.06±0.56、小円筋が1.64±0.91、三角筋後部線維が2.27±1.60、検者Bでは棘下筋が1.87±0.45、小円筋が1.58±0.60、三角筋後部線維が2.44±0.63だった。1stSRのICCは棘下筋が0.89、小円筋が0.55、三角筋後部線維が0.58だった。一方、2ndSRは検者Aで棘下筋が1.42±0.53、小円筋が2.18±1.22、三角筋後部線維が2.91±2.50、検者Bでは棘下筋が1.48±0.58、小円筋が2.14±1.10、三角筋後部線維が2.24±0.81だった。2ndSRのICCは棘下筋が0.94、小円筋が0.83、三角筋後部線維が0.51だった。また、1stポジションでのTSRとIRとの関係は検者Aがr=0.36、検者Bがr=0.39でいずれも弱い正の相関関係を認めた。一方、2ndポジションでのTSRとIRとの関係は検者Aがr=0.80、検者Bがr=0.76でいずれも有意な強い正の相関関係を認めた(P<0.05)。【考察】 本研究の結果、2ndSRは棘下筋および小円筋における検者間の一致度は非常に高く、三角筋においても一致度は良い結果となり、1stSRと比較して一致度の傾向は優秀だった。また、TSRとIRとの関係においては、2ndポジションにおいて強い正の相関関系を認め、2ndポジションでの筋硬度測定の結果は、IR制限に関与する筋を反映することが確認された。以上より、RTEによる2ndポジションでの筋硬度測定は正確に実施でき、IRを制限する筋を特定するのに有用な方法であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の測定方法を用いて外旋筋群の筋硬度変化を評価することで、内旋可動域制限を来す筋の要因を明らかにすることができ、コンディショニングに有用なデータが得られると考えられる。また、各筋の有効なストレッチング方法を考案する際にも有用と思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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