理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-20
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ポスター発表
筋電図情報を取り入れた最適化手法による階段昇段時の下肢筋張力と関節間力の算出
高林 知也久保 雅義徳永 由太
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抄録
【はじめに、目的】変形性膝関節症の主訴は荷重時痛であり,膝関節への負荷を軽減することが重要である.階段昇段については,患側を後続脚とした二足一段歩行での昇段動作が推奨されているが,実際にどの程度膝に負担がかかっているかを定量化した研究はあるものの,算出には様々な方法があるため一致した見解は得られていない.本研究では,筋電図情報を取り入れた最適化手法(以下,EAO)という数学的手法を用いることで,非侵襲的に筋張力を推定することを試みた.さらに,推定筋張力から関節の圧迫力(以下,関節間力)を算出し,先行研究の結果と比較,検討することを目的とした.【方法】対象者は健常成人男性6 名とした. 課題動作は一足一段歩行,二足一段歩行とし,解析区画は一歩行周期とした.なお,被験脚は右脚とし,二足一段歩行は後続脚を解析対象とした.動作解析にはCCDカメラ11 台を含む3 次元動作解析装置(VICON MX: Oxford Metrics Inc),床反力計(OR6-6-6 2000: AMTI Inc)6 台,反射マーカーを使用した.反射マーカー貼付位置は左右の肩峰,肘頭,尺骨と橈骨茎状突起の中点, ASISと大転子を結んだ線の遠位1/3,大腿骨外側上顆,外果, 第5 中足骨頭,右PSISの15 箇所とした.CCDカメラは100 Hz,床反力計は1000 Hzのサンプリング周波数にて課題動作の計測を行った.筋電図(以下,EMG)の導出は表面電極(Blue Sensior NF-50: Ambu Inc)を用いた双極誘導とし,電極間距離は1 cmとした.電極貼付位置は大腿直筋,内側広筋,半腱様筋,大腿二頭筋長頭,前脛骨筋,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋の7 筋とした.サンプリング周波数は1000Hzとし,運動学的データと同期して計測した.臨床歩行分析研究会が提供するDIFF_GAIT,J_MOME5,Calca3grという処理ソフトを用いて,床反力およびマーカー位置情報よりローパスフィルター,関節中心計算,関節モーメント, EMGの処理を行い,関節間力を算出した.EMGの処理では,基線ぶれの補正,全波整流およびスムージングの処理を行い,各筋の最大等尺性収縮時の筋電位にて正規化した.推定筋張力の算出にはEAOを用い,推定筋張力における妥当性の指標としてEMGとの間の相関係数をピアソンの積率相関係数にて算出した.なお,有意水準は5 %とした.本研究の筋骨格モデルは膝関節矢状面モデルとし,関節間力を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は新潟医療福祉大学倫理審査委員会の承認(承認番号17324-120605)を得た上で,被験者に十分な書面及び口頭による説明と書面による同意を得て行った.【結果】一足一段歩行に関して,大腿直筋,広筋群,内側ハムストリングスは推定筋張力とEMGにおいて高い相関関係が見られた(それぞれr = 0.9,r = 0.89,r = 0.62).二足一段歩行に関して,大腿直筋,広筋群,内側ハムストリングス,外側ハムストリングスは推定筋張力とEMGにおいて高い相関関係が見られた(それぞれr= 0.88,r = 0.82,r = 0.77,r = 0.93).一足一段歩行では立脚前期に膝関節間力は最大となり,39.4 ± 3.3 N/kgであった.二足一段歩行では立脚終期に膝関節間力は最大となり,17.4 ± 4.5 N/ kgであった.二足一段歩行の膝関節間力は,一足一段歩行と比較して有意に減少した(p<0.05).【考察】推定筋張力の妥当性を評価する指標は,生体情報として非侵襲的に得られるEMGが適当であり,EMGとの波形の一致度から判断すると報告されている.先行研究である枝松らによって算出された膝関節間力の最大値は,一足一段歩行では43.3 ± 4.1N/kg,二足一段歩行は27.4 ± 6.9N/kgであり,どちらの昇段動作においても本研究より低値を示した.先行研究の結果と比較して,本研究は推定筋張力とEMGの一致度が高く,かつ拮抗筋の活動も反映出来た点が本方法の優れた点であった.また,一致度は相関係数を指標としたが,一足一段歩行,二足一段歩行ともに高い相関関係であり,EAOにおける結果の妥当性を支持していると考えられた.このことから,筋張力を基に算出された膝関節間力も間接的に妥当性が高いことが考えられた.本研究で用いたEAOは,より精度の高い筋張力の推定,関節間力の算出につながることが示唆された.本研究の限界として,本研究は矢状面モデルでの解析を行ったが,変形性膝関節症は内反膝や回旋異常を伴うことが多いとされる.そのため,前額面や水平面での解析も検証していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】本研究で用いたEAOは,従来の最適化手法と比較して推定筋張力の妥当性が高く,精度の高い関節間力が算出することができた.よって,EAOはCKCトレーニングで用いられるスクワットやフォワードラウンジ動作などにおける筋出力のパターンや拮抗筋活動の定量化,関節間力の算出などに寄与できることが示唆された.
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© 2013 日本理学療法士協会
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