理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-08
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ポスター発表
膝関節肢位の変化と大腿四頭筋機能 第2報 ─表面筋電図による中間広筋導出からの再考─
松岡 健岩本 博行江口 淳子藤原 賢吾橘 竜太郎中山 彰一
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抄録

【はじめに、目的】大腿四頭筋に関してはこれまでに多くの報告があり,さらに近年は超音波診断装置の進歩により深層に位置する中間広筋機能に関する報告も散見する.我々は,超音波診断装置を用いて膝伸展筋力と大腿四頭筋各筋厚の関係について,膝屈曲70 度位における中間広筋厚と 膝伸展筋力との間に有意な正の相関があること,また第47 回日本理学療法学術大会において,表面筋電図による大腿四頭筋各筋の面積積分値,および膝伸展筋力と各筋積分値比との関係を検証し,いずれも膝伸展筋力には中間広筋の貢献度が高い事を報告した.そこで今回は,膝屈曲運動時における膝関節制動作用としての大腿四頭筋各筋の貢献度について検証したので報告する.【方法】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常人男性32 名(平均年齢は24.4 ± 4.1 歳,平均体重64.8 ± 9,1kg,平均身長169.33 ± 8.2cm)とした.表面筋電図の測定筋は右側の大腿直筋,内側広筋, 外側広筋,中間広筋の4 筋とした.導出部位として大腿直筋は下前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中央部位,内側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って4 横指部位,外側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って5 横指部位,中間広筋は外側広筋腹停止部位から膝蓋骨上縁までの間隙とした.なお中間広筋導出に際しては超音波診断装置(SONIMAGE513,コニカミノルタエムジー株式会社製)を用いて,中間広筋腹が表層近くで膨隆する部位を確認したうえ行った.電極は皮膚の電気抵抗を考慮し十分な処理を行い,電極中心距離は10mm,各筋線維走行に並行に貼付した.まず座位にて膝屈曲5 度における膝伸展最大随意等尺性収縮(以下,MVC: maximum voluntary contraction)時の大腿四頭筋活動量を計測した.筋活動量は付属のプログラムによって計算された面積積分値により評価した.次に右膝関節屈曲30 度,45 度,70 度位からの屈曲運動時,および屈曲30 度からの伸展運動時の大腿四頭筋各筋MVCより面積積分値を計算し,膝関節屈曲5 度でのMVCに対する割合(以下,%MVC)を計算して各筋間で比較検討した.測定は1 回で5 秒間のMVCを実施し,あいだ3 秒間の面積積分値を用いた.測定肢位はBIODEX 上端座位とし,角度調整もBIODEXにて行った.比較項目は各筋の角度別筋積分値の変化とした.統計処理にはSPSSによる一元配置分散分析法,および多重比較(Bonferroni 法)を用い,有意水準は 5% 未満とした. 結果は平均±標準偏差で表記した.【倫理的配慮、説明と同意】全ての被験者には動作を口頭および文章にて研究趣旨を十分に説明し,同意を得たのちに検証を行った.【結果】膝関節屈曲30 度からの伸展運動において,内側広筋(172%± 138),外側広筋(159 ± 117%),中間広筋(136 ± 81%),大腿直筋(132 ± 104%)の順で内側広筋となった.屈曲運動における角度別の各筋積分値は,30 度,45 度,70 度とも中間広筋が高値を示した.同一筋内の角度別比較では,4 筋とも屈曲運動30 度,45 度,70 度での筋積分値に有意差は認められなかった.また大腿直筋,内側広筋,外側広筋では,30 度からの伸展運動と,屈曲運動3 肢位積分値間で有意差が認めたれた(p<0.01).中間広筋においては,膝30 度屈曲位からの伸展運動と他3 肢位各間で有意差は認められなかった.【考察】膝関節伸展運動における大腿四頭筋各筋活動は,角度変化に伴い変化することはよく知られている.そのため臨床で大腿四頭筋各筋への個別アプローチは容易ではない.今回の検証により,屈曲運動時では大腿四頭筋各筋とも角度変化による特性が見られず,また中間広筋積分値が他3 筋より高い割合で筋力を発揮できていることから,屈曲運動による中間広筋個別アプローチの可能性が示唆された.伸展運動との比較においても大腿直筋,内側広筋,外側広筋では屈曲運動に比較し伸展運動が有意に高値を示す一方で,中間広筋では屈曲30 度からの伸展運動,30 度・45 度・70 度からの屈曲運動積分値に有意差がなかった事から,伸展運動のみならず,屈曲運動でも中間広筋を目的とした運動療法効果が期待出来ることが示唆された.【理学療法学研究としての意義】膝伸展筋力における中間広筋の貢献度が高いとの前回報告の立場から,膝関節屈曲運動での大腿四頭筋各筋活動について検証した.結果,屈曲運動では4 筋とも角度変化による影響を受けないこと,また中間広筋活動が他3 筋に比較し,高い傾向を示したことより,中間広筋個別アプローチ方法の可能性が示唆された.今後は,伸展運動・屈曲運動それぞれでの中間広筋トレーニングの至適角度,負荷量について検証する必要がある.

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© 2013 日本理学療法士協会
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