理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-08
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ポスター発表
膝伸展課題直後の等速性膝屈曲トルクとハムストリングスの筋活動
吉岡 芳泰谷埜 予士次鈴木 俊明
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抄録
【はじめに、目的】ハムストリングスは下腿の前方引き出しを制動するため、前十字靱帯損傷患者においては強化すべき主要な筋の一つとなる。主動作筋の収縮前に拮抗筋を収縮させると、主動作筋の収縮が促されるとされている。本研究ではハムストリングスにおいてもこの事象が適応するか否かを検証する目的で、膝屈筋群の収縮課題前に膝伸展運動を実施し、膝屈曲トルクおよびハムストリングスの筋活動に及ぼす影響について検討した。【方法】膝関節に異常を認めない健常男子8 名(平均年齢22.8 ± 3.0 歳)の右下肢を対象とした。対象者には実験1 週間前に手順を説明し、等速性筋力測定の練習を行わせた。また、実験は後述する等尺性膝伸展課題(以下、等尺性課題)から実施し、等速性膝伸展課題(以下、等速性課題)はその1 週間後に行った。対象者にはBiodex system 3(Biodex Medical Systems Inc.)を用いて、膝伸展−30°位から屈曲80°位までの可動域で、最大努力での膝屈曲トルクを測定した。その際60deg/secの角速度で実施した。また、開始肢位を−30°位としたのは腓腹筋による膝屈曲作用を減少させるためである。等尺性課題では、膝屈曲に先行して膝伸展−30°位で最大随意収縮(MVC)の20%、50%、80%MVC強度で膝伸展を行い、その直後に膝屈曲を行わせた。また、等速性課題は角速度60deg/secで膝屈曲80°位から伸展−30°位までの膝伸展を被験者の主観的な弱、中、強の強度で行い、その直後に膝屈曲を行わせた。等尺性および等速性課題において、膝屈曲のみ、20%、50%、80%MVCおよび膝屈曲のみ、弱、中、強の強度での膝伸展直後に膝を屈曲させる4 課題をランダムに各強度で3 回ずつ3 分間の休息をはさみながら行った。膝屈曲中の筋電図はテレメトリー型筋電計MQ8(キッセイコムテック社製)を用いて、内側ハムストリングス(MH)と大腿二頭筋(BF)から双極導出にて記録した。関節トルクおよび関節角度データと同期記録した筋電図の原波形は1000Hzのサンプリング周波数でAD変換した後、筋電図解析ソフトBIMUTAS-Video(キッセイコムテック社製)を用いて、膝屈曲ピークトルクとその発揮角度、平均トルク、MHとBFの平均振幅値を求めた。なお、膝屈曲ピークトルクと平均トルクは対象者の身体質量で正規化した。統計学的検討には、Dunnett’s検定を用い、各々の課題の膝屈曲のみを基準として、20%、50%、80%MVCおよび弱、中、強の強度での膝伸展直後の膝屈曲の値と比較した。なお、有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は関西医療大学倫理委員会の承認のもとで実施し、対象者には本研究の趣旨および手順を説明し、同意を得た上で行った。【結果】等尺性課題では、膝屈曲ピークトルクおよびその発揮角度、平均トルク、MHとBFの平均振幅値は、膝屈曲のみと比較して20%、50%、80%VMC直後の膝屈曲との間に有意な差を認めなかった。また、等速性課題も等尺性課題と同様に、膝屈曲のみと比較して弱、中、強の収縮直後の膝屈曲でも有意な差を認めなかった。【考察】山本ら(1981)は膝伸展において継時誘導の効果をみるため、最大努力にて最大膝屈曲位まで屈曲した後、すぐに最大努力で膝伸展0°位まで伸展する検討がされており、これは本研究の等尺性課題と対応し、逆運動による効果は、膝伸展0°位から最大屈曲位まで屈曲した後、最大努力で膝伸展0°位まで伸展する検討がされており、これは本研究の等速性課題と対応すると考えられる。本研究では膝屈曲において、関節トルクに加えてハムストリングスの筋活動も検討した。本結果より、拮抗筋の収縮様態(等尺性および等速性)と収縮強度を変化させてもMHとBFの筋活動量に変化が認められなかったため、このことに起因して膝屈曲ピークトルクとその発揮角度、平均トルクにも変化が認められなかったと考えた。また、筋活動が変化しなかった理由として、対象者が再現性よく最大努力での膝屈曲を行っていたことが考えられた。最大努力における筋活動の変化の可能性については、膝屈曲前の膝伸展速度を変化させてハムストリングスの伸張速度を変化させた場合も考えられるため、今後の課題としたい。【理学療法学研究としての意義】本結果より、ハムストリングスにおいても、拮抗筋収縮直後に筋活動が増加する効果は認められないことが明らかとなった。ハムストリングスの筋力強化練習の際には、膝屈曲のみを行わせた場合でも、膝伸展直後に膝を屈曲させた場合でも同等の筋活動を得られることが考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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