理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-46
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ポスター発表
健常成人の歩行時重心軌跡に及ぼす因子
足部アライメントに着目して
齋藤 亜惟府川 泰久水沼 由貴山口 エリカ藤井 菜穂子
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抄録

【はじめに】下肢アライメントは歩行に少なからず影響を及ぼし,扁平足では歩行時の足圧中心軌跡が正常足に比較して内側に偏移していると報告されている.またアーチ高率および下腿踵骨角(Leg Heel Angle以下:LHA)は,扁平足と関連性があることが示唆されている.そこで今回我々は,足部アライメントの左右差を検討するとともに,足圧の測定を行うことで,1 足部アライメントの左右差,2 アーチ高率とLHAの関連性,3 足部アライメントが歩行時足圧中心軌跡に与える影響を検討したのでここに報告する.【対象と方法】 被験者は健常成人女性10名(平均年齢 21.4±1.6歳 平均身長 158.7±7.73cm 平均体重 51.3±8.75kg)で,下肢の受傷歴による左右差の訴えがない本学学生であった.(1)アンケート調査  本研究に関与する要因を検討するため,アンケート調査を実施した.設問項目は軸足,利き足に関するもの,スポーツ歴(種類,期間,頻度),傷害歴(部位,受傷年齢,状況,処置内容)とした.(2)足部アライメント計測 《アーチ高率》  被験者は高さ20cmの台の上で非検査側の下肢を検査側下肢より前方に下垂させ,両上肢は前方の壁を支持した.検査側での片脚立位姿勢をとり,視線は正面で静止とした.第一中足骨頭・舟状骨結節をマーキングし,踵骨後端~第一中足骨頭(足アーチ長)・舟状骨結節~台上面への垂直線を測定した.アーチ高率は舟状骨高/足アーチ長×100(%)の計算により算出した.《LHA》  被験者は高さ20cmの台の上で立位姿勢となり,足幅は肩幅で足部中間位,両上肢を下垂させ,視線は正面で静止させた.踵骨最上端中間点と踵骨3分の1の中間点を結び,腓腹筋の腱・筋腱移行部・筋腹の中間点を結ぶ線の交点のなす角度を測定した.なお,踵骨回内位でのなす角度を+,回外位を-と表記した.(3)足圧中心軌跡 footscan®entry level USB7 system Version (Rsscan internatinonal)を使用し,通常速度における歩行中の足圧中心軌跡を測定した.被験者は助走3m,測定区間2m,予備3mの計8mの直線歩行路上を.「いつも通りの歩き方で歩いてください」と指示した後,通常速度で歩いてもらった.1人当たり3回測定を行い,再現性を確認した上で2回目のデータを使用した.立脚相のInitial Contact(以下:IC),Mid Stance(以下:MST),Terminal Stance(以下:TST)時の足圧中心軌跡を計測し,左右で比較した.使用した足圧中心軌跡の値は測定区間2m内を歩行したときの2歩目,3歩目とした.足圧中心軌跡は足底の中心線を基準に内側(+)・外側(-)偏移を判断した.ICでは最も早期に計測できた足圧値とし,MST及びTSTでは各相の最大圧においてデータを採取した. 足部アライメント計測,足圧中心軌跡計測において,いずれも熟練した同一検者が計測を行い,再現性を確認した上でデータを採取した.【倫理的配慮、説明と同意】全被験者には本研究の目的と方法を説明し研究協力の賛同を得た.【結果】アンケート調査の結果により左右差を与えるような大きな傷害はないこと,また被験者全員の軸足は左足であることを確認した.(1) アーチ高率とLHAの関連性  対象者10名をアーチ高率(平均24.88±2.30%)の高い群と低い群の2郡に分け、それそれのLHA(平均 2.30±2.08°)の比較を行ったところ,2郡間に有意差は認められなかった.(2) アーチ高率とLHAにおける軸足と利き足の比較  アーチ高率において左右差は認められず、平均 右25.1±2.53% 左24.7±2.15%であった。一方,LHAは、右,平均 1.3±2.36° 左 3.3±1.16°であり,有意な左右差(p<0.05)が認められ,軸足(左)は全員が回内位であった.それに対し,反対側(右)のLHAは,回内と回外が混在しており,アライメントにばらつきが存在していた.(3) 歩行時足圧中心軌跡の軸足と利き足の比較  MSTにおいて軸足の足圧中心軌跡が利き足と比較し内側に偏移する傾向が確認された.MST(平均 右-5.55±3.27mm 左2.79±3.50mm)はp<0.05となり有意差を認め,IC(平均 右-4.19±1.73mm左-2.19±2.96mm),TST(平均 右1.11±4.62mm 左4.12±5.92mm)はともに有意差が認められなかった.しかし,いずれも利き足と比較し,軸足の方が内側に偏移する傾向にあった.【考察】アーチ高率とLHAの関連性は認められなかったが,軸足においてLHAと歩行時足圧中心軌跡の内側偏移が有意に認められた.先行研究でアーチ高率低下に伴い,歩行時足圧中心軌跡が内側偏移するとされていたが,本研究ではLHAとの関連性が強いと考えられる.今回は足部アライメントのみについて計測を行ったが,下肢全体のアライメントの関与も推察される.【理学療法学研究としての意義】下肢の生理的外反の踵骨回内位への影響や,下肢アライメントと軸足の荷重偏移によりLHAは増大し,左右差が生じることも含め,今後さらに検討を重ねたい.

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© 2013 日本理学療法士協会
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