理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-46
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ポスター発表
血液透析患者に対する筋力トレーニングの介入効果と栄養状態との関連性について
山形 沙穂木勢 千代子森田 真純長谷川 恭一中村 睦美
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抄録
【はじめに、目的】 血液透析患者の筋力は,健常者と比較して低下しており,栄養障害が加わるとさらに低下すると言われている。そのため,血液透析患者の筋力低下を防止することは非常に重要であると思われる。しかし,重度の栄養障害もしくは不適切な栄養管理下での筋力や筋持久力の改善は困難であるとされており,筋力トレーニングを行う際には栄養状態を考慮する必要がある。しかし,筋力トレーニングの介入効果と栄養状態との関連性についての報告は少ない。そこで本研究では,血液透析患者に対する8週間の筋力トレーニングによる介入効果と栄養状態との関連性を明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は,全身状態および透析中の循環動態が安定し,当院で理学療法を施行している血液透析患者で,老人の日常生活自立度A・Bランクに該当した入院患者14名(男性7名,女性7名,平均年齢76.5±10.3歳,身長150.7±7cm,体重(ドライウエイト(DW))40.5±4.9kg, 透析期間11±9.2年)である。筋力の指標として等尺性膝伸展筋力体重比(膝伸展筋力),握力,栄養状態の指標として,理想体重比(%IBW:Ideal body weight),血清総タンパク(TP),血清アルブミン(Alb),総コレステロール(T-cho),ヘモグロビン(Hb),C-反応性蛋白(CRP)を用いた。また,日本人の新身体計測基準値(JARD2001)より,身体計測値から上腕筋周囲長(%AMC),上腕筋面積(%AMA)を求めた。膝伸展筋力測定には,徒手筋力測定器(ANIMA社製μ-TasF-1)を使用した。左右の脚とも2回ずつ測定し,最大値を膝伸展筋力として採用し,左右の平均値を体重で除した値(体重比:%)を解析値とした。介入内容は,通常の理学療法に加えて,膝伸展筋力増強を目的とした筋力トレーニング(3種類)を週3回の非透析日に介入した。運動負荷量は,Borg指数11~13を基準に運動回数・重錘使用の有無を各個人ごとに設定した。介入期間は,全8週間とし介入前・後において各評価を実施した。統計解析は,介入前・後の比較にはWilcoxonの符号付き順位和検定,各指標の相関にはPearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当院の倫理委員会の承認を得ており,対象者には研究の趣旨を十分に説明し,文書による同意を得て実施した。【結果】 対象者14名のうち,運動療法を完遂できたのは6名であり,脱落者は8名であった。脱落理由としては,転院・退院4名,意欲低下2名,状態悪化2名であった。8週間の運動療法を完遂した6名おいて,栄養状態の指標である%IBWは90%以上(栄養障害なし)1名,80~90%(軽度栄養障害)3名,70~79%(中等度栄養障害)2名であり,全体の83%において栄養障害を有していた。膝伸展筋力は,介入前22.6±9.8%,介入後23.2±9.5%であった。介入前・後による比較では,全ての指標において有意差はなかった。各指標の相関では,介入前において%IBWと%AMC,%IBWと%AMAで有意な相関を認めた。【考察】 8週間の運動療法を完遂した6名において,全体の83%で介入前から栄養障害を有しており,筋力トレーニング介入前・後における栄養状態の変化は認められなかった。また膝伸展筋力は,介入後は介入前と比較して平均値は高値を示したものの,有意差は認められなかった。これは脱落者が多く対象者数が減少したことが一要因として考えられる。血液透析患者の筋力については,膝伸展筋力が39%未満になると全体の73%の血液透析患者が移動能力低下を示し,歩行補助具を必要とする者が増加すると報告されている。本研究の対象者の膝伸展筋力は,介入前・後とも約23%であり筋力低下が著明であることが示された。また,本研究では介入前において,%IBWと%AMC,%IBWと%AMAとの間で有意な相関を認めた。これは,栄養状態が良好な患者ほど筋量が多いという先行研究と同様の結果が示された。筋力や筋量の低下は初期の栄養不良で起こると言われているため,適切な栄養管理と個々に見合った筋力トレーニングを同時に行うことが必要だと考える。今後は,身体機能面だけでなく患者自身の運動に対する意識や自信(自己効力感)などの心理面の評価も踏まえた上で症例数を増やし長期的に検討を続けていきたい。【理学療法学研究としての意義】本研究では,血液透析患者に対する8週間の筋力トレーニングによって膝伸展筋力の介入効果と栄養状態との関連性は認められなかったが, 栄養状態が筋量と関連していることが改めて示された。今後,血液透析患者を対象に筋力トレーニングを施行する際には,栄養状態を踏まえた上でトレーニング内容や負荷量を個々で設定して行うことにより,より効果的に筋力が維持増強されると考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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