理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-O-02
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一般口述発表
OSCEによる臨床実習対応教育が学生の基礎的臨床技能に与える影響
加藤 仁志鈴木 学蛭間 基夫黒川 望木村 朗
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抄録
【はじめに、目的】 OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)は1975 年Harden らにより発表された臨床能力を客観的に評価する方法である。その実施学年や目的は教育機関により様々であるが、本学では従来より見学実習前の2年生を対象とし、実施目的は情意領域、情報収集、バイタルチェック、トランスファーなどの基本的臨床技能を確認することと、学生・教員ともに学生の潜在的な問題を発見することや基本的臨床技能を習得することとしていた。我々はOSCE による臨床実習対応教育が情意能力に与える影響および各項目間の関係について検討することを目的とした報告を行い(2011)、福山ら(2000)が報告したように、OSCEをExaminationではなくExerciseとして繰り返し実施することにより情意能力向上によい影響をもたらすことが考えられた。しかし、この報告では情意領域のみの検討であり、情報収集やバイタルチェック、トランスファーなどの基本的臨床技能については検討されていない。本研究は、OSCEによる臨床実習対応教育が学生の基本的臨床技能に与える影響および各項目間の関係について検討することを目的とした。【方法】 対象は本学理学療法学科2年生56名(男性29名、女性27名)とし、平均年齢は19.8±0.4歳であった。実施内容は、患者への挨拶、簡単な情報収集、バイタルチェック(血圧、脈拍測定)、車椅子からプラットホームへの移乗動作とした。全行程終了後、学生にはOSCE での自己評価を実施した。自己評価は良、やや良、どちらともいえない、やや不良、不良の5 段階評価とし、結果を良(5)~不良(1)というように数値化した。さらに見学実習終了後に同一内容で再度OSCE を実施し、同様に自己評価を実施し、結果を数値化した。第1 回目と第2 回目のOSCE の結果について、SPSS statistics20を使用し、Wilcoxon の符号付き順位和検定による比較および、Spearmann の順位相関係数を算出して相関分析を実施し、各項目間の相関関係について検討した。これらの有意確率は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究に際してその目的の趣旨、プライバシーの保護、参加拒否・中止の自由、分析結果の開示などについて説明し、文書による同意を得た。【結果】 OSCE による情報収集の自己評価得点は第1 回目が3.57~4.42 、第2 回目が3.56~4.19であった。バイタルチェックの自己評価得点は第1回目が3.40~4.43、第2回目が3.23~4.33であった。トランスファーの自己評価得点は第1回目が2.45~3.50、第2回目が2.90~4.25であった。第1回目と第2回目との比較では、トランスファーの「動作の安定度」(p<0.01)、「自己の腰痛予防体勢」(p<0.05)がいずれも第2回目の方が有意に高い得点であった。トランスファーにおける他の項目でも第2回目の方が高い傾向であったが、有意差は認められなかった。情報収集とバイタルチェックの項目では有意差は認められなかった。各項目間の関係は、模擬患者とのコミュニケーション技能に関する項目が相互に有意なやや高い相関(r=0.612~0.720)が認められた(p<0.01)。【考察】 本研究の結果から基本的臨床技能のうち情報収集とバイタルチェックに関しては比較的得点が高く、トランスファーでは比較的得点が低いことが示唆された。トランスファーには必要な技能が高く、2年生まででは身に付きにくい項目であることが示唆された。見学実習後の第2回目のOSCEではトランスファーの項目で2項目(動作の安定度、自己の腰痛予防の姿勢を取っていたか)で有意に得点が上がり、第1回目のOSCEによって示されたトランスファーの技能の低さを省みることで自主的な学習を行い、技能が向上したと考えられ、このことは学生に対して基本的臨床技能の評価(自己の振り返り)と自主的な学習の促しという、よい影響をもたらしたことが示唆された。そして、コミュニケーション技能に関する各項目間ではやや高い相関が認められ、OSCEでの臨床実習対応教育の繰り返しにより、これらの技能を相互に向上させることが可能であることが示唆された。このことからOSCEをExaminationでなくExerciseとして繰り返し実施することによって技能向上によい影響をもたらすと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果から、OSCEは学生に対して自主的な学習の促しという、よい影響をもたらすことが示唆された。このことは理学療法学教育の一つの手段であるOSCEの有用性を示唆しており、理学療法学研究として有意義であると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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