抄録
【はじめに、目的】本研究は、障がいのある者が自立ある生活を営む上で、リハビリテーション(以下リハと略す)の分野から社会福祉領域に、どのような支援方法及びそれを実現するためのシステムと質量を伴なった適切なサービスが必要とされているのか。その現状を実態調査し、必要かつ適切なリハサービス提供の在り方、及びその実践のための課題を明らかにする基礎資料の作成を研究目的とした。【方法】対象:きょうされん支部のある施設・事業所37ヵ所(利用者:回収数27、回収率14.6%、性別:男性19名、女性8名、年齢構成40歳未満57.7%。施設・事業所:回収数8、回収率21.6%、回答者年齢構成50歳以上が71.4%)。量的調査研究法を用い、福祉施設・作業所における利用者の生活及び作業に対するリハ支援の状況について、調査は自記式配票調査法採用、1週間留置し、調査票の配布及び回収は郵送にて実施した。調査時期:2011年2月。分析法:基本属性、生活及び福祉サービス利用状況、リハの動機及び実施状況、情報や連携、住宅改修・福祉用具相談、福祉領域へのリハ導入について、統計ソフトSPSS17.0を用いて分析した。【倫理的配慮、説明と同意】調査及び調査結果の公表は、厚生労働科学研究に関する指針に従った。【結果】回答結果は以下の通りである。(多い割合順)利用者の主な原因疾患:脳性麻痺(47.4%)。身障手帳:肢体不自由(78.6%)。障害程度区分:6区分(40.9%)。利用通所施設・事業所:就労B(非雇用型)(58.8%)、利用期間:2年以上(92.6%)、通所回数:毎日(92.6%)。外出状況(通所外):週1~2回(53.8%)。福祉サービス利用状況:介護給付(39.6%)、福祉用具・住宅改修(22.6%)、訓練給付(17.0%)、利用期間:2年以上(55.9%)、利用回数:毎日(81.8%)、誰からの歓誘:医療・福祉(36.4%)。リハサービス利用動機:ADL維持・改善(72.2%)、リハサービス利用内容:PT(59,1%)、リハサービス種目:ADL(33.3%)、運動療法(23.3%)、リハサービス効果:まあまあ(63.2%)、リハサービス利用後の生活範囲:どちらとも(64.7%)、社会参加:していない(61.1%)、前向きな生活:まあまあ(52.4%)、利用期間:2年以上(73.7%)、利用回数:4~5回(50.0%)、利用回数満足度:どちらとも(52.9%)、内容満足:やや満足以上(61.1%)、他の同境遇者への歓誘:紹介したい以上(52.6%)。リハ情報提供:まあまあ以上(57.9%)、リハ説明理解:まあまあ以上(70.0%)、リハ情報共有・連携:どちらとも以下(72.2%)。住宅改修・福祉用具(住・福)相談:医師(23.8%)、リハセラピスト、SW(14.3%)、住・福相談効果:まあまあ以上(77.8%)、住・福相談のリハ職業務周知:知らない(73.9%)。リハ支援によって、①ADL:まあまあ充実以上(利用者45.5%,提供者57.1%)、②社会的・職業的参加:まあまあ促進以上(利用者14.3%,提供者80.0%)、③介護負担:まあまあ軽減以上(利用者43.5%,提供者60.0%)、④生活の自立:まあまあ促進以上(利用者33.3%,提供者60.0%)。【考察】福祉施設・作業所に通所する利用者の約半数は、肢体不自由重度障害の脳性麻痺者で占められ、ADL維持・改善を目的にリハ効果やその内容を認めつつ、前向きな生活ができているとして、長年ほぼ毎日非雇用型の作業所に通所している現状がある。しかしながら、福祉サービス利用では、介護給付が優先され訓練給付は後回しの傾向にあり、生活環境整備につながる住宅改修・福祉用具の相談は、その効果を認めつつリハセラピストの役割としての認識は低く、リハ効果として生活範囲拡大や社会参加への結びつきはその有益性に乏しいとの回答であった。また、半数以上の利用者とサービス提供者は、ADL支援によってADLの自立が促進すると回答しているが、社会的・職業的参加や介護負担、生活の自立は、大きく乖離していた。 ゆえに結論として、利用者自身の自立生活への意欲や能力にもよるが、利用者個々人に応じた生活範囲の拡大や社会参加の在り方を模索した多様なリハサービス支援の必要性があると考える。また、それを実感し補償するようなリハ前置主義の早急な制度的確保とリハセラピストの可及的速やかな介入支援が求められていると言えよう。【理学療法学研究としての意義】社会福祉領域への理学療法士による支援は、従前の医学モデルから新たなライフモデルに基づく支援の在り方として、社会福祉的理学療法学の地平を開き、職域拡大につながる大きな意義があるものと考える。