理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-12
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ポスター発表
ICU患者におけるAPACHE2スコアを用いた重症度の有用性の検討
音地 亮江里口 杏平山田 将弘車 忠雄
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キーワード: ICU, APACHE2スコア, 早期リハ
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抄録

【目的】我々は、第47回理学療法学術大会において人工呼吸器装着患者におけるAPACHE2スコアのカットオフ値23点を契機に転帰の予後予測が可能であることを発表した。患者の全身状態・ADLは、入院当初の全身状態の悪化度合いに影響を大きく受け、当カットオフ値で分類した場合には、リハの進行・ADL改善度合いは大きく分かれるものと考えられた。そこで今回、ICU入室時のAPACHE2スコア23点が、転機の予後予測以外にも経過を予測する為に応用可能かを検証するため、リハ介入の進行度や在院日数などについて比較・検討した。【方法】対象は2011年7月~2012年7月の間で、病前歩行可能であり当院ICUに入室しリハビリ処方のあった内科疾患患者41名(男性20名、女性21名、平均年齢79.8±12歳)とした。主病名の内約は(心不全43%、肺炎39%、COPD急性増悪8%、呼吸不全5%、腎不全5%)であった。カルテより後方視的に基本属性(年齢・性別・疾患名)、日数(リハ開始日数・離床開始日数・歩行開始日数・ICU在室日数・在院日数)、リハ開始時FIM、退院時FIM、ICUリハ内容、転帰を調査した。APACHE2スコア23点未満を軽症群、23点以上を重症群とし、2群間で比較した。また離床に関しては、ICU環境を考慮し、端座位まで可能となった時点で離床開始と定義した。そして(退院時FIM-リハ開始時FIM)/在院数の値をΔFIM とした。統計処理として、2標本t検定・Mann-Whitney-U検定を用い、いずれの解析においても危険率5%未満を有意とし検討した。統計解析ソフトにはStatView-J5.0 を使用した。【倫理的配慮】本研究は対象者への説明と同意に基づき理学療法を実施し、倫理的配慮に基づき個人情報データを取り扱った。【結果】軽症群は25名(60%)、重症群は16名(40%)であった。24日(平均入院日数18.5日+5.7日)以上の長期在院日数の患者は、軽症群4%・重症群25%であった。また 2群間において (軽症群vs.重症群、p値)、リハ開始日数(2.5±1.3日vs.3.8±1.8日、p<0.05)、離床開始日数(4.8±3.4vs.7.1±3.1、p<0.05)、歩行開始日数(7.5±3.6日vs.11.7±3.7日、p<0.01)、ICU在室日数(5.7±3.2日vs.9.3±3.7日、p<0.01)、在院日数(16.3±4.9日vs.22±5.2日、p<0.01)で有意差を認め、転帰(自宅退院80%vs50%、p=0.10)で有意傾向にあった。年齢(80.1±13.6vs.79.4±9.9、p=0.863)、ICUリハ内容(ベッド上・端座位・起立・歩行=24%・32%・32%・12%vs.25%・37.5%・37.5%・0%、p=0.59)、リハ開始時FIM(30.8±15.1vs.24.1±8.5、p=0.19)、退院時FIM(76.5±27.8vs.74.2±30.5、p=0.789)、ΔFIM(p=0.21)で有意差を認めなかった。【考察】本研究では、前回求めたAPACHE2スコアにおけるカットオフ値について、他のパラメーターについても再検証を行った。入院が長期化するケースにおける軽症群と重症群のふるい分けは、重症群が多い傾向にあったが個人差によるものが大きいと考えられた。経過として、軽症群は比較的早期から離床・歩行が行え、ICU在室日数・在院日数の短縮化が図れた印象はあったが、ICU在室日数に対し、ICU内リハの進行度合いに関しては、2群とも有意差なく重症群においても37.5%は起立まで施行できていた。また退院時FIM・ΔFIMにおいても有意差を認めず、時間経過に伴い両群ともADL能力は徐々に上昇が認められる結果となった。以上よりAPACHE2スコア23点は、転帰予後予測の他に、入院長期化を予測できる傾向や離床・歩行開始に時間を要すかを予測できる能力を有していたが、介入によるADL能力改善度、介入内容には差を認めなかった。超早期からのリハ介入の意義は、短い入院期間の中で可及的早期に病前レベルまで改善させることであり、このスコアを長期化の予測に活用し、臨床応用していきたい。【理学療法学研究としての意義】在院数の短縮化が図られる急性期病院において、ICU入室時から予後予測を行うことは重要であり、今回の研究におけるAPACHE2スコアの再検証は、フォローアップデータとして有用であったと考えられる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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