理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-20
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ポスター発表
保存期慢性腎臓病(CKD)患者の高身体活動量はQOLに影響する
樋口 謙次久保 晃下地 大輔齋藤 愛子宇都宮 保典細谷 龍男安保 雅博
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抄録
【はじめに】慢性腎臓病(以下CKD)患者は血液透析導入に至る前に心血管病変(以下CVD)を併発する患者が多数存在する。CVDなどの生活習慣病の進行予防や罹患率低下に寄与する身体活動(以下PA)の維持・向上は、CKD患者にとっても予防手段としての一助になる可能性がある。また、一般的にPAと健康関連QOL(以下QOL)は関連する報告があることから、健常成人よりQOL低下を示すCKD患者にとって、PA維持・向上を図ることは重要であると考えられる。しかし、これまで保存期CKD患者のPAやQOLに関する報告は少なく、上記の述べたことが適当であるか検討する意義がある。そこで本研究の目的は、横断的に保存期CKD患者のPAとQOLを調査し、その関連を検討することである。【方法】 対象は本調査に同意が得られた腎臓・高血圧内科外来を受診している保存期CKD患者74症例(男性51名、女性23名、平均年齢55.8±11.9歳)である。除外対象は、ステロイドを含む免疫抑制薬を服用中の患者とした。PA、健康関連QOLについて質問紙を用いて調査した。PAは国際標準化身体活動質問票のLong Versionを用い3Mets以上PAであるエクササイズ値(Mets・時間/週)、QOLはSF-36を用い、身体的側面のQOL(以下PCS)、精神的側面のQOL (以下MCS)を算出した。腎機能は、概算糸球体濾過量(以下eGFR)、ヘモグロビン(以下Hb)、随時尿検査より尿蛋白を調査時直近の検査値を用いた。検討方法は、エクササイズ値、MCS、PCSと腎機能(eGFR、Hb、尿蛋白)の関連性についてピアソンの積率相関係数を用いた。その他に健康づくりのための運動基準2006のPA量23エクササイズ及び運動量4エクササイズの基準を超えている群を高PA群、それ未満の群を低PA群に別け、2群間において年齢、腎機能(eGFR、Hb、尿蛋白)は対応のないT検定、QOLはMann-Whitney U検定を用いて比較検討した。統計処理はSPSSver19を用い、各検定の有意水準は5%未満とした。【説明と同意】本研究は倫理委員会の承認を受け、患者に目的と方法を書面で説明し、同意を得て実施した。【結果】エクササイズ値、PCS、MCS、eGFR、Hb、尿蛋白の各項目間の相関は、全ての項目間で有意な相関関係は認めず、相関係数(0.22~-0.11)は低値であった。高PA群(n=39)と低PA群(n=35)において、年齢(高PA群vs.低PA群:58.4±10.4 歳vs. 52.87±12.8歳)及びエクササイズ値(42.7±29.2Mets・時間/週 vs. 4.4±4.6 Mets・時間/週)、QOLのMCS(53.2±8.0 vs. 49.5±7.9)で高PA群が有意に高値を示した。eGFR(47.6±16.6ml/min/1.73m² vs. 54.1±18.7 ml/min/1.73m²)、Hb(13.8±1.5g/dl vs. 13.9±1.5g/dl)、尿蛋白(74.9±39.5g/gCr vs. 71.2±26.7g/gCr)、PCS(54.2±4.6 vs. 53.5±7.4)では有意差は認められなかった。【考察】保存期CKD患者において、PA、QOL、腎機能との相関は認められなかった。しかし、腎機能低下とともにPA量が低下すると報告もある(Oddnら.2004)。本調査対象患者は、尿毒症の症状よりPA低下が考えられる透析直前の患者は含まれておらず、QOLのPCSから身体的に悪化している患者が少ないことが、PAと腎機能で相関を示さなかった原因の一つと考えられる。PAとQOLについて相関を認めなかったが、生活習慣病予防の運動基準を超えている高PA群において有意にMCSが高値を示した。このことから高いPAを維持することにより、QOLの精神面に影響を与えることが示唆された。CKDガイドライン2009よりPA維持は推奨されており、保存期の早い段階からPAの維持を図るためにも健康づくりのための運動基準2006を用い、運動・生活活動指導の一つとして活用することが高いQOLを維持する方法として有効と考えられる。今後の課題として、長期的なPAとQOLの経過観察が必要である。【理学療法学研究としての意義】本研究は、保存期CKD患者の運動・生活活動指導の一助として活用でき、理学療法領域での予防医学の貢献に寄与すると考えられる。 
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© 2013 日本理学療法士協会
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