理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-20
会議情報

ポスター発表
介護老人保健施設の包括的ケアが透析患者の日常生活動作能力および代謝コントロールに与える効果について
上杉 睦園 英則筒井 麻理子島村 彩香松本 和
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】在宅で生活する透析患者は週に数回,通院する必要がある.また,透析療法は数時間かかるため,日常生活の活動量が減少し,ADLの低下が問題となっている.米国K/DOQL(Kidney Disease Outcome Quality Initiative)による「透析患者における心血管病CVDガイドライン」では,すべての透析患者に対して運動レベルを引き上げるよう奨励すべきとされる.また,透析患者では日々の栄養管理が特に重要であるが,在宅で食事や水分のコントロールを厳重に行うことは難しい.介護老人保健施設(以下老健)は医療,看護,介護,栄養,リハビリの包括的なサービスの提供ができる,そのため,透析患者が老健で生活することは日常生活動作能力や栄養管理等の面で有益と考える.そこで,在宅から老健に入所した透析患者について,入所後の血液検査結果,日常生活動作能力を経時的に調査し,老健入所による効果を検証した.【方法】対象は在宅から当施設に入所した透析患者14名(男性7名,女性7名).理学療法では入所時に身体機能を評価し,週7回,個別リハビリを実施した.運動種目はマシントレーニング,自転車エルゴメータ,筋力強化運動,歩行練習等を個々に設定し実施した.透析日と非透析日では運動量を調整し実施した.栄養管理では管理栄養士が入所時に事前の情報より栄養アセスメントを実施,エネルギー,タンパク,P,K,水分の量を調整した透析食を提供した.測定項目は血液検査の結果として透析前のBUN,Cr,Alb,P,K,Na,Ca,Hbの値を調査した.また,透析前の体重,日常生活動作能力の変化として機能的自立度評価表(以下FIM)を測定した.各項目とも入所時に測定し,その後,1か月毎に4ヵ月後まで結果を調査した.統計は入所時の値を基準値として各測定月の値とWilcoxonの符号付順位和検定で比較した.さらに,退所した7症例の退所先を調査した.【倫理的配慮、説明と同意】研究の実施および個人情報の取り扱い方法に関してはヘルシンキ宣言および臨床研究に関する倫理指針を順守し,対象者の説明と同意を得て実施した.【結果】血液検査の結果(平均±SD)ではBUN(mg/dl)は入所時56.0±11.4に比較し4ヵ月後48.3±15.3,P(mg/dl)は入所時4.5±1.1に比較し4ヵ月3.6±0.8と有意に減少した.FIM(点±SD)は入所時93.2±22.4に比較し4ヵ月後99.8±21.6で有意に増加した.他の結果では有意差はなかった.退所者の転帰先は在宅が4名,病院が3名であった.【考察】老健の医療,リハ,栄養,看護,介護の包括的なサービス提供より透析患者が得られる効果は多い.特に栄養管理や適度な運動の継続は短期間で透析患者の代謝異常を是正し,代謝コントロールが安定する.また,3ヶ月程度の短期間で日常生活動作能力の向上が得られるため,透析患者は老健をリハビリ目的,体調管理,季節入所といった利用期間を定めた頻回の利用や,栄養指導,運動指導,看護面の教育も含めた教育入院のような利用することが有効と考える.しかし,現在の我が国の医療制度では腎臓疾患のリハビリテーションについて診療報酬が設定されていない.また,介護保険制度においても透析患者は医療面での制約が多く,施設入所が困難なケースが多く,現在の医療制度,介護保険制度下では維持期血液透析患者は積極的な運動療法が受けられないといった社会的背景がある.現状での制度下では積極的な運動療法が集中して実施できる環境は老健のみであり,老健における理学療法の取り組みを今後さらに検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】今回の研究結果より,透析患者が老健を利用する利点は多い.今後,透析患者が老健の在宅復帰支援,在宅生活の継続の支援,理学療法の実施,栄養管理といったサービスを目的,目標を持って活用できるよう検討が必要である.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top