理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-04
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一般口述発表
人工膝関節置換術後のグループエクササイズが運動機能や入院期間に及ぼす影響
飛山 義憲和田 治田所 麻衣子岡田 修一
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抄録
【はじめに、目的】 人工膝関節置換術は変形性膝関節症による疼痛改善などを目的に施行されるが,術後には筋力低下などの運動機能の低下が生じることが知られている.このような運動機能低下に対しては筋力増強運動,可動域運動などの運動療法を行うことが一般的である.変形性膝関節症は加齢性の疾患であることから人工膝関節置換術の対象者は高齢であることが多いが,高齢者の多くはエクササイズを一人で行うよりもグループで行うことを望んでいること,グループエクササイズが高齢者の運動機能改善に有効であることが報告されていることから,人工膝関節置換術後の運動療法にもグループエクササイズが有効であることが推察される.実際に海外では人工膝関節置換術後にグループエクササイズを実施していることもあるが,その効果を検討した報告は見当たらず,本研究では人工膝関節置換術後のグループエクササイズが術後の運動機能や入院期間に及ぼす影響を検討することを目的とした.【方法】 対象は当院にて人工膝関節置換術を2011年に施行した244名(コントロール群),2012年に施行した148名(グループエクササイズ群)とした.原疾患は変形性膝関節症とし,術前にバギーや車椅子など杖以外の歩行補助具を用いている者,術後せん妄が著明であった者は除外した.両群とも術日に深部静脈血栓症予防に関する理学療法を開始し,術翌日から歩行練習などの理学療法を行った.歩行器歩行が自立した後,安全で自立した杖歩行,階段昇降を獲得し,退院となった.運動療法は術翌日から午前,午後に実施し,コントロール群においては個別に,グループエクササイズ群においては入院中の人工膝関節置換術患者全員で実施した.運動療法の内容は両群ともアイシングや可動域運動,筋力増強運動など同一のものであった. 運動機能評価は退院日に実施し,膝関節可動域,膝関節伸展筋力,10m歩行時間,Timed Up & Go test (TUG),腫脹(健側比:患側の腫脹/健側の腫脹を算出)を計測した.また杖歩行自立に要した期間として,術日から病棟内での杖歩行自立を許可するまでの日数を調査し,入院から退院までの期間を入院期間として算出した. 統計学的解析にはWilcoxonの順位和検定を用い,エクササイズ群とコントロール群の退院日の運動機能,入院期間の比較を行った.統計学的有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って計画され,対象者には本研究の主旨,目的,測定の内容および方法,安全管理,プライバシーの保護に関して書面および口頭にて十分な説明を行い,署名にて同意を得た.【結果】 グループエクササイズ群において,膝関節伸展筋力や10m歩行時間,TUGは有意な差を認めなかったが,腫脹と膝関節屈曲可動域,伸展可動域はコントロール群に比べ退院日に有意に改善を認めた(p<0.01).さらに,杖歩行自立に要した期間,入院期間に関してもコントロール群に比べ,グループエクササイズ群において有意に減少を認めた(p<0.01).【考察】 本研究では,グループエクササイズを行うことで膝関節伸展筋力や歩行能力に有意な差は認めなかったものの,腫脹や可動域は有意に改善を認め,杖歩行自立に要した期間,入院期間も有意に減少を認めた.高齢者におけるグループエクササイズでは,参加者自身の交流によってその効果が高められることが報告されているが,本研究においてもグループエクササイズを行うことで互いにエクササイズ方法を確認しあったり,他の対象者のエクササイズを見ることで自身へのフィードバックを行えるなど,エクササイズの効果が高まった可能性が考えられる.また,地域在住高齢者では社会的交流がウォーキングなど運動実施の要因になっていることが報告されており,グループエクササイズの実施により対象者間の交流が図られ,それによって病棟内の歩行などより活動的になったことも杖歩行自立に要した期間や入院期間の減少につながった可能性が考えられる.さらに,対象者間の交流によって不安解消や,エクササイズや活動に対する意識変化が生じたことも杖歩行自立や入院期間に大きく影響を及ぼしていると考えられ,グループエクササイズが対象者の精神面に及ぼす影響に関しても今後検討すべきと考える.【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は,人工膝関節置換術後の運動療法の実施形態に関して国際的にも検証されていないグループエクササイズの有効性を示す,意義のある示唆を含む研究である.
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© 2013 日本理学療法士協会
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