理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-S-03
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セレクション口述発表
リハビリテーション病院における脊髄不全損傷者の移動形態予後予測因子の検討
古関 一則吉川 憲一前沢 孝之浅川 育世水上 昌文
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抄録
【はじめに,目的】 近年高齢者の非骨傷性脊髄損傷者の増加に伴い,歩行獲得の可能性がある脊髄損傷不全麻痺者の割合が増加しており,受傷後早期の神経学的変数をもとに脊髄損傷者の歩行能力獲得を予測する報告が見られる.わが国では2000年より回復期リハビリテーション病棟制度が導入されたのに伴い,前述の社会背景も交え,回復期病棟を含む一般リハビリテーション病院(脊損専門病院でない)における脊髄損傷者が増加している.これらのリハビリテーション病院では,受傷直後や急性期における神経学的回復に関する情報が十分得られないことが多く,入院時点での身体及び動作能力から予後予測をする必要があるが,現時点ではそのような指標は報告されていない. そこで今回,リハビリテーション病院入院時点での各指標から脊髄不全損傷者の移動能力予後に関わる要因を明らかにすることを目的とし,調査を実施したので報告する.【方法】 対象は2007年1月~2012年5月までに当院へ入院した脊髄障害を有する者のうち,受傷から3ヶ月以内かつASIA impairment scale(以下AIS) C,Dの者(motor incomplete Spinal Cord Injury,以下miSCI)49名(平均年齢58.6±15.9歳,男性38名,女性11名)とした.尚,二分脊椎等の小児疾患,手術目的で入院者,その他特筆すべき既往歴を有する者は除外した. 調査項目は入院時・退院時の移動形態,基本情報(『年齢』『性別』『受傷原因』),疾患情報(『障害名』),初期評価時点での神経学的機能(『AIS』)及び動作能力(『寝返り』『起き上がり』『座位』『立ち上がり』『立位』『Walking Index for Spinal Cord InjuryⅡ(以下WISCI)』『排尿方法』『FIM合計点』)の計13項目をとし,診療録より後方視的に情報を抽出した.移動形態はSpinal Cord Independence MeasureⅢ(以下SCIM)のitem12,14,FIMより1:車椅子・2:介助歩行・3:屋内自立・4:屋外自立の4群に分類した.調査は事前に評価基準の統一を十分に図った理学療法士3名が実施した. 統計学的分析は,単相関分析(spearmanの順位相関係数)及びカイ二乗検定を用い,有意であった項目を独立変数,退院時移動形態を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)により退院時移動形態を予測する変数について検討した.尚,各項目のランク付けの検者間信頼性はκ係数を用いて検討した.データ解析はSPSS(ver.20)を用い,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮,説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿って行い,個人に不利益をあたえることのないよう,得られたデータは匿名化し,個人情報が特定できないよう十分に配慮した.【結果】 受傷から入院までの期間は平均53.3±19.8日,平均入院期間は139.4±57.1日であった.移動形態は,入院時は車椅子36名(74%),介助歩行8名(16%),屋内自立3名(6%),屋外自立2名(4%)であったが,退院時には車椅子14名(29%),介助歩行4名(8%),屋内自立10名(20%),屋外自立21名(43%)へと改善した.退院時移動形態に関わる要因の検定では,Spearmanの順位相関係数及びカイ二乗検定の結果,受傷原因以外の12項目で有意な関係を認めた.これらの変数を独立変数とした重回帰分析の結果,入院時座位能力,WISCI,年齢が退院時移動形態を規定する因子として抽出された.退院時移動形態を予測する重回帰式はY=2.228+0.466×座位+0.072×WISCIⅡ-0.23×年齢(R2=0.745,p<0.001)であった.検者間信頼性についてはκ係数で0.683~1.000と良好な値が得られ,信頼性が確認された.【考察】 退院時移動形態を規定する因子として入院時の座位能力,WISCI,年齢の3項目が要因として挙げられた.また,決定変数は74.5%と高い値を示し,予測精度の高い回帰式を得ることができた.一方,先行研究で述べられていた神経学的な因子は要因として挙げられなかった.主たる要因として挙げられた座位能力やWISCIは理学療法場面において実施可能な能力を示しており,受傷2ヶ月前後の時期においては神経学的な因子ではなく,年齢とその時点で可能な動作能力を指標として予後予測を行うことが重要であることが示唆された.また,WISCIは歩行補助具の種類,下肢装具の有無,介助量を点数化したものであり,上肢機能,下肢支持能力など複合的に身体機能を評価するのに有効であったと考えられる.今後は対象数を増やし更に検討を加える共に,今回作成出来た回帰式を使用した前方視的な調査も実施していく必要がある.【理学療法研究としての意義】 近年増加傾向にある脊髄損傷不全麻痺者の移動形態予後に関する要因を明らかにすることは,計画的かつ効率の良い練習内容の選択や退院準備を行う際に重要である.特に,近年は受傷から退院までを脊髄損傷専門病院で過ごすだけでなく,急性期病院から一般病院を経由して自宅退院を目指すケースも増加しており,受傷後ある程度経過した時点で使用可能な予後予測の指標を作成することは有用である.
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© 2013 日本理学療法士協会
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