理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-O-13
会議情報

一般口述発表
地域在住高齢者における足趾把持力と足部屈曲距離がバランス能力へ与える影響
森田 泰裕藤田 博曉新井 智之加藤 剛平田中 尚喜
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】 高齢者においてバランス能力低下は運動能力の低下の中で初期から発生するといわれ、生活活動量の低下や転倒恐怖感を予防して健康増進を促す事は重要な課題である。現在の医療は受傷後の治療だけでなく、予防に関して運動能力・生活環境など様々な部分が注目されている。なかでも高齢者に対して様々な取り組みが行われており、足部の機能は年齢別の筋力の推移や足趾把持力とバランスの関連や、足趾把持力と動的姿勢制御について多くの研究がみられている。足部屈曲距離は足趾把持力に影響を及ぼす因子といわれているが、バランス能力に関係する足部機能として検討されているもの少ない。足部の機能と高齢者のバランスとの関連を検討することは重要であると考える。本研究の目的は、地域在住高齢者の健康増進や転倒予防を促すため、足部の機能とバランス能力の関連を明らかにすることである。高齢者の足趾把持力・足部屈曲距離と前方リーチ距離との関係を分析し、高齢者のバランス能力について検討することである。【方法】 対象は、埼玉県M町在住でシルバーセンターに登録している地域在住高齢者49名(平均年齢69.7±4.4歳(61〜80歳)、男性36名、女性13名)である。性別、身長、Functional reach test(FRT)、足部の機能として足趾把持力、足趾及び前足部を自動運動で最大屈曲させ、屈曲前の足趾先端位置から屈曲時の足趾先端までの距離(足部屈曲距離)を計測した。なお、足趾把持力の測定には竹井機器製の足趾筋力測定器T.K.K.3360を用いた。統計処理は、年齢、身長、足趾把持力、FRT、足部屈曲距離のそれぞれの関連についてピアソンの相関係数を用いた。バランス能力との関連を分析するため、従属変数をFRTとし有意な相関があった項目を独立変数とした重回帰分析を用いた。なお、統計学的解析は、SPSS Ver18を用い有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、埼玉医科大学医療保健学部倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】 FRTの平均は、34.1±5.5cm(男性35.0±5.7cm、女性31.7±4.5cm)であった。各項目間にみられる相関は、FRTと年齢(r=-0.29,p<0.05)に有意な負の相関を認めた。また、FRTと身長(r=0.37,p<0.05)、FRTと足趾把持力(r=0.44,p<0.05)、FRTと足部屈曲距離(r=0.46,p<0.05)、足趾把持力と足部屈曲距離 (r=0.33,p<0.05)に有意な正の相関を認めた。年齢と足部屈曲距離には相関は見られなかった。従属変数をFRTとした重回帰分析では、年齢・足趾把持力・足部屈曲距離が選択された(R2=0.393,p<0.05)。【考察】 地域在住高齢者の健康増進や転倒予防として、足部機能の強化が注目されている。具体的な強化には、タオルギャザーやボール使用した機能練習が行われている。半田らは、足趾把持力は重心の位置を積極的に変化させるような場合において立位の平衡調整能力に関与すること、握力と比べて加齢の影響を受けやすいと述べている。さらに村田らは、足把持力と足部柔軟性の間に有意な相関があり、足把持力は足部柔軟性が高いほど強い傾向にあると述べている。そのため本研究では、足趾把持力と足部屈曲距離が高齢者の動的バランス能力低下に関係するのではないかと考えた。地域在住高齢者を対象として足趾把持力と足部屈曲を計測し、FRTを用いて前方リーチの関係を検討した。その結果、村田らと同様に足趾把持力と足部屈曲距離に相関がみられ、FRTと足把持力・足部屈曲距離の両者に相関がみられた。さらに重回帰分析においては、足趾把持力・足部屈曲率・年齢が合わせて関連を認めた。そのため、加齢による前方リーチの低下の因子として足趾把持力と足部屈曲距離が影響していると考える。したがって、地域在住高齢者において年齢、足趾把持力、足部屈曲距離の低下が前方リーチ時に必要な動的バランスに関連することが示唆された。足趾把持力は足部の筋力として立位における動的・静的バランス能力にとって重要な位置づけをしめていると考える。今回の結果からは、足趾機能としての筋力と可動域である足部屈曲距離の両方が、動的バランスにおいて重要であると考える。【理学療法学研究としての意義】 足趾把持力は足部の筋力として加齢による低下がいわれており、高齢者の転倒因子や活動能力と関連が強いバランス能力低下との検討が行われている。さらに高齢者の足部機能評価に可動域である足部屈曲距離を合わせることで、バランス能力改善のための具体的なトレーニング方法が可能であると考える。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top