理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-09
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ポスター発表
自閉症を持つ子どもたちとの好ましいコミュニケーション方法
神前 多樹子高倉 利恵
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抄録
【はじめに、目的】自閉症は近年急激な増加傾向であり、日本人の1-2/1000人の割合で発症する。そのため自閉症という言葉は社会では知らない人が少なくない。1943年にKannerが「人との情緒的な接触が困難,極端な孤立」、「話し言葉がない,あるいは意思疎通ができない」、「物を巧みに操作し没頭する」などの特徴をもつ子どもたちを「早期乳幼児自閉症」と名付けて以来、自閉症の研究は現在まで60年近くの歴史がある。自閉症の特徴としてウィングは社会性の障害、コミュニケーションの障害、想像力の障害の3つを提唱している。人は他者や物などの外界からの刺激を受け、発達し自分の中の世界を広げていく。しかし、自閉症を持つ子どもは限定した外界刺激しか好まないため、自分の世界を広げていくことが困難である。そのため、より良いコミュニケーションにより外界からの刺激を受ける必要がある。今回自閉症を持つ子ども達とコップと皿を使用した簡単なコミュニケーションを取り、コミュニケーションの困難さは何であるのかを明らかにし、今後の関わり方を考察することを目的とした。【方法】対象はA施設に通っている重度自閉症と診断された児童5名。性別は全員男性、年齢は10-12歳。身体障害や聴覚・視覚障害はない。実施した場所はA施設の会議室で行なった。会議室には検査者・ビデオ撮影者・A施設のスタッフ・対象児の4名が入室した。ビデオ(Panasonic NV-GS300-Sシルバー使用)撮影者には対象児の行動を撮影してもらった。方法は2段階あり、方法1はコップと皿を対象児の前に置き、検査者が「コップどっち?」と質問した。コップを選択することが出来たら、コップと皿を左右入れ替え、再度同じ質問をした。左右のコップの位置に関わらず、検査者が3回以上「コップどっち?」と質問しても選択出来なかった子は方法2を行った。方法2は検査者が対象児に「○○君コップちょうだい」と言った。また全員に対し、ジュースの入ったコップと皿を子どもの前に置いた。この際は何も質問は行なわなかった。【倫理的配慮、説明と同意】倫理的配慮として使用したビデオテープ、個人情報は論文が終了時に削除した。実験目的・方法を対象児の保護者に説明し、同意を得た。またA施設の館長、大阪リハビリテーション大学倫理審査委員会からの同意も得た。【結果】方法1の「コップどっち?」という質問で選択できたのはA・D君の2人であった。選択できなかったB・C・E君に対し方法2の「コップちょうだい」と問いかけ、選択できたのはE君のみであった。またジュースを入れたコップを目の前に置くとジュースを飲んだ。【考察】結果より、自閉症を持つ子ども達がコミュニケーションを他者と図ることが困難な理由として、言語発達が未発達であり、他者が話す言葉の理解が難しいからであると考えた。今回、「コップどっち?」という質問で選択できたA・D君は、1歳6カ月の言語発達段階とされている簡単な言葉を理解し、指さしが出来た。「コップちょうだい」と質問し選択できたE君は、1歳1カ月の言語発達段階とされている他者からの要求が理解出来たと考えた。B君・C君は言語発達の未発達により問いかけでは選択できなかったが、ジュースの入ったコップを目の前に置くと視覚的な手がかりによりジュースを飲むという状況判断が出来たと考えた。今回、言語理解の程度は5人に差があったが、全員が生活で繰り返し使用されるコップを正しく使用することが出来た。これは、コップの使い方や意味に対しての認識が出来ていると考える。したがって、重度自閉症と診断されている子ども達であっても言語理解の困難性はあるが、物を認識する能力があることが確認された。今後の関わり方として言語理解が難しい子ども達とはコミュニケーションがとれないと諦めるのではなく、物を認識する能力を生かし、子どもたちと一緒に色々な形や色をした物を触ったり、見たり、音楽を聞いたり、匂いを嗅いだり、食べ物を食べたりなど、五感や体性感覚を使って同じ時間を共有するなど非言語的なコミュニケーションをとり、非言語的なコミュニケーションの中で子どもの好きな物を見つけ、好きなものを使用しながら言語理解を少しずつ促していくことが望ましいと考えた。【理学療法学研究としての意義】今回の実験から、自閉症を持つ子どもとのコミュニケーションをとる際は、物の認識が可能になった後、認識できた物を使用しながら言語理解を促すことが望ましい方法ではないかと示唆された。この実験で使用したコップと皿を例にとると、コップや皿を触ったり、飲んだり、食べたりして、コップや皿を認識するよう促す。そしてコップや皿に興味を抱けば、その後コップや皿を使用しながら、名詞理解や問いかけを行うことが望ましいと考えた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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