理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-04
会議情報

ポスター発表
慢性非特異的腰痛症例における腰部身体イメージのゆがみと2点識別覚の障害
梶原 沙央里西上 智彦壬生 彰山本 昇吾岸下 修三松﨑 浩田辺 曉人
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】 これまでに,慢性非特異的腰痛症例においても主に筋や筋膜などの末梢組織器官に対してストレッチや筋力増強運動などの運動療法が行われてきたが十分な効果が得られないことも多い.近年,慢性に強い痛みが生じており,治療に難渋する複合性局所疼痛症候群(CRPS)症例において,身体イメージの異常や2点識別覚の閾値の増加といった中枢神経系の機能異常が報告されている.慢性非特異的腰痛症例においても,2点識別覚の閾値の増加や身体イメージの異常が認められることが指摘されているが,これまでの報告では身体イメージの異常を統計学的に健常群と比較した報告や片側腰痛症例において疼痛側と非疼痛側で比較・検討した報告はなく,中枢神経系の機能異常が生じているかについての根拠に乏しい.本研究では慢性非特異的腰痛症例において,身体イメージの異常を体幹の輪郭の変化及び棘突起の変位とし,身体イメージや2点識別覚の異常が健常群と比較して増加しているのか,さらに,片側腰痛症例において疼痛側と非疼痛側で身体イメージや2点識別覚が異なっているのかについて検討した.【方法】 対象は45歳以上80歳以下で腰背部痛が6ヵ月以上持続する男性6名女性12名の18名(平均年齢66.7±9.7)を腰痛群,腰背部痛がなく腰痛群と同程度の年齢とした男性9名女性9名の18名(平均年齢63.4±12.4)を対照群とした.腰痛群の除外基準は脊椎疾患の診断をうけている,または疑わしい者,神経根性疼痛を有する者,脊椎に対する外科的手術の既往がある者,腰部の著明な変形がある者とした.評価項目は疼痛の強度,身体イメージ及び2点識別覚とした.身体イメージは一部欠けた腰背部の図に体幹の輪郭と棘突起を対象者自身に記入させた.指示は「あなたの腰背部をイメージしてください.この図の欠けている部分に線を描いてください.その際,腰背部は触らないでください.イメージのまま,感じるまま描いてください.感じることができない部分は描かないでください.どのように見えるのかではなく,感じるまま描いてください」とした.輪郭が途中で消失したり,輪郭が正常より歪んでいると輪郭の異常ありとした.棘突起については正中より左右いずれかに変位していると異常ありとした.疼痛の強度はVisual Analog Scale(VAS)にて腰部の左右それぞれを評価した.2点識別覚はMobergの方法に準拠して行った.測定肢位は腹臥位にて,測定部位は腰背部痛のある群では疼痛がある部位のレベルの両側を測定し,対照群ではL4/5レベルの両側を測定した.方法はキャリパーを脊柱に対して垂直にあて,キャリパーの中心は疼痛部位の中心,対照群では脊柱起立筋に位置するようにした.100 mmから始め,5 mmずつ間隔を広げていき,最初に明確に2点と答えた点を記録した.その後,100 mmから5 mmずつ間隔を減らしていき,1点と答えた点を記録した.それぞれ2回測定し,その平均値を2点識別覚の値として採用した.統計はSPSS11.0Jを用いて行った.対照群と腰痛群の比較を2点識別覚については対応のないt検定,体幹の輪郭異常,棘突起の位置異常についてはFisherの正確確率検定を用いて行った.さらに,片側のみに疼痛がある片側腰痛群12例について,疼痛側と非疼痛側の比較を2点識別覚については対応のあるt検定,体幹の輪郭異常,棘突起の位置異常についてはFisherの正確確率検定を用いて行った.なお,有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は甲南女子大学倫理委員会の承認を得て実施した.事前に研究目的と方法を十分に説明し,同意が得られた者のみを対象とした.【結果】 腰痛群は対照群と比較して体幹の輪郭異常(p<0.01),棘突起の位置異常(p<0.01),2点識別覚の有意な増加(p<0.01)が認められた.さらに,片側腰痛群において,疼痛側は非疼痛側と比較して体幹の輪郭異常(p<0.05),2点識別覚の有意な増加(p<0.05)が認められた.【考察】 CRPS症例において,身体イメージの異常や2点識別覚の障害は一次体性感覚野の機能が再構築したために生じ,この変化が疼痛を修飾し増強させていることが明らかになっている.本研究において,対照群と比較して腰痛群では体幹の輪郭異常,棘突起の位置異常,2点識別覚の障害が有意に認められ,さらに,体幹の輪郭異常や2点識別覚の障害が片側腰痛群の疼痛側に有意に認められたことから,慢性非特異的腰痛症例においてもCRPS症例と同様な中枢神経系の変化が生じている可能性があり,疼痛の増強に関与していることが示唆される.【理学療法研究としての意義】 慢性非特異性腰痛症例における2点識別覚の障害や体幹の輪郭を指標とした身体イメージの異常を明らかにしたことで,中枢神経系の機能異常が生じている可能性を示唆した点.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top