理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-15
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ポスター発表
Drawingが肩関節外転運動時の筋活動に及ぼす影響
栗原 豊明菅原 和広上野 将和伊賀 敏朗山本 康行
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キーワード: 前鋸筋, Drawing, 表面筋電図
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抄録
【はじめに、目的】肩関節外転時には外転30°まで肩甲骨の運動が少なく,肩甲上腕関節の運動が主となるsetting phaseが生じる.この時期では肩甲骨は僧帽筋および前鋸筋の活動により肩甲胸郭関節を固定し,肩甲上腕関節において三角筋が発生させる外転トルクを効果的にするという報告がある.一方,腹横筋は上肢の素早い屈曲運動時に先行して活動し,腹圧の調節や予測的姿勢制御に重要な役割を担っているとされている(Urquhart DM et al. 2005).近年,腹横筋のトレーニング方法としてDrawingが行われ,Drawingが胸腰部の安定に関与することが報告されている.以上の報告から肩関節複合体の運動には体幹の固定および肩甲骨の固定と可動性が肩甲上腕関節の運動に深く関係していることが考えられる.そこで本研究の目的は体幹のトレーニングとしてDrawingを実施し,肩関節外転運動時の筋活動に与える影響を調査することとした.【方法】右利き健常成人男性8名(21.8 ± 1.2歳)を対象に実験を行った.使用機器は筋電計と計測ソフトウェアを用い,左肩関節外転,左肩甲骨面拳上時の筋電図の測定と解析を行った.肩甲骨面拳上はあらかじめ験者が被験者の左肩甲棘を触診し,その延長上で上肢を拳上するよう指示した.測定肢位は端座位とし,骨盤は中間位とした.両上肢は下垂した状態を取り,角速度90°/secで運動範囲は外転90°までとした.運動条件として,何も把持しない状態(0kg)と1kgの重錘を前腕遠位に巻いた2条件とした.測定筋は左僧帽筋上部線維,左僧帽筋中部線維,左前鋸筋下部線維,左三角筋前部線維,左三角筋中部線維とした.各筋に貼付した電極間距離は2cmとし,アース電極は左肩峰とした.Drawingの方法は先行研究(森.2011)を参考にし,背臥位で「臍をへこませるように」と口頭指示を与え行った.また課題中に息こらえが生じないように自然な呼吸を行うように指示した.上前腸骨棘から2cm内側,また腹直筋外側で触診し腹横筋の収縮を確認した.被験者は0kgおよび1kgにて肩関節外転および肩甲骨面拳上時の筋活動計測を行い,その後10秒間のDrawingを2セット行った.そして再度同様の条件と運動方向で筋活動計測を行った.筋活動計測時のsampling周波数は4000Hzとし,得られた筋電図波形は0.5~500Hzのbandpass filterで処理を行い,全波整流を施した.各筋線維の筋活動発現潜時を求めるため,三角筋中部線維の筋活動発現地点を0msとし,各筋の活動発現は三角筋中部線維の筋電図発現潜時との差とした.筋活動発現地点は安静時の筋活動量の平均±1.5SDを超えた地点として算出した.あらかじめ徒手筋力検査にて各筋の最大随意収縮(MVC)の積分値を算出し,各条件および関節運動で得られた0°から90°までの積分値をMVCで除した相対値(%MVC)を算出した.【倫理的配慮、説明と同意】本実験は実験前に各被験者に実験内容を十分説明し,書面により同意を得た.【結果】0kg条件においての肩関節外転時の前鋸筋下部線維の筋活動量は,Drawing前22.3±12.4%(平均値±標準偏差)であったが,Drawing後では13.0±7.0%と有意に減少した(p<0.05).また1kgの重錘負荷条件での外転時においてもDrawing後に30.0±28.3%から13.0±4.5%となり有意に減少した(p<0.05).また肩甲骨面拳上時においても0kgおよび1kgの両条件でDrawing後に前鋸筋の筋活動が減少した(p<0.05).一方,筋活動潜時はすべての筋で各運動方向および0kg,1kg条件においてDrawing前後に有意差は見られなかった.【考察】腹横筋は体幹の安定性に関与するといわれ(Urquhart DM et al. 2005),今回用いたDrawingは腹横筋の代表的なエクササイズの一つである(Teyhen DS et al. 2009).本実験において,肩関節の2種類の外転運動を行ったところ,Drawing前後で前鋸筋の筋活動発現潜時は変化が見られなかったものの,肩関節外転と肩甲骨面拳上の両関節運動,また0kg,1kgの負荷条件においても前鋸筋の活動量が有意に減少した.前鋸筋は肩甲骨の運動に関与するだけでなく腹斜筋群へも影響することが報告されている.本実験ではDrawing直後で腹横筋の活動が得られたことにより,座位姿勢を保持するための腹斜筋の活動が減少し,それに伴い前鋸筋の活動量が減少したと考えられる.【理学療法学研究としての意義】肩関節は複合関節であり,本研究によりDrawingにより即時的に体幹の安定性が向上し,肩甲骨周囲筋群の筋活動が変化した.このことから,複合関節である肩関節の運動を円滑に行うためには体幹機能も含めた考察が必要であると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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