抄録
【研究目的】 我々は昨年度,臨床実習指導についてクラスター分析を基に「指導高密度型(以下,高密度型)」,「指導低密度型(以下,低密度型)」,「指導中等度型(以下,中等度型)」に類型化し,低密度型が他の類型と比較して実習満足度や自己効力感が高いことを報告した。本研究の目的は,各指導類型と学生自身の実習達成度との関連性を検討することである。【方法】 理学療法士養成教育機関である4年制大学(男性23名,女性14名,21.3±1.0歳),ならびに3年制専門学校30名(男性14名,女性16名,22.3±4.6歳)の最終学年学生に調査した。調査方法は無記名自記式の留置調査法を用いた。調査項目は,基本属性,実習達成度として「理学療法過程自己評価チェックリスト(清水,1994)」(以下,チェックリスト)を取り上げた。チェックリストは,「前段階」,「アセスメント」,「理学療法診断」,「計画」,「実践」,「理学療法評価」の6領域76項目から構成され,「できた~まったくできなかった」の7件法で測定し領域別得点を算出した。次いで,高密度型・低密度型・中等度型の各指導類型と実習達成度に関する各領域との関連について多重比較(Tukey検定)を用い比較検討した。この検討では,対象となる2施設の実習時期が異なること,学生集団の偏りを考慮し,実習開始期(前期と第1期)と最終期(後期と第3期)での比較も行った。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】 本研究は,吉備国際大学倫理委員会より承認を得て実施した。調査に際しては,詳細な研究内容を記載した研究同意書を作成して説明を行い,十分な理解を得た上での署名による同意を得て実施した。【結果】 実習達成度については,「計画」において低密度型が高密度型,中等度型に対して有意に高く,「理学療法評価」において低密度型が中等度型に対して有意に高かった。「前段階」,「アセスメント」,「理学療法診断」,「実践」に関しては統計的な有意差がみられなかったものの,低密度型が高密度型,中等度型に対して達成度が高い傾向がみられた(p<0.10)。実習開始期と最終期での比較では6領域とも統計的な有意差がみられなかったものの,低密度型が高密度型,中等度型に対して達成度が高い傾向がみられた(p<0.10)。【考察】 「計画」では目標設定,治療・指導計画の立案を行い,「理学療法評価」は「計画」に先立つものと考えられている。しかし,「計画」は治療仮説に過ぎず,「理学療法評価」は介入して変化をみることで,その正しさを判断する必要性が指摘されている。「計画」,「理学療法評価」の達成度が高いことは望ましいことではあるが,その一方で,学生を出来たつもりにさせるだけでなく,その質も保つ必要がある。臨床実習は臨床経験を介して考えながら学ぶ場である。そこで,指導の密度が低く,学生が主体的に取り組む環境を作ったとしても,やった気にさせないようなフィードバックを行い,気づきを与えていくことが大切である。そのためには,実習指導者が学生の出来る事・出来ない事を適切に把握し,内容を精査した上で指導を実施していく必要性があると考える。【理学療法学研究としての意義】 臨床実習において,どのような項目に重点を置いて指導する必要があるのか,指導方法を検討する上で基礎的な資料となり得ると考える。