理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-19
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一般口述発表
筋体積評価としての筋線維伝導速度の有用性
加治佐 望間瀬 教史和田 智弘島田 憲二山本 憲康福田 能啓傳 秋光道免 和久
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抄録
【はじめに、目的】筋機能の評価として、筋断面積、筋体積は非常に重要である。その評価方法としては、CTやMRIあるいは超音波診断装置を用い測定する方法があるが、測定費用が高額であることや、機器が煩雑であるといった短所があり臨床場面で頻回に用いるには問題がある。その中で、筋線維伝導速度(MFCV)は、筋線維が太いほうが速いとされ、筋断面積や筋体積の指標としての可能性がある。また、MFCVは、運動単位の性質により異なるため、随意収縮強度による異なる速さを示す。筋線維伝導速度(MFCV)は神経筋接合部から筋線維の走行に沿って流れる運動単位の伝播速度のことである。本研究の目的は、随意収縮強度別に測定したMFCVと筋体積との関係を観察し、筋体積の指標として適切な、MFCV測定時の収縮強度を検討することである。【方法】対象は健常男性9 名の両側上腕二頭筋(年齢26.2 ± 6.3 歳)とした。筋体積の測定は、超音波診断装置(東芝メディカルシステムズ社製SSA-550A)を使用し、上腕二頭筋の断面画像の撮影を行った。なお撮影は、プロ−ブの圧迫による筋の形態変形を避けるため,自作したプラスチック製の水槽に水を入れ、被験者の上肢を水中に入れ、測定部位からプローブを離した状態で測定した。測定肢位は肩関節90°外転,外旋位,肘関節伸展位,前腕90°回外位の背臥位とした。撮影は肘頭から1cm間隔で,腋下まで行い、画像を記録した。記録した画像は、画像解析ソフトImage Jを用いて筋断面を囲い、面積を求める操作を3 回行い、平均値を断面積とした。その後、撮影した全ての断面積を合計し、体積を算出した。MFCVの測定は、筋電計(Nicolet社製VikingIV)を使用し、直径1mm、長さ10mmの銀線が5mm間隔で17 本配列されているアレイ電極を用いた。電極は、長軸が上腕二頭筋の筋線維方向に沿うように筋腹に貼付した。筋電位は隣り合う電極間から双極法で導出し、サンプリング周波数10000Hzでパソコンに取り込んだ。各収縮強度0.5 秒間とした。20mm離れた2 つの波形の時間差を相互相関を用いて算出し、電極間距離を時間差で除すことによりMFCVを求めた。測定肢位は肩関節0°位、肘関節90°屈曲位、前腕90°回外位での椅坐位姿勢とし、体幹をベルトで固定した。前腕近位部をアームレストにのせ肘関節を固定し、前腕遠位部に筋力計(竹井工業社製)をセットした。発揮張力をモニターし視覚的フィードバックを行いながら、肘関節屈曲等尺性収縮を最大随意収縮(MVC)の0%から100%まで一定の割合で6 秒程度かけて増加させた。統計学的検定はSPSS12.0 for windowsを用い、各収縮強度におけるMFCVの変化はTukey法を行い有意水準は0.05%とした。また、各収縮力時のMFCVと筋体積の関係はピアソンの相関係数検定を行い有意水準は0.01%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本研究の趣旨を十分に説明し、書面による同意を得た。【結果】MFCVの収縮強度による推移は、20%MVC時(3.70 ± 0.26m/s)、40%MVC時(3.88 ± 0.26m/s)、60%MVC時(4.01 ± 0.31m/s)と順に有意(p<0.05)に増加した。60%MVC時と80%MVC時(4.05 ± 0.28m/s)との間には有意な差はなく、80%MVC時とMVC時(3.94 ± 0.24m/s)は有意に減少した。筋体積と各%MVC時のMFCVは20%MVC時(r=0.76 , p<0.01) 、40%MVC時(r=0.88 ,p<0.01) 、60%MVC時(r=0.79 ,p<0.01) 、80%MVC時(r=0.75 ,p<0.01) 、MVC時(r=0.66 ,p<0.01)と各収縮強度で相関関係がみられた。【考察】今回の結果では、筋収縮強度上昇に伴いMFCVが速くなったのは60%MVCまでであった。また、20%MVCから100%MVCまで測定したすべての収縮強度で、MFCVと筋体積の間に相関関係が見られた。その中でも40%MVC時の相関係数が最も高く、次に60%MVC時であった。MFCVは、弱い筋収縮で動員される運動単位に比べ、強い筋収縮で動員される運動単位はより速いとされる。また、徐々に筋収縮強度を上げた場合、60%MVCまでに多くの運動単位が動員され、それ以上の収縮強度では動員される運動単位はわずかであることが報告されている。これらの結果から、相関係数が比較的高かった40・60%MVC時のMFCVは、筋内のより多くの運動単位を反映したMFCVである可能性があり、筋体積の指標として、より有用な測定強度であると考えられた。それ以上の収縮強度では、MFCVを低下させる一要因である筋疲労が影響し、速度低下が生じている可能性があると考えられた。【理学療法学研究としての意義】筋体積を評価する方法として表面筋電図を用いることができれば、臨床場面で有用である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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