理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-19
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一般口述発表
関節可動域測定における伸縮角度計の有用性−検者内信頼性の検討−
矢野 正剛十河 翔太長尾 卓小杉 正欅 篤
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抄録
【はじめに、目的】理学療法場面において関節可動域(以下,ROM)の測定は広く実施される評価法の1 つであり,角度計はROM測定の測定器具として一般的に広く用いられている.しかし,角度計の測定には測定姿勢,肢位の固定や骨指標の触知,角度計の当て方など知識や経験が必要で,測定の信頼性や測定技術の習得には時間を要する.伸縮角度計は,可動アームを伸ばす事ができる角度計であり,より正確で容易に基本軸と移動軸を取ることができるものである.そのため,当院では2011 年12月より整形外科疾患の患者様に対して下肢のROM測定の正確な評価結果を得る目的で使用してきた.しかし,伸縮角度計を用いた信頼性についての研究は少なく,実際の信頼性については不確かなものであった.そこで今回,伸縮角度計と従来の角度計を比較し検者内信頼性について検討したので報告する.【方法】対象は四肢,体幹の筋骨格系および神経系に機能障害がない成人13 名(男性7 名,女性6 名),合計26 肢で実施.平均年齢は24.6 ± 3.6 歳.対象者の服装は,骨指標が分かりやすいよう半袖,半ズボン,裸足で行った.測定器具には,東大式角度計(以下,角度計)とLafayette製伸縮角度計(以下,伸縮角度計)を用いた.検者は臨床経験7 年目の理学療法士1 名で行った.検者は研究に先立って角度計および伸縮角度計の操作練習は十分に行った.また,他に測定の補助者1 名の協力を得た.測定部位は,股関節屈曲(以下,股屈曲),下肢伸展位挙上(以下,SLR),膝関節屈曲(以下,膝屈曲),足関節背屈(以下,背屈)の左右である.股屈曲およびSLRのROM測定はベッド上背臥位となり,基本軸は体幹に平行な線,移動軸は大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)とした.膝屈曲は股関節90°屈曲位で基本軸を大腿骨,移動軸を腓骨(腓骨頭と外果を結ぶ線)とした.背屈はベッド上端坐位で下腿を床面に垂直に下垂させ,基本軸を腓骨,移動軸を第5 中足骨とした.各測定器具での測定方法は,日本整形外科学会で示されている方法に準じ,角度計・伸縮角度計共に基本軸と移動軸に角度計の可動アームを合わせ,それぞれの部位での運動角度を記録した.伸縮角度計については,先端を骨指標に合わせる事とした.例えば,股屈曲・SLRでは肩峰と大腿骨外側上顆,膝屈曲では大転子と外果,背屈では腓骨小頭と第5 中足骨頭に合わせた.測定手順は,角度計を使用し,右股屈曲,右SLR,右膝屈曲,左股屈曲,左SLR,左膝屈曲,右背屈,左背屈の順で測定し,ROMの測定値は5°単位で記録した.同様の手順で伸縮角度計を用いた後,測定の再現性を検討するために,1 週間以上の間隔を置き,再度同様の対象者,手順を施行した.各測定器具における検者内信頼性については,初回と2 回目の測定値で級内相関係数(以下,ICC)を求め検討した.【倫理的配慮、説明と同意】各対象者には本研究の施行ならびに目的を説明し,研究への参加に対する同意を得た.【結果】ICCの結果を示す.角度計は,股屈曲0.54,SLR0.87,膝屈曲0.70,背屈0.74 であった.伸縮角度計は,股屈曲0.80,SLR0.95,膝屈曲0.83,背屈0.81 であり,全ての項目においてICC=0.8 以上であった.【考察】ICCの判定基準は0.75 以上で信頼性が良好であると判断されている.今回の結果より,角度計ではSLR以外の項目では良好な信頼性は得られなかったものの,伸縮角度計では全ての項目においてICC=0.8 以上の結果であり,良好な検者内信頼性が得られたと考えられる.これは,伸縮角度計は可動アームを伸ばす事ができるため,基本軸,移動軸を取り易くなり良好な信頼性が得られたと考えられる.伸縮角度計を用いる事で,検者内でのROM測定の再現性は高くなる傾向が見られ,ROMの再現性を得るためには伸縮角度計が有用である事が示唆された.しかし,今回は検者内信頼性での検討しか行っていないため,今後検者間での比較を行い,ROM測定器具としての有用性を検討していく必要がある.【理学療法学研究としての意義】正確なROM測定は,理学療法士にとって必要な技術である.その手段として,伸縮角度計の使用が一つの方法になりえる事が示唆された.
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© 2013 日本理学療法士協会
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