理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-26
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ポスター発表
島根県隠岐の島町での中学校運動器検診の報告
学校単位での運動器検診はスポーツ障害を防げる可能性がある
妹尾 翼布野 優香加藤 勇輝太田 珠代江草 典政
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抄録
【はじめに、目的】 2012年より、島根県スポーツの発展と障害予防を目的とし、島根大学医学部附属病院整形外科と出雲圏域の病院に所属する理学療法士を中心としてチームを立ち上げた。今回、その活動の一環として、スポーツ障害の早期発見と予防を目的に運動器検診と柔軟性の評価を行ない、さらにコンディショニングやセルフケアの指導を実施した。検診を通して得られた調査結果から、中学生の柔軟性とスポーツ障害有病率の実態について報告する。【方法】 対象は隠岐の島町の中学校4校(A,B,C,Dとする)の1、2年生240名(男子112名、女子128名)であった。検診の測定項目は、柔軟性の指標として下肢伸展挙上(SLR)、股関節内旋(HIR)、股関節外旋(HER)、踵殿間距離(HBD)、膝屈曲位での足関節背屈(DKF)、膝伸展位での足関節背屈(DKE)をそれぞれ計測し、その結果を学校別、男女別で比較し検討した。統計解析は4校間の柔軟性の比較にはKruskal-Wallis検定を、男女の柔軟性の比較にはMann-WhitneyのU検定を、スポーツ障害有病率の男女差の有無についてはχ²検定を行った。いずれも、有意水準は危険率5%未満とした。また、マークシートを用いたスクリーニングにより運動器疾患の疑いのある生徒を抽出し、整形外科医が診察してスポーツ障害の有無を診断した。【倫理的配慮、説明と同意】 事前に各学校に検診の意義と方法について説明し同意を得て実施した。なお収集したデータは個人が特定できないように匿名化した。【結果】 4校全体での先天性疾患を含む運動器疾患の有病率は22%(53名)であった。またスポーツ障害に限定した場合の全体に対する有病率は9.5%(23名)であった。学校別では、A中学校は他3校に比べて有意に柔軟性が高く、D中学校は低い傾向にあるなど学校によって柔軟性が異なることが明らかとなった。また、スポーツ障害有病率もA中学校は8.1%と低く、D中学校は18.1%と高い傾向にあった。男女の各項目の平均値は、(男子/女子)SLR71.6°/75.4°、HIR53.7°/61.1°、HER63.7°/64.3°、HBD-1.1/-0.4cm、KFD23.4°/24.8°、KED13.0°/13.6°であり、女子群のSLR、HIR、HBDの柔軟性が有意に高かった(p<00.5)。各性別におけるスポーツ障害有病者数は男子112名のうち17名(15%)、女子128名のうち6名(5%)であり、有病率は男子が有意に高値を示した(p<0.01)。【考察】 文部科学省は昭和23年より、「学校における幼児、児童及び生徒の発育及び健康の状態を明らかにすること」を目的に学校保健統計調査を開始した。2012年度の報告では、耳疾患、心電図異常、ぜん息ともに約3%であった。この結果と比較すると、今回の運動器検診により運動器疾患と診断された22%は非常に多く、運動器検診の重要性が示唆された。学校別でA中学校が他校と比較し柔軟性が高く、またスポーツ障害有病率が低かった理由としては、A中学校のスポーツ障害予防に向けた取り組みが挙げられる。2011年も各中学校に整形外科医が検診とセルフケアの講義を行ったが、その後の口頭による調査によりA中学校のみがカリキュラムとしてスポーツ障害予防と体力向上を目的に、柔軟体操と長距離走に取り組んだことが確認された。この取り組みが今回の結果に反映されたと考えられる。この結果から、医療関係者が積極的に介入し、かつ学校が主体となり予防対策を継続することによりスポーツ障害を未然に防ぐ事ができる可能性が示唆された。男女別で女子群のSLR、HIR、HBDが男子群と比較し有意に柔軟性が高かった理由として、成長期における男子の身長・筋断面積の増加率は高く筋タイトネスが生じること、女性の腱伸張性が高いこと、女性の大腿骨前捻角は大きく解剖学的に股関節内旋位になること、女性ホルモンが関節弛緩性を増大させることなど、様々な影響が先行研究により示されている。今回の検診により男女でスポーツ障害の有病率が異なっていることから考えると、SLR、HIR、HBDの柔軟性低下がスポーツ障害を引き起こす要因である可能性が示された。成長期スポーツ障害予防を考える際はもちろん、日常診療においてもこの点を考慮する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 学校単位で運動器検診の実践例は少なく、部活動やスポーツの種類の範囲にとどまらない検診活動を継続し、かつ理学療法士が中心となったコンディショニング・セルフケア指導を行うことが、スポーツ障害の予防に重要である可能性を示した。
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© 2013 日本理学療法士協会
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