理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-O-06
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一般口述発表
膝関節屈曲拘縮を呈した脳性麻痺児における膝関節授動術後にKAFOを用いた理学療法介入の治療成績
楠本 泰士新田 收松田 雅弘高木 健志
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抄録
【はじめに】脳性麻痺におけるハムストリングスの痙性は最も頻発する問題であり膝関節屈曲拘縮(以下、膝屈曲拘縮)は各種動作の阻害因子となる。膝関節屈曲位での継続した立位・歩行は大腿四頭筋の過活動につながり膝蓋大腿関節の変形や膝関節前面の痛み、膝蓋骨や脛骨粗面の疲労骨折の原因となる。立位・歩行が困難になった膝屈曲拘縮例に対し膝関節授動術が行われる。また末梢神経麻痺の出現を防ぐため長下肢装具(以下KAFO)を装着し段階的に膝伸展可動域の改善を図っている。本研究では膝関節授動術後にKAFOを用いた術後理学療法介入が術後治療成績に及ぼす影響について分析した。【方法】対象は半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋・大腿薄筋・後方関節包を必ず侵襲した者で、粗大運動機能分類システム(以下GMFCS)にてレベル3・4の脳性麻痺児8名16肢(年齢11.4歳(7~15歳)、身長141±21cm、体重34.9±13.3kg、GMFCSレベルIII:4名・レベルIV:4名)とした。術後ギプス固定は全例2週間で術後理学療法はギプス固定期間中から週3~4回・各40~60分の頻度で退院まで行った。術後1ヶ月からKAFO装着を開始し、理学療法介入に加え週に5~6回・各30~90分行った。疲労感・神経症状が出現しないことを確認し装着時間・膝関節角度を設定した。退院後の理学療法は月1~2回の頻度で行い、KAFO装着は週3~6回・各30~90分行った。評価項目は末梢神経麻痺の出現の有無,GMFCSレベル、立位膝関節屈曲角(以下、立位膝屈曲角)、他動関節可動域の下肢伸展挙上角(SLR)・膝窩角(PoA)・膝関節屈曲角・膝関節伸展角(膝伸展角)・膝伸展位足関節背屈角・膝屈曲位足関節背屈角とした。GMFCSレベルと立位膝屈曲角の測定は術前・術後6ヶ月にて行い、その他の関節可動域の測定は術前・術後3ヶ月・術後6ヶ月の計3回行った。立位膝屈曲角は静止立位を矢状面にて撮影した。静止立位が不可能な者は軽く上肢にて支持をさせた状態の立位とした。立位矢状面像をImage J Ver.1.46 を用いて3回測定し平均値を採用した。立位膝屈曲角を対応のあるt 検定・各他動関節可動域を反復測定一元配置分散分析およびScheffe法による多重比較検定にて検討した。統計処理にはIBM SPSS Statistics Ver.19を使用し有意水準を5%とした。【説明と同意】書面にて本人および保護者の同意を得たのち調査を実施した。ヘルシンキ宣言に則り倫理的配慮に基づいてデータを取り扱った。【結果】末梢神経麻痺が出現した症例はいなかった。GMFCSレベルは術前にレベルIIIだった4名がレベルII:1名・レベルIII:3名と変化した。レベルIVだった4名がレベルIII:2名・レベルIV:2名と変化した。立位膝屈曲角は57°±13°(平均値±標準偏差)から34°±14°と有意に改善した。SLRは術前41°±13°が術後6ヶ月で57°±9°と有意に改善した。PoAは術前と術後3ヶ月・術前と術後6ヶ月で有意に改善し、術前82°±19°だったのが術後3ヶ月で56°±17°・術後6ヶ月で43°±14°と変化した。膝伸展角は術前と術後3ヶ月・術前と術後6ヶ月・術後3ヶ月と術後6ヶ月で有意に改善し、術前-38°±11°だったのが術後3ヶ月で-23°±10°・術後6ヶ月で-12°±9°と変化した。【考察】今回末梢神経麻痺が出現した症例はなかったことから,KAFO装着は末梢神経や血管などの伸張性を徐々に改善させ、膝伸展可動域を改善させることができると考えられた。SLR・PoA・膝伸展角はハムストリングスの伸張性を反映しており、測定方法から伸張される部位が異なる。SLRは膝関節を動かさず測定するため股関節周囲の伸張性を反映し、PoAは股関節を動かさず測定するため膝関節周囲の伸張性を反映し、膝伸展角はハムストリングス全体の伸張性を反映している。術後3ヶ月でPoAと膝伸展角が改善したことから膝周囲のハムストリングスの伸張性は手術によって改善したと言える。術後3ヶ月から術後6ヶ月の期間で膝伸展角のみ改善がみられ、SLRは術後3ヶ月で改善せず術後6ヶ月でのみ有意に改善した。継続したKAFO装着により股関節周囲のハムストリングス筋成分の伸張性が改善し術後6ヶ月で膝伸展角の改善が得られたと考えられた。立位膝屈曲角は膝伸展筋の活動を反映しており、本研究の対象児の術前立位膝屈曲角が57°だったことから立位・歩行時に大腿四頭筋が過活動状態にあったと考えられる。術後6ヵ月で立位膝屈曲角が34°へと改善したことにより大腿四頭筋活動が減少し、GMFCSレベルの向上に関与したと思われる。術後にGMFCSレベルが低下した者はおらず、3名のGMFCSレベルが上がったことから膝屈曲拘縮は立位・歩行の制限因子の1つと言える。【理学療法学研究としての意義】脳性麻痺・高度膝屈曲拘縮例に対する膝授動術後のKAFO装着により神経障害を起こさずに可動域の改善が得られ、運動レベルが維持・向上できた。本研究は脳性麻痺・高度膝屈曲拘縮例に対する手術と術後理学療法の一助となりうる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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