理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-S-03
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セレクション口述発表
X線透視画像および三次元コンピュータモデルを用いた生体内動態解析による上肢挙上時における肩甲上腕関節の回旋動態解析
高橋 裕司千葉 慎一尾崎 尚代松久 孝行西中 直也筒井 廣明
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抄録
【はじめに、目的】以前より上肢挙上時に肩甲上腕関節が外旋し、肩峰下に大結節が通過する空間を作ることが言及されている。肩関節外転時に負荷をかけると肩甲上腕リズムや肩甲骨の動態が変化するという報告は散見されるが、肩甲上腕関節の動態を検討した報告は渉猟できなかった。そこで本研究の目的は、生体肩で6自由度パラメータが推定可能な3D-2Dレジストレーションを用いて無負荷時、負荷時の動的な外転運動における肩甲上腕関節の回旋角度を検討することとした。【方法】対象は文書による同意を得た健常成人18例18肩。年齢は平均28歳(23―38歳)である。方法は、まずX線透視像を前後方向1方向にて手掌を前方に向けたthumb upの条件で肩甲骨面上での自動外転運動の動態撮影を行った。試技は無負荷時と前腕に3kgの重錘を巻いた3kg負荷時の二種類を行った。その後、各被験者の肩甲骨・上腕骨のCT撮影を行い、そのCT画像よりコンピュータソフトを用いて骨の3Dモデルを作成し、それぞれに座標系を設定した。肩甲骨の座標系は肩甲骨関節窩面の長軸の二等分点を原点とし、その長軸をY軸、肩甲骨関節窩面上を長軸に直交する線をZ軸、ZY平面に直交する線をX軸とした。上腕骨の座標系は上腕骨頭中心を原点として上腕骨軸に平行な線をY軸、骨頭中心と結節間溝を結ぶ線をZ軸、YZ平面に直交する線をX軸としてそれぞれ規定した。完成した骨モデルを透視画像の輪郭にコンピュータソフトを用いてマッチングさせ、上腕骨・肩甲骨の空間位置での三次元動態を推定した。えられた結果から肩甲上腕関節の外転角度に対する回旋角度を算出し、無負荷時と3kg負荷時の群間比較を、two-way repeated-measure ANOVA (p<0.05) を用いて比較検討した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は昭和大学保健医療学部(承認番号179号)の倫理委員会の承認を得て行った。説明は共同演者である医師がX線透視による動態撮影の前に行い、同意を得ている。【結果】下垂位から最大外転位までで肩甲上腕関節は無負荷時では26.5°、3kg負荷時では16.8°外旋した。また下垂位では3kg負荷時が無負荷時より10.1°外旋位をとっていた。肩甲上腕関節の外旋角度は下垂位から最大外転位までで無負荷時と3kg負荷時で有意差を認めなかった。【考察】下垂位から最大外転位にて無負荷時は3kg負荷時と比較して外旋角度の変化量は大きいが、統計学的に有意差は認めなかった。3kg負荷時では下垂位で、すでに10.1°外旋位をとっていたにも関わらず最大外転位での外旋角度は負荷時と無負荷時でほぼ同様の角度であった。このことから、肩甲上腕関節は最大外転時に同様な回旋角度になるように調整され外旋することが示唆された。Yamamotoら(2009)はインピンジメントサインのメカニズムを屍体肩にて検討し、内旋位での外転では大結節の烏口肩峰靭帯への接触圧が外旋位または回旋中間位での外転より有意に高いことを報告している。今回の結果では肩甲上腕関節は負荷時でも無負荷時と同様に外旋していた。これは過去の報告から肩関節は内旋位での外転では烏口肩峰靭帯へのインピンジメントが起きてしまうため、健常肩においては肩関節外転時には外旋を伴い、大結節が肩峰下を通過する空間を作りインピンジメントを回避していることが考えられる。【理学療法学研究としての意義】より詳細な肩関節の基礎バイオメカニクスを明らかにすることにより健常肩関節機能再獲得のための情報を得ることが可能となる。これは病態の評価や運動療法における治療効果の判定・治療への応用につながることが考えられる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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