理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-28
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ポスター発表
鏡視下Bankart修復術後男子競技選手の競技動作導入時期である術後3ヵ月における等速性肩関節筋力について
相馬 寛人吉田 昌平吉川 信人吉田 純橋尾 彩花青島 早希谷口 里奈
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抄録

【はじめに、目的】 当院では、鏡視下Bankart修復後男子競技選手の競技復帰の目標時期を術後4から6ヵ月としている。このため、我々は術後3ヵ月において等速性肩関節筋力を測定し、競技動作導入の可否を決定する評価指標の一つとして用いている。そこで今回我々は鏡視下Bankart修復術後男子競技選手の等速性肩関節筋力の術後3ヵ月における回復状況を調査したため報告する。【方法】 対象は、2010年11月~2012年3月において、当院にて反復性肩関節脱臼 に対する鏡視下Bankart修復術後のリハビリテーションを施行し、競技復帰までの経過を観察できた男子競技選手8名、8肩とした。(年齢:18.4±1.1歳、身長:174.3±4.9cm、体重:80.0±11.2kg)対象の競技種目の内訳は野球2例(投球側1例、非投球側1例)、アメリカンフットボール2例、 柔道、バレーボール、サッカー、陸上投擲(投球側)各1例であった。術後リハビリテーションは当院の術後プロトコールにしたがって進めた。術後3週は三角巾とバストバンド使用下に体側固定とした。固定期間中は等尺性筋力トレーニングにより、患部の拘縮予防と筋力維持をはかった。術後3週より主に自動運動によって可動域の獲得をはかり、外旋、水平外転に関しては、術後6週間の角度制限を設定した。また、筋力トレーニングは可動域の獲得にあわせて進めた。術後3ヵ月よりCKCトレーニング、競技動作を段階的に導入し、術後4ヵ月から6ヵ月程度で競技復帰を許可した。対象は全例再脱臼を生じていなかった。(経過期間:術後1~2年)等速性肩関節筋力の測定は、メディカ社製Cybex Normを使用し、術後3ヵ月で実施した。測定項目は肩関節屈曲―伸展、内転―外転、第一肢位での内旋―外旋(以下1st内旋-外旋)、第二肢位での内旋―外旋(以下2nd内旋-外旋)で、角速度は60deg/secとした。評価値としては健側と患側のそれぞれにおける各測定値のピークトルクの健側に対する患側の比(以下患健比)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には、測定前に本研究の主旨について十分な説明を行い、研究内容に同意を得た。【結果】 術後3ヵ月におけるピークトルクは患側と健側でそれぞれ肩関節屈曲が59.9±12.4Nmと67.0±19.3Nm、伸展は74.5±21.5Nmと76.25±23.4Nm、内転は71.0±22.4Nmと61.3±15.4Nm、外転は64.5±18.4と56.6±15.6Nm、1st内旋は41.0±9.6Nmと44.0±14.8Nm、1st外旋は26.8±7.1Nmと31.0±12.6Nm、2nd内旋28.0±3.3Nmと32.6±5.7Nm、2nd外旋26.9±8.8Nmと30.8±8.4Nmであった。また、各対象それぞれで求めた患健比の平均値は、肩関節屈曲92.1±18.7%、伸展100.9±27.4%、内転89.0±16.3%、外転88.7±10.5%、1st内旋95.1±9.3%、1st外旋91.0±26.%、2nd内旋87.6±21.2%、2nd外旋87.5±14.9%であった。【考察】 菅谷らは、鏡視下Bankart修復術後の組織学的治癒は術後3ヵ月以降で得られると報告している。したがって、アスレティックリハビリテーションの時期における実際と同様の競技動作の導入は、筋力や関節安定性といった肩関節機能の回復に加えて、組織学的治癒が得られる術後3ヵ月以降で可能になると考える。肩関節機能の一つである筋力評価の多くは等速性筋力についての報告である。競技復帰可能な筋力回復の指標として尼子らは術後6ヵ月で患健比90%程度、三宅らは競技復帰する術後4から6ヵ月において患健比85%以上といずれの報告でも患健比85~90%で競技復帰可能と述べており、競技動作の導入時期と考えられる術後3ヵ月において、筋力は同等レベルに回復している必要があると考える。我々の結果では、術後3ヵ月において全運動方向にて患健比90%程度であり、過去の報告と比較しても競技復帰可能なレベルに回復していた。 当院では、術後4から6ヵ月を競技復帰の目標時期としており、術後3ヵ月から競技動作練習を円滑に導入する必要であると考えている。今回の対象は全運動方向で患健比90%程度と十分な筋力を有しており、安全に競技動作を導入できていた。その結果、術後4から6ヵ月で競技復帰し、短期成績ではあるが再脱臼を生じていないという良好な結果が得られているのではないかと考えた。【理学療法学研究としての意義】 今回の調査から、術後3ヵ月での等速性肩関節筋力の良好な回復が競技動作の安全な導入を可能とし、術後4から6ヵ月での円滑な競技復帰につながっていることが示された。

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© 2013 日本理学療法士協会
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