理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-01
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ポスター発表
心臓外科術後、早期リハビリ遅延の有無が運動耐容能の改善率に与える影響
齋藤 愛子藤田 吾郎金子 友里樋口 謙次松村 洋高橋本 和弘安保 雅博
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抄録
【はじめに、目的】近年、医療技術・周術期管理の進歩により心臓外科術後、早期からの心臓リハビリテーション(以下心リハ)導入が可能となってきた。本邦における心臓外科術後の心リハは術翌日の立位・歩行から術後4~5日目で病棟内歩行の自立を目指すプログラムが広く採用されており、このプログラムからできる限り遅延しないように進め、身体機能の低下予防、早期退院を促すことが重要である。しかし、患者背景や身体機能は様々であり、待機的手術においても30%近くはプログラムから遅延すると報告されている。術後、心リハプログラム遅延因子の検討は多くされているが、遅延の有無が運動耐容能の改善に与える影響について検討しているものは少ない。そこで、今回は心臓外科術後、心リハプログラムの進行状況が入院期における運動耐容能の改善に影響を及ぼすかを検討した。【方法】対象は当院で待機的心臓外科手術を受け、入院期の心リハプログラムを施行した59例(男45名、女14名、年齢65.3±12.9歳)。術後脳梗塞や運動器疾患など、心リハを施行する上で障害となる合併症例は除外した。術後の心リハプログラムは術翌日の離床と術後5日以内で病棟内歩行の自立を目指した理学療法を行い、歩行獲得後は有酸素運動を中心とした監視型運動療法を退院まで実施した。対象を歩行能力獲得が術後5日以内となった順調群、6日以上となった遅延群の2群に分類した。患者背景は年齢、性別、冠危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症)の有無、術前左室駆出率、手術方法、手術時間、挿管時間、術後入院日数、歩行獲得日数を診療録より後方視的に調査した。運動耐容能の評価は、監視型運動療法開始時と退院時で6分間歩行距離(以下6MD)を測定し、入院期における6MD増加率を術後入院日数で除した6MD改善率を算出した。検討方法は順調群と遅延群の患者背景および6MD、6MD改善率を比較した。統計処理はχ2検定と対応のないt検定を用い、有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、当大学倫理委員会の承認を受け、対象者に目的と方法を説明し、同意を得て実施した。【結果】遅延群は22名(年齢68.6±12.5歳、男15名、女7名)、順調群は37名(年齢63.8±12.9歳、男30名、女7名)であった。冠危険因子の有無、手術方式は遅延群で高血圧(有20名、無2名)、糖尿病(有11名、無11名)、高脂血症(有15名、無7名)、手術方式(冠動脈バイパス術11名、弁置換・弁形成術8名、人工血管置換術1名、複合手術2名)、順調群で高血圧(有31名、無6名)、糖尿病(有16名、無21名)、高脂血症(有20名、無17名)、手術方式(冠動脈バイパス術17名、弁置換・弁形成術17名、人工血管置換術1名、複合手術2名)で2群間において有意な関連性を示さなかった。術前左室駆出率は遅延群50.0±13.4%、順調群57.8±12.6%、6MDは運動療法開始時で遅延群165.7±80.6m、順調群243.9±66.6m、退院時で遅延群284.3±98.5m、順調群381.2±52.8mとそれぞれ遅延群で有意に低値を示した。また、術後入院日数は遅延群30.6±16.3日、順調群20.6±5.3日、挿管時間は遅延群1773.5±2686.6分、順調群517.9±357.9分とそれぞれ遅延群で有意に高値を示した。手術時間は遅延群412.5±114.2分、順調群369.6±78.1分、6MD改善率は遅延群7.2±3.0%/日、順調群8.4±3.0%/日と2群間で有意差を示さなかった。【考察】今回、術前左室駆出率は2群間で有意差を認めており、遅延群の身体活動量や運動耐容能は術前より低下していたと予想される。そのため、遅延群における運動耐容能の改善目標は術前の身体機能やADLに即して設定する必要があると考える。一方で、運動耐容能の改善率は2群間で有意差を認めなかった。このことから遅延群は介入期間を要するも、運動療法の継続により順調群と同様の回復経過が得られると示唆された。それにより、当院の病院特性上、入院期間の制限があるが、特に遅延群の更なる運動耐容能改善の為、症例に即した入院期間の検討あるいはそれに匹敵する外来での定期的な運動療法継続の検討等が必要であると考える。また、入院期間中も遅延群において、効果的に運動耐容能の改善を目指すことも重要であり、重点的な運動療法の提供も検討しなければならない。【理学療法学研究としての意義】近年、心臓外科術後の心リハは早期離床・早期退院が重要視されているが、遅延群に対しては症例に即した介入が必要であり、今回はそれを裏付ける調査研究であったと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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