理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-07
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ポスター発表
「膝の痛みリハビリ教室」の有効性の検討
河江 将司小林 巧山中 正紀武田 直樹伊藤 俊貴入江 学小岩 幹清水 智石田 直樹
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抄録

【はじめに・目的】当院では変形性膝関節症(以下、膝OA)により膝に痛みを持つ患者に対し、「膝の痛みリハビリ教室」(以下、膝教室)を開催している。当院での膝教室は、膝痛改善を目的として、理学療法士による膝OAの病態、保存療法および日常生活に関する講義、疼痛、関節可動域、筋力、バランス能力および歩行能力の評価、家庭で実施する運動(関節可動域運動、筋力強化および歩行変容)について個別指導を実施し、定期的に評価および自主運動実施状況の確認を行っている。これまでの膝教室に関する報告では、1回のみ、あるいは集団に向けた講義や実技指導が多く、定期的に個別指導を実施した膝教室参加者の身体・運動機能について経時的に調査した報告は少ない。本研究の目的は、定期的に個別指導を実施した膝教室の有効性について検討することである。【方法】本研究の対象は2012年1月から2012年11月に膝教室に参加した9名(男性1名、女性8名・北大病期分類Stage2:2名、Stage3:5名、Stage4:2名)、平均年齢65.7±7.8歳、平均身長153.4±6.2cm、平均体重57.6±11.1kgとした。対象者は初回、受診後1か月、3か月および6か月に膝教室に参加した。初回に膝OAについての講義と身体・運動機能評価及び運動療法の実技指導を行ない、受診後1か月以降の膝教室では身体・運動機能の再評価および運動療法の確認、再指導を実施した。運動療法は膝屈曲および伸展ROM運動、大腿四頭筋運動(patella-setting、SLR)および歩行変容(内側荷重歩行)について指導した。評価項目は膝屈曲および伸展ROM、膝屈曲および伸展筋力、片脚立位時間、Timed Up and Go-test(以下TUG)、10m歩行試験(最大歩行速度)、変形性膝関節症患者機能評価尺度(以下、JKOM)の総点、各下位尺度の点数およびVASとした。統計学的分析として、膝教室初回から6か月後までの経時的変化を検討するために、一元配置分散分析およびKruskal-Wallisの検定を用い、事後検定としてTukey HSDを用いた。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】すべての対象者には、初回膝教室時に教室の内容を口頭及び書面を用いて説明し、署名にて同意を得て実施した。【結果】JKOM総点は初回(35.9±16.7点)と比較して3か月後(19.2±7.0点)および6か月後(17.4±10.5点)で、有意に低値を示した(p<0.05)。JKOM下位尺度の「健康状態について」(以下、健康)は初回(4.6±1.9点)と比較して1か月後(2.2±1.7点)、3か月後(2.3±1.1点)および6か月後(2.3±1.3点)で有意に低値を示した (p≦0.05)。また、JKOM下位尺度の「膝の痛みやこわばり」(以下、こわばり)は初回(15.9±6.8点)と比較して3か月後 (8.6±4.0点)および6か月後(8.4±6.0点)で、「ふだんの活動など」(以下、活動)は初回(5.6±3.7点)と比較して6か月後(2.3±1.7点)に有意に低い傾向を示した(p≤0.1)。膝ROM、膝筋力、片脚立位時間、TUG、最大歩行速度、JKOM下位尺度の日常生活及びVASで各時期における有意な差を認めなかった。【考察】本研究の結果から、膝教室初回と比較し3か月以降でJKOM総点は有意に改善した。JKOMは膝OA患者の患者立脚型のQOL評価尺度として開発され、信頼性・妥当性はSF-36やWOMACとの比較検討において認められている評価尺度であり、膝教室参加によりQOLの向上を認められたことが示唆される。特にJKOMの下位尺度の健康、こわばり、活動で改善が認められており、痛みやこわばりの軽減や余暇活動などを含む生活全体の活動が改善したことで、健康状態が改善し、結果としてJKOM総点が改善したと推察される。適切な指導のもとに行われた運動療法は、膝OA患者のADLやQOLの改善につながることが報告されており、本研究における膝教室は、自主運動のみにもかかわらず、個別指導による定期的な運動指導によりQOLが改善したと推察される。本研究が、短期および中期的に膝の痛みに関連するQOL向上における有効性を示したが、今後は長期効果の検討などが必要と考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果より、JKOM総点や下位尺度の経時的変化を比較検討することで膝教室の有効性を示唆することができた。これにより、各人に適切な運動指導を定期的に実施することで、自主運動のみでもQOL改善に効果的な結果が得られる可能性が示唆された。

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© 2013 日本理学療法士協会
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