理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-07
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ポスター発表
膝蓋骨の変形と膝蓋骨周囲の骨アライメントの関係性について-第二報-
西江 謙一郎江戸 優裕
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抄録

【はじめに、目的】我々は、第47回日本理学療法学術大会にて、内側型変形性膝関節症(膝OA)患者のX線画像上で膝蓋骨の変形の増大には、正面像で大腿骨長軸と大腿骨内外顆の接線のなす外側角(FC‐FS)の増大と、側面像で脛骨長軸と脛骨高原のなす背側角(PPTA)の低下が関与することを報告した。臨床上、膝OA患者は両側で膝蓋骨の変形を生じている事は少なくなく、疼痛を生じている事を多く経験する。また、両側での下肢アライメントの違いに着目することは、歩行動作など膝OAの原因となる動作を評価する際に有効である。そこで、今回は同一対象者の左右における膝蓋骨の変形と関連する膝関節周囲の骨アライメントを計測し、個体内での関係性を検討及び考察したのでここに報告する。【方法】対象は2010年7月から2012年10月に当院で両内側型膝OAと診断の受け、X線画像の使用に承諾を得ることができた27名(77.0±6.8歳・女性25名・K/L分類Grade1:2名、Grade2:8名、Grade3:9名、Grade4:6名、Grade5:2名)とした。対象者の診断に際して医師の処方の下、放射線技師により撮影されたX線画像を用いて、膝蓋骨の変形の程度、及びFC-FS、PPTAを計測した。膝蓋骨の変形は膝関節側面像において、膝蓋骨のPF関節面の平行線(膝蓋骨長軸線)に対して、膝蓋骨の周囲に増殖した骨棘の近位端と遠位端、及び骨棘を除いた膝蓋骨の上縁と下縁の計4点から各々垂線を引き、その垂線と膝蓋骨長軸線の交点間の距離を計測することにより評価した。尚、膝蓋骨長軸線上での膝蓋骨自体の長さを膝蓋骨長とし、骨棘の長さを近位変形長・遠位変形長、近位と遠位の変形量の和を総変形長と定義した。そして、各変形長を膝蓋骨長で除し、更に百分率で表すことで、近位変形率・遠位変形率・総変形率を算出し、分析に使用した。膝関節のアライメントは、正面像においてFC‐FS、側面像においてPPTAを計測した。統計学的分析には、同一対象者内の左右の二群と近位変形率の大小で二群(大群、小群)にそれぞれ分け、対応のあるt検定で検討した。 尚、検定における有意水準は危険率5%未満で判定した。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には本研究の主旨を説明し、X線画像の使用に書面で同意を得た。【結果】計測の結果、大小二群ではFC-FSに有意な差はみられなかった(大群81.5±3.1度、小群81.6±3.7度)。PPTAは大群79.2±4.6度、小群82.2±3.2度であり、有意に低下していた(p<0.01)。左右二群では近位変形率、遠位変形率、総変形率に有意な差はみられなかった。FC-FSでは右群80.6±2.1度、左群82.5±4.1度であり、右側に対して有意に増加していた(p<0.01)。PPTAは右群79.6±3.8度、左群81.8±4.3度であり、右側に対して有意に増加していた(p<0.05)。【考察】今回の結果より、近位変形率の大小においてPPTAでは近位変形率の増加に対して有意に低下しており、前回の近位変形率とPPTAの相関が個体内でも一致している事が示唆された。しかし、FC-FSでは近位変形率の大小での有意な差はみられなかった。一方、両変形性膝OA患者においてPPTAは右側で小さく、FC-FSは左側で大きいことが分かった。こういった左右差は個体内での膝蓋骨の変形に関与するPPTAとFC-FSの相関にも左右差がある事が推察された。その為、膝蓋骨の変形に左右差はなく、個体内でのFC-FSに差がみられなかったと考える。【理学療法学研究としての意義】本研究により個体内でも膝関節周囲の骨アライメントが膝蓋骨の変形に関与することがわかった。また、関連する膝関節のアライメントに左右差があることが示唆された。このように、膝OA患者における形態的な特徴を明確にすることは、立位姿勢や動作分析といった動態的な研究の発展に関与する。今後は、X線画像を用いた静的な評価に加えて動作を用いた動的な研究を進めることが、膝OA患者の病態解析を発展させ、臨床に則した研究になると思われる。

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© 2013 日本理学療法士協会
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