理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-41
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ポスター発表
超音波診断装置を用いた変形性股関節症患者における腹部引き込み運動時の腹横筋厚変化率について
堀 弘明堀 享一由利 真千葉 健
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抄録
【はじめに、目的】 Hodgesらは,腹横筋は下肢の運動に先立って活動し腰椎骨盤姿勢制御に働くと報告している.近年,健常者を対象に腹横筋活動に関する研究が多く報告され,腹横筋は体幹の安定化に働き,脊柱や骨盤に起始を持つ股関節筋群の筋出力に影響を与えるという報告もある.股関節に機能障害を生じる変形性股関節症患者の歩行等の動作に腹横筋は影響を与えると考えられるが研究報告は少ない.演者は,第46回日本理学療法学術大会で圧バイオフィードバック(Chattanooga group社製)を使用し,変形性股関節症患者では腹横筋の筋活動低下が生じている可能性を報告した.しかし,前回の報告では直接腹横筋の活動を測定しておらず検討課題であった.近年では,非侵襲的に腹横筋の活動を測定するために超音波診断装置を用いた研究が多く,その信頼性の高さも報告されている.また,腹横筋の分離収縮には腹部引き込み運動(以下Draw-in)が適していると報告されている. そこで,本研究の目的は超音波診断装置を使用し,変形性股関節症患者と健常者を対象にDraw-in時の腹横筋厚の変化率について比較することである.【方法】 対象者は,北海道大学病院に変形性股関節症の診断を受け手術目的に入院し,術前理学療法を実施した患者を変形性股関節症群12名(男2名・女10名:63.3±14.0歳)とした.除外基準は,既往歴に整形外科的疾患がある者,対側股関節に手術を施行している者,腹部に手術歴がある者とした.また,変形性股関節症群の年齢に合わせ身体に整形疾患等の既往歴のない者を健常者群12名(男2名・女10名:64.4±3.1歳)とした.測定実施日は,術前理学療法開始1日目に実施した. 測定実施前に検者内信頼性を確認するために,検者1名が健常成人7名(男性7名:26.0±6.2歳)を対象に確認を行った. 測定肢位は膝を立てた背臥位姿勢とし,超音波診断装置はVenue 40 Musculoskeletal(GEヘルスケア・ジャパン)を使用した.画像表示モードはBモードで,8MHzのプローブで撮影を行った.腹横筋の測定部位は,Urquhartらのワイヤー筋電図の測定部位を参考にし,患側中腋窩線上における肋骨辺縁と腸骨稜の中央部とした.プローブは,プローブ長軸が患側中腋窩線に直交するように置き,プローブの中央が患側中腋窩線上にくるように設置した.モニター上で腹横筋,内腹斜筋,外腹斜筋の境界を描出した.プローブの位置の決定と筋厚測定は同一検者により行った. 測定時の運動課題は,安静呼気終末時の腹横筋厚を安静時腹横筋厚とし,分離収縮においてはDraw-in時の腹横筋厚とした. 変形性股関節症群と健常者群の安静時腹横筋厚とDraw-in時の腹横筋厚の変化率についてはMann-Whitney U検定を用いて行った.統計学的処理は5%未満を有意水準として実施した. 超音波診断装置における腹横筋の筋厚測定の検者内信頼性は,同一測定を2回実施し2回目は異なる日に実施した.結果に対し級内相関係数(以下:ICC)を用いて測定値の検者内信頼性を確認した.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はヘルシンキ宣言に沿い,北海道大学病院の自主研究検査機関の承認を受け,十分な説明を受けた後,被験者本人の自由意思による文書同意を得てから計測を行った.【結果】 検者内信頼性のICC(1.1)は安静呼吸時の腹横筋厚が0.74~0.99,Draw-in時の腹横筋厚が0.96~0.99であり,それぞれLandisらの分類にてalmost perfect以上の相関を認めた. 変形性股関節症群と健常者群の安静時腹横筋厚とDraw-in時の腹横筋厚の変化率の比較では,変形性股関節症群25.6±17.8%,健常者群45.0±19.3%となり2群間で有意差(p<0.05)が認められた.【考察】 我々の方法においても超音波診断装置による腹横筋厚の測定は信頼性が得られた.本研究において変形性股関節症患者は,腹横筋厚の変化率が健常人より低値になった.腹横筋厚の変化率は,腹横筋の筋活動を反映することが報告されており,本研究の変形性股関節症患者では腹横筋の筋活動が低下していたものと思われる.土井口らは,股関節に構築学的な問題が生じ疼痛が発生する症例では逃避・防御的反応として骨盤前傾させ骨頭の被覆面積を広くすると述べている.また,OffierskiとMacnabは体幹と股関節は密接に関連し,一方が破綻すると他方にも悪影響を及ぼすような状態をhip-spine syndromeと述べており,近年,注目されている.このように,変形性股関節症患者では体幹機能への影響が考えられており,本研究の結果はそのことを反映したものと思われる.今後は,姿勢変化等による腹横筋の筋厚変化を検討する必要がある. 【理学療法学研究としての意義】 本研究は,変形性股関節症患者の腹横筋は筋活動が低下していることを示唆し,腹横筋も評価し理学療法を実施する必要があると考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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