理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-05
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一般口述発表
全身弛緩性をもつ健常者の重心動揺と足部機能について
非弛緩群との比較
松本 仁美室井 良太南谷 晶籾山 日出樹正門 由久
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抄録
【はじめに、目的】関節弛緩性(General Joint Laxity)とは運動方向に問題はないが、過剰な可動性を有している場合をいう。関節弛緩性を有する者は足関節捻挫の既往が多く、足関節捻挫の既往を持つ患者は片脚立位バランス低下を認めやすい。このため関節弛緩性を有する者に対しては、関節に過度のストレスが加わらないアライメントや動作の習得が対策として挙げられる。一方、片脚立位バランスには足指把持力、足底感覚が関与することが報告されているが,関節弛緩性を有する健常者(以下GJL群)で外傷既往のない者がどのような足部機能を有しているのか、非弛緩性の健常者と比較した研究はみうけられない。そこで今回、片脚立位バランス能力を重心動揺、足部アライメント、足趾把持力、足底感覚の点からGJL群と非弛緩群を比較検討し、GJL群の特徴を明らかにすることを目的に研究を行った。【方法】下肢に整形外科疾患などの既往がない健常成人女性108名を対象とした。全身弛緩性テスト(東大式)を用いて7点満点中4点以上をGJL群とした。また,非弛緩群を無作為に抽出した。測定項目は以下のものとし、その順序はランダムとした。片脚立位による重心動揺の測定はツイングラビコーダGP-6000(アニマ株式会社)を使用した。測定は右足を被験肢とし、3回測定し、動揺の少ない値を代表値とした。裸足で行い、測定時間は30秒で、総軌跡長、外周面積を測定した。足部アライメントの測定としてleg-heelangle(以下LH テスト)を測定し,荷重位にて下腿遠位1/3の長軸線と踵骨の縦軸線がなす角を計測した。navicular drop test(以下NA テスト)は股関節・膝関節を90度、足関節中間位とした坐位にて床面から舟状骨下端までの距離を計測し、次に立位にて床面から舟状骨下端までの距離を計測し坐位と立位での距離の差を計測値とした。足趾把持力は足趾把持力測定器(竹井機器工業社製)を用いて被験者の右足を被験肢とし足趾把持力を3回測定し、最大値を採用した。足底感覚として測定部位を踵部と母指球部とし、それぞれの二点識別覚を測定した。統計学的分析には正規性の確認のもと対応のあるt検定を用い、有意水準を5%未満とした。また,測定の再現性を検証する為に各測定項目全てにおいて級内相関係数(ICC (1,1))を確認した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は、東海大学医学部付属病院臨床研究審査委員部会(受付番号11R 085号)に承認されている。なお、対象者には研究目的および研究方法を十分に説明し文書にて同意を得た。【結果】全身弛緩性テスト(東大式)を用いてGJL群に該当したものは22名であった。また非弛緩群として非該当者6名を無作為に抽出した。全身弛緩性テスト(東大式)では、GJL群(平均点5.0±0.6点)、非弛緩群(平均点1.8±0.8点)と両群間には有意な差を認めた(p<0.01)。GJL群、非弛緩群の順に、LHテストでは12.0±3.6°、7.1±2.6°と、NAテストでは12.8±0.3mm、5.8±0.2mmといずれも有意差を認めた(p<0.05)。非弛緩群と比較してGJL群では、LHテストでは踵骨の回内位が強いこと、NAテストでは内側縦アーチの低下が認められた。年齢、総軌跡長、外周面積、足趾把持力、足底感覚の項目に関しては2群間に有意差は認めなかった。また測定の再現性としてICC(1,1)はρ=0.81(p<0.01)であった。【考察】GJL群、非弛緩群間で足部アライメントの測定値に有意差を認めた。足関節遠位は主に足底腱膜をはじめとし、筋線維だけではなく腱膜での構成体を有する部分が多い。よってGJL群は腱膜という構成体の柔軟性により、成長過程の適応としてLHテストでの踵骨回内位、NAテストでの内側縦アーチの低下という、いわゆる内反偏平足のアライメントを呈したものと考えられた。また、GJL群では総軌跡長や外周面積が非弛緩群と比較して有意差を認めなかった。これはGJL群における踵骨回内位と内側縦アーチの低下は、片脚立位バランスに関与するとは限らない事が示唆された。GJL群では、内反偏平足を呈していたため、先行研究の報告にもあったように足部の感覚や足趾把持力低下も関与すると推測したが、そのような結果は得られなかった。理由として、片脚バランスが足部アライメント以外の足趾把持力や固有感覚によって補完される“足部機能”を有していると考えられた。【理学療法学研究としての意義】全身弛緩性をもつ足部に外傷既往のない健常者は内反偏平足という足部の形態に特徴があるものの、片脚立位バランスや足趾把持力、足底感覚といった足部の機能には非弛緩群と比較し有意差を認めなかった。今後は下肢のアライメントや下肢筋力の比較、今回比較した片脚立位という静的バランスのみならず、ダイナミックな動作を通じて、全身弛緩性をもつ健常者の特徴や外傷予防の為の理学療法学的アプローチについて追究したい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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