理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-05
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一般口述発表
足趾把持筋力漸増に伴う足関節周囲筋の筋活動の変化
佐藤 洋介相馬 正之中江 秀幸甲斐 義浩村田 伸
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抄録
【はじめに、目的】手の把握動作における前腕の筋活動について多く報告され,握力と筋活動の関係が指摘されている。しかし,同じ肢である下肢における足関節では,足趾把持筋力が立位バランス能力や転倒要因として関与することが報告されている。しかし,足趾把持動作時の下腿の筋活動についての報告は見当たらない。そこで本研究では,足趾把持筋力を発揮した際の,足関節周囲筋の筋活動を検討し,評価・治療の一助とすることを目的とした。【方法】対象は健常成人女性20名とした(平均年齢21.5±1.0歳)。課題は最大足趾把持筋力を100%とした際の,10%から80%までの10%毎の各随意筋収縮力発揮とした。測定肢位は椅子座位とし,足趾把持筋力の測定には足指筋力測定器(T.K.K.3361,竹井機器社製)を用いた。被験筋は腓腹筋内側頭およびヒラメ筋,前脛骨筋の3筋とした。表面筋電図(EMG)の測定は双極誘導とし,皮膚処理後にプリアンプ内蔵パラレルバー電極を被験筋に貼付した。EMGからの信号は,サンプリング周波数1,000HzでA/D変換を行い,パーソナルコンピュータに取り込んだ。なお,帯域幅は20から500Hzとした。得られた積分筋電図(IEMG)は各筋の最大随意等尺性収縮時の筋活動を基準に正規化した。統計処理は,各随意筋収縮力間のIEMGの比較に,反復測定分散分析およびDunnettの多重比較検定を採用し,危険率5%未満を有意差ありと判断した。【倫理的配慮、説明と同意】対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明した。同意書に署名が得られた対象について計測を行った。本研究は,東北福祉大学研究倫理委員会の承認(RS1208283)を受け実施した。【結果】前脛骨筋のIEMG(mean±SE)は,10%:2.6±0.5%,20%:2.7±0.5%,30%:4.3±0.8%,40%:6.2±1.2%,50%:9.2±1.6%,60%:12.5±2.0%,70%:15.7±2.4%,80%:20.9±2.6%であった。10%と比較して,30%以降のすべての随意筋収縮力との間に有意な差が認められた(p<0.05)。ヒラメ筋のIEMGは,10%:6.3±1.0%,20%:7.4±1.0%,30%:10.7±1.7%,40%:13.2±2.1%,50%:17.4±2.6%,60%:22.8±4.2%,70%:25.5±4.1%,80%:28.4±4.2%であった。10%と比較して,30%以降のすべての随意筋収縮力との間に有意な差が認められた(p<0.05)。腓腹筋内側頭のIEMGは,10%:7.8±2.1%,20%:7.9±1.7%,30%:8.6±1.7%,40%:10.6±2.1%,50%:13.3±2.4%,60%:16.4±2.3%,70%:19.1±2.5%,80%:22.0±3.1であった。10%と比較して,40%以降のすべての随意筋収縮力との間に有意な差が認められた(p<0.05)。【考察】各被験筋の筋活動が発揮する筋力とともに増加したことから,強い足趾把持筋力を発揮する際には,足関節周囲筋による足関節安定化が生じることが示唆された。負荷量との関係では,握力動作における前腕筋群の筋活動と比較すると,有意な筋活動が生じる負荷量30%以降に大きかった。その理由としては,関節構造が手関節より足関節の方が安定しているためと推察された。また,各被験筋における筋活動の経時的変化は,背屈筋が先行する手関節とは異なり,単関節筋群が先行して活動した。これは測定肢位の違いや各筋の機能の違いが影響していると考えられる。握力測定は開放性運動連鎖で行われ,Tenodesis actionを合理的に利用するために背屈筋が先行して働き手関節を背屈させるが,足趾把持筋力測定は閉鎖性運動連鎖で行われるため,足趾把持力測定時には足関節の関節運動が生じにくい。そのため,足関節背屈による距腿関節安定性の向上ではなく,拮抗筋との同時収縮による関節安定化が図られたものと推察した。また,単関節筋は持久力に優れ関節を安定化するのに適しており,二関節筋は瞬発力に優れ関節を駆動するのに適している。これらからも足趾把持力発揮時には,持久力に優れた単関節筋群が先行して活動し,より関節の安定化が要求される際に二関節筋が動員されることが推察された。【理学療法学研究としての意義】足趾把持筋力発揮時における足関節周囲筋の筋活動を示した。足趾把持筋力の低下は単純な足趾屈筋群の筋力低下だけではなく,足関節周囲筋の機能障害でも生じることが示唆され,評価・治療の際には足関節周囲筋にも着目する必要が示された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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