抄録
【はじめに、目的】2010 年度の診療報酬改定により回復期リハビリテーションを要する状態の患者に対し1 人1 日あたり6 単位以上のリハビリテーションの実施で40 点/1 日、重症の患者の3 割以上が退院時に日常生活機能評価で3 点以上改善していることで50 点/1 日が加えられた。また、2012 年度の診療報酬改定により回復期リハビリテーション病棟入院料1 の施設基準に在宅復帰率が6 割以上から7 割以上、新規入院患者のうち重症患者(日常生活機能評価において10 点以上)の割合が2 割以上から3 割以上に引き上げられた。こうした診療報酬改定の流れの中でリハビリテーションの質が求められおり、河北リハビリテーション病院(以下当院)の充実加算導入前後のリハビリテーション効果を機能自立度評価表:Functional Independence Measure(以下FIM)を用いて検討する機会を得たので報告する。【方法】カルテを後方視的に調査し2008 年4 月1 日から2012 年3 月31 日の期間に当院に入退院した脳血管疾患患者の内、病状の悪化による急変者やFIMデータの欠損者を除外した868 名(男性464 名、女性404 名、平均年齢73.40 ± 13.30 歳)を対象とした。対象者868 名の内2010 年4 月1 日から2012 年3 月31 日の期間に当院に入退院となった432 名(男性242 名、女性190 名、平均年齢73.56 ± 13.24 歳)を加算群、2008 年4 月1 日から2010 年3 月31 日の期間に当院に入退院となった436 名(男性222 名、女性214 名、平均年齢73.24 ± 13.40 歳)を非加算群とした。可算群と非可算群の内、A:理学療法、作業療法、言語聴覚療法のいずれかの組み合わせで実施された場合(以下A)、B:理学療法と作業療法が実施された場合(以下B)、C:理学療法、作業療法、言語聴覚療法のすべてが実施された場合(以下C)で比較検討した。年齢、入院期間、入院時FIM点数、退院時FIM点数、獲得FIM点数(退院時FIMと入院持FIM点数の減算)、FIM利得(獲得FIM点数から入院期間の除算)を抽出し統計処理をした。統計処理は、統計ソフトSPSS(11.5J for Windows)を使用して危険率5%未満に設定し、対応のないt検定、Mann-WhitenyのU検定を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は後方視的観察研究であり、ヘルシンキ宣言に基づき、個人情報には十分留意しカルテより情報を収集し調査した。【結果】Aでは年齢(73.2 ± 13.4 歳vs73.6 ± 13.2 歳)、入院期間(95.6 ± 43.7 日vs91.9 ± 42.3 日)、獲得FIM点数(17.3 ± 14.9 点vs17.6 ± 14.6 点)に有意な差を認めず、入院時FIM点数(63.4 ± 29.6 点vs71.6 ± 30.4 点)、退院時FIM点数(80.7 ± 32.6点vs89.2 ± 31.9 点)、FIM利得(18.2 ± 17.3 点/日vs20.5 ± 20.8 点/日)に有意な差を認めた。Bでは年齢(74.0 ± 12.3 歳vs75.1 ± 12.3 歳)、入院期間(88.0 ± 41.3 日vs89.0 ± 40.9 日)、入院時FIM点数(74.7 ± 25.4 点vs74.3 ± 29.5 点)、退院時FIM点数(92.5 ± 26.8 点vs91.5 ± 30.7 点)、獲得FIM点数(17.8 ± 14.6 点vs17.2 ± 14.4 点)、FIM利得(21.6 ± 20.4 点/日vs21.1 ± 22.8 点/日)すべてにおいて有意な差を認めなかった。Cでは年齢(72.4 ± 14.1 歳vs70.2 ± 14.1 歳)、入院期間(101.0 ± 44.0 日vs98.2 ± 45.1 日)に有意な差を認めず、入院時FIM点数(56.2 ± 29.8 点vs65.2 ± 31.9 点)、退院時FIM点数(72.8 ± 33.6 点vs83.7 ± 34.4 点)、獲得FIM点数(16.6 ± 14.9 点vs18.5 ± 15.1 点)、FIM利得(15.6 ± 14.1 点/日vs18.8 ± 14.9 点/日)に有意な差を認めた。【考察】当院は2010 年度の診療報酬改定時より充実加算を導入した。本研究にて当院の充実加算導入によるリハビリテーションの効果として、FIMに着目し脳血管疾患患者の効果を検証した。Aでは入院時・退院時FIM点数、FIM利得で有意差を認めたが、入院期間や獲得FIMには有意差を認めなかった。Bではすべての項目で有意差を認めず、Cでは入院時・退院時FIM点数、獲得FIM点数、FIM利得に有意差を認めたため、脳血管疾患患者に対するリハビリテーションの効果として3 職種が同時に介入する場合により高い効果を示すことが示唆された。今後は在宅復帰率や重症患者に着目した検証を進め、その効果を検証していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】診療報酬は医療従事者として従事する際に必要不可欠なものであり、少子高齢社会を迎えた本国の医療費の抑制は急務な課題である。本研究の意義は社会背景の中で理学療法士の介入効果を示し、理学療法の発展に寄与することである。