理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-55
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ポスター発表
汎用ビデオゲームインタフェースを利用したマーカレス・モーショントラッキングシステムの可能性
秦 一貴福留 清博上嶋 明西 智洋川井田 豊平田 敦志前田 誠
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抄録
【目的】理学療法士による患者の機能評価について,客観的で精度の高い評価を行うには,3 次元動作解析装置の利用が理想的である.しかし,非常に高価で,大がかりでかつ複雑な操作を要する機器である為,臨床の場で使用することは困難である.そこで,本研究では,家庭用ビデオゲーム機器を活用し,1)臨床での使用に適した安価でマーカー不要な3 次元動作解析システム(マーカレスシステム)を開発し,2)gold standardとしてのマーカー使用の3 次元動作解析装置(マーカベースシステム)と,トレッドミル歩行中の膝関節屈曲角度,大腿長,および下腿長について比較することで,そのマーカレスシステムの妥当性について調べ,3)実際に,デイサービスでの機能訓練評価に本システムを試用した例を紹介する.【方法】家庭用ビデオゲーム機器のインタフェースXbox 360 KinectTM センサー(Microsoft Corp, USA)(以下Kinect)について,開発環境Kinect for Windows SDK betaを利用し,関節中心座標データを取得できるVisual C#プログラムを作成した.健常成人20 名(平均年齢25.8 ± 5.0 歳)を被験者とし,トレッドミル歩行動作(トレッドミル速度1, 2, 3, 4 km/h)における膝関節屈曲角度,大腿長,および下腿長を,マーカレスシステムおよびマーカベースシステム(Vicon MX, Oxford Metrics 社, UK)の両システムで測定し,膝関節屈曲角度についてPearsonの相関係数を求め,その関係について回帰分析を行った.統計処理にはSPSS statistics 17.0 を用い,危険率5 %未満で検定を行った.さらに,デイサービス利用者3 名(平均年齢83.0 ± 11.8 歳)の機能訓練評価について,片脚立位および立ち上がり動作をマーカレスシステムで測定した.【説明と同意】予め,説明や同意に関する方法を含む本研究計画について鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の審議を受け承認(第171 号)を得た.その上で,被験者に説明文書を用いて書面および口頭で,研究の目的他,参加が強制ではないこと等を説明した.被験者に同意が得られた場合のみ,同意書に署名を得て研究に参加していただいた.【結果】1)膝関節屈曲角度.マーカレスシステムの測定値(θmls ),マーカベースシステムの測定値(θmbs )において,すべての速度域でのPearsonの相関係数は0.9 以上と高い相関を示したため,トレッドミル速度1 km/hから4 km/hまでのすべてのデータについて回帰分析を行い,θmbs = 1.53 θmls - 1.44 という関係式を得た.2)大腿長および下腿長.マーカレスシステムで測定した下腿長はマーカベースシステムで測定した値と同程度であったが,大腿長において平均125mmマーカレスシステムの測定値の方が大きくなる結果となった.3)片脚立位および立ち上がり動作.両動作ともに,モーショントラッキングによるリアルタイムでの関節中心座標測定が可能であった.【考察】本研究で開発したモーショントラッキングシステムは,マーカレス方式であるため,マーカーを貼付する手間もなく,デイサービス利用の高齢者に負担を与えることがない.しかも,客観的評価が可能で臨床の場での使用に最適であった.膝関節屈曲角度について本システムは,gold standardと高い相関係数を持つことから動作は正しく認識されているが,回帰分析した結果,本システムの測定値はマーカベースシステムの測定値の3 分の2 程度の大きさしかなく,さらに両システムでの大腿長が異なることから,Kinectの関節中心の推定には問題が残されている.しかし,この関節中心の推定はブラックボックスでもあり,本マーカレスシステムを活用するには,得られた結果を較正して利用することが現実的である.【理学療法学研究としての意義】リハビリテーション行為に客観性が求められ,数値化できる科学的データが必要とされる現在に至り,セラピストには患者を正しく評価することが求められている.家庭用ビデオゲーム機器を動作解析装置として利用できるならば,臨床における安価で簡便な評価システムとして活用できる可能性を秘めている.
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© 2013 日本理学療法士協会
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