理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-03
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ポスター発表
理学療法士・作業療法士教育における臨床能力評価の標準化に向けて
OSCE教育システムの確立を目指して
櫻井 宏明岡西 哲夫杉浦 令人本谷 郁雄和田 陽介山田 将之伊藤 真美阿部 祐子冨田 昌夫澤 俊二寺西 利生金田 嘉清
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キーワード: OSCE, 臨床能力, 標準化
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抄録

【はじめに、目的】 本研究の意義は、療法士教育における臨床能力評価の標準化を確立することである。新人療法士の成長にとっては、早期から客観的に臨床能力を把握し、それに合わせた卒後教育、臨床指導方法の統一化が最重要と考える。これまで我々は、客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:OSCE)成績と学内成績ならびに臨床実習成績の関連性を明らかにしてきた。今回の目的は、OSCE成績と学内成績ならびに臨地実習成績の関連性と相違性を明らかにすることによって、理学療法士・作業療法士教育における、「OSCEを用いた臨床能力評価」の標準化を目指すことである。【方法】 対象者は、平成16年から18年に入学し、すべてのテストならびに臨地実習が遂行でき4年間で卒業した1~3期生全学生227名と平成19年から20年に入学し4年間で卒業した4~5期生174名(4期生89名,5期生85名)であった。OSCEの実施項目において、レベル1(初期体験実習前後での評価)は、コミュニケーション、介助技術の獲得であり、レベル2(臨床実習前後での評価)は、検査・測定技術の獲得であり、レベル3(応用臨地実習前後での評価)は、分析・治療技術の獲得である。OSCE実施方法は、数カ所のステーションを準備し、各ステーションには、評価者2名と模擬患者1名をおき、いずれも理学療法士、作業療法士教員が行っている。1つのステーションの試験時間は5分で、1課題の試験の終了直後に2分間のフィードバックを実施している。学内成績は各学年1年間の平均得点とし、OSCE成績は2名の評価者間の一致率が低いところもあることから2名で検討した評価を採用し、臨地実習成績においては、3年次の臨床実習の平均成績と4年次の応用臨地実習の平均成績とした。分析方法は、臨地実習各時期においての3群間以上の比較ならびにOSCE教育システム改変前の1~3期生と改変後の4~5期生との比較は、対応のない2群間の比較を行った。臨地実習各時期の関係ならびにOSCE成績、学内成績、臨地実習成績の得点率を求め、各成績との関係ならびに臨地実習における態度、知識、技能について臨地実習各時期の関係を検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 倫理面への配慮において、本学における倫理審査委員会の承認を得て実施した。【結果】 OSCE教育システムの改変により、臨地実習成績(態度,技能,知識)が全般的に向上した。また、OSCE教育の導入時からの課題であったOSCE成績と臨地実習成績の関連性も回を重ねることに高まりを見せた。臨地実習成績の技能、態度、知識の成績が、全て4~5期生が1~3期生に比べ有意に高かった。また、4期生より5期生のほうがOSCE成績と臨地実習成績との関係が高くなった。【考察】 臨地実習各期における臨地実習成績の比較では、4~5期生の方が1~3期生に比べ、点数が有意に向上する組み合わせが多かった。また、臨地実習各期での実習成績の関連性に関して、4~5期生では、態度面、技能面において有意な相関がみられ、OSCE導入による効果や技能の標準化が少しずつ定着してきていると示唆された。臨地実習成績の技能、態度、知識の成績が、全て4~5期生が1~3期生に比べ有意に高かった。この結果より、4~5期生に行ったOSCE教育は、1~3期生に行ったOSCE教育よりも精神運動領域や情意領域の教育に適切な内容に改変されたと考えられた。OSCE教育システムの改変後の4~5期生における学内成績と臨地実習成績との間、学内成績とOSCE成績との間、臨地実習成績とOSCE成績との間の3つの相関関係において、5期生の方が有意な相関関係を示す組み合わせが多く,OSCE教育を重ねるにあたり学内授業と臨地実習ならびにOSCE教育の連結性が強化されてきたのではないかと考えられた。これは、OSCE教育を通して各科目間の内容の関連性を学習し、そして学習内容を臨地実習での態度、技能へ反映させる能力を養い、さらにOSCE教育によって態度、技能、知識にフィードバックをかける仕組みが成立してきていることが示唆された。今後は、臨床実習施設における中堅理学療法士・作業療法士が学生、新人療法士を卒後教育する上での臨床技術のスタンダード化も進めていきたい。【理学療法学研究としての意義】 OSCEを用いた教育を通して各科目間の内容の関連性を学習し、そして学習内容を臨地実習での態度、技能へ反映させる能力を養い、さらにOSCEを用いた教育によって態度、技能、知識にフィードバックをかける臨床技術の標準化に向けての一指標になった。

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© 2013 日本理学療法士協会
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