理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-16
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ポスター発表
若年群と高齢群の運動単位数と筋力の関係
ー 多点刺激法による検討 ー
市橋 範子下野 俊哉古川 公宣豊田 愼一
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抄録
【目的】 老化による筋肉量や筋力の減少はサルコペニアとして知られている.それには栄養低下,ホルモン変化,代謝性変化,免疫・炎症性変化,神経原性変化,そして身体活動性低下などが関与しているとされている.その中で神経原性変化についてみると運動単位数の減少,部分的な脱髄,筋線維数の減少や速筋線維の萎縮などが報告されている.今回,誘発筋電図を用い若年群と高齢群で運動単位数を推定し,老化により運動単位数がどの程度減少を認めるかどうか,筋力低下と関係を示すかどうかを検討した.【方法】 対象は若年群11例,年齢22.9±4.4歳(21~36歳),身長166.7±8.4cm,体重63.6±9.6kgと高齢群12例,年齢57.6±5.3歳(50~66歳),身長164.2±25.1cm,体重61.5±7.1kgとした.対象者は,廃用の影響を除くため仕事を持っているか,趣味などの活動をしている活動性の高い者とした.運動単位数の推定は,日本光電社製筋電計(Neuropack MEB9102)を使用し,尺骨神経にて多点刺激法を用い行った.多点刺激法は,小指外転筋に表面電極を設置し,手関節部の尺骨神経に最大上刺激を加え,すべての運動単位を興奮させ最大複合筋活動電位振幅を計測した.ついで電流量を電位が誘発される最小電流量とし,手関節部から肘関節部にある尺骨神経の異なる5カ所で,明らかに電位の形,振幅や持続時間が異なる複合筋活動電位を導出した.誘発されたそれぞれの振幅を平均し,単一運動単位電位の振幅とした.この値で先ほど求めた最大複合筋活動電位振幅を除して運動単位数を求めた.さらにアニマ社製徒手筋力計(MT-1)を用い,最大等尺性収縮にて小指外転筋力を計測した.個体差を消すため計測された筋力を体重で除し標準化した.これらの計測から,運動単位数が年齢で異なるかどうか,最大筋力と関係があるかどうかを検討した.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的および内容を説明し同意を得た.【結果】 推定された運動単位数は,若年群で342.7±109.1個,高齢群で255.0±116.5個であり,高齢群で有意な運動単位数の減少が認められた(p<0.05). 体重比で表された小指外転筋力は,若年群4.14±0.92%,高齢群3.47±0.46%となり,高齢群で有意な筋力低下を示した(p<0.05). 推定された運動単位数と筋力の関係は,若年群では,ほとんど関係を示さなかったが,高齢群ではr=0.61(p<0.05)であり,筋力の低い例ほど運動単位数が少ない関係が認められた.【考察】 運動単位数推定法は,現在ALSを中心として研究されている方法で,漸増刺激法,F波を用いた方法,スパイクトリガー法,統計学的方法,多点刺激法など数々の手技がある.これらの方法は,針電極を用いるものや計測時間が長時間に及ぶもの,専門的な機器を必要とするものが多い.今回,この中でも多点刺激法を使用して若年群と高齢群を比較し,老化が運動単位数に与える影響を検討した.その結果,多くの文献で報告されているのと同様,高齢群で運動単位数の有意な減少を認めた.また,高齢群においては筋力の低い例ほど運動単位数も少ないという結果が得られた.このことから多点刺激法による運動単位数推定は,神経原性変化としての運動単位数の減少を捉えることが可能であると考えられた.しかしながら,運動単位数は,若年群や高齢群としての結果では差を認めたが個体差も大きく,その個人が減少しているかの判断は経過を追うことや他の神経との比較検討などが必要となる.また,この方法は神経が表層にあり,いくつかの部位で電気刺激可能な場合に限られている点が欠点でもある.多点刺激法は臨床で用いるにはいくらかの制約があるものの短時間で手技的にも簡便に行える有用な方法と考えられる.【理学療法学研究としての意義】 サルコペニアや神経障害など筋力低下を示す患者を我々は多く扱うが,筋力は筋量,すなわち横断面積と神経活動が関係する.その神経活動に影響を与える一つの要素である運動単位数を推定することは,筋力低下の詳細な病態把握やその後の理学療法プログラム立案に役立つと考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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