理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-O-05
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一般口述発表
身体活動量と長周期の自律神経活動の関連
臼井 晴信西田 裕介
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抄録
【はじめに、目的】身体活動量が多いと,脳血管障害などの生活習慣病の予後を改善し,さらなる障害を予防する。身体活動量への理学療法介入は,内部障害の改善と予防に効果的であると考える。生活習慣病患者では自律神経機能が障害されている場合があり,自律神経障害は内部障害を発生,悪化させる一要因となる。日常的な種々のストレスに対し一過性に交感神経活動が亢進するが,自律神経機能が障害されると,亢進した交感神経活動が持続する。自律神経活動の持続は慢性炎症を亢進させるなどの機序により,疾患予後を悪化させ,さらなる障害をもたらす。炎症指標や疾患予後と関連する自律神経活動の指標として,心拍変動の周波数領域解析による超低周波領域成分(VLF:Very Low Frequency)がある。VLFは20秒から5分に1回の長周期の自律神経活動の変化を捉える。VLFの低下は,持続的な交感神経活動の亢進を意味する。本研究は,脳血管障害患者を対象に身体活動量と長周期の自律神経活動の関連を検討する。身体活動量が多いとVLFが大きいという仮説を検証し,身体活動量が多いと障害を増悪させうる長周期の自律神経活動の亢進が小さいことを明らかにする。【方法】回復期リハビリテーション病棟入院中の脳血管障害患者8名を対象とした。測定は17時から24時間行った。メモリー心拍計(LRR-03/(株)ジー・エム・エス)により,CM5誘導で心電図を導出し,RR間隔を記録した。解析ソフト(Memcalc/Tarawa)を用いて,RR間隔データに対し周波数領域解析を行った。0.003~0.04Hzの周波数帯をVLF,0.04~0.15Hzの周波数帯をLF(Low Frequency),0.15~0.4Hzの周波数帯をHF(High Frequency)とした。また一般的な交感神経活動の指標としてLF/HF比を算出した。各自律神経活動指標は,自然対数により対数変換した補正値を用いた。24時間の平均値を24時間自律神経活動の指標とし,21時から翌5時までの平均値を夜間自律神経活動の指標とした。身体活動量は,活動量計(Active style Pro HJA-350IT/OMRON)を腰部に装着し24時間測定した。10秒毎の活動強度をMETs値にて算出した。1.1~2.9METsを低強度,3.0~5.9METsを中強度,6.0METs以上を高強度活動と分類した。それぞれの活動強度で活動時間を算出し、活動時間(分)×METsを身体活動量として算出した。1.1METs以上の身体活動について総活動時間を計算し,総身体活動量(METs・分)とした。非活動時間(分)は,1440分(24時間)と総活動時間の差より算出した。また歩行時間,歩行活動量(METs・分)を算出した。自律神経活動指標と身体活動量の関連を,Pearsonの積率相関係数にて検討した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則っている。また,聖隷クリストファー大学倫理委員会の承認を得ており,対象者,家族には口頭と文書にて説明し同意を得た。【結果】対象者は,平均年齢72.6歳,男性4名,女性4名であった。高強度活動を行っていた対象者は2名のみであり,高強度活動量と自律神経活動の関連の検討は行わなかった。24時間VLFと中強度身体活動量(r=0.84),歩行活動量(r=0.81)に有意な正の相関を認めた(全てp<0.05)。24時間VLFとその他の身体活動量指標には有意な関連を認めなかった。夜間VLFと低強度活動量(r=0.71),中強度活動量(r=0.92),総活動量(r=0.80),歩行活動量(r=0.80)に有意な正の相関を認め,非活動時間(r=-0.73)に有意な負の相関を認めた(全てp<0.05)。LF/HF、HFと身体活動量の指標には有意な関連を認めなかった。【考察】VLFのみ身体活動量との関連を認めたことから,身体活動量は持続的な自律神経活動に対して影響しやすいと考えられる。24時間VLFと中強度,歩行活動量に正の相関を認めたことは,歩行量の増加により種々のストレスに対する自律神経活動が改善される可能性を示唆する。また夜間VLFと,全ての身体活動量指標に関連を認めた。夜間は急性の自律神経活動の変化が少ない自律神経活動を評価でき,持続的な自律神経活動が反映されやすいと考える。身体活動量が少ない人では,日中のストレスにより亢進した交感神経活動が夜間まで遷延化した可能性がある。以上より研究仮説が支持されたため,身体活動量が多いと障害を増悪させうる長周期の自律神経活動の亢進が小さいことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究で認められた身体活動量と長周期の自律神経活動の関連は,身体活動量への介入により自律神経活動を改善し障害予防に貢献できる可能性を示唆した点で理学療法学研究として意義がある。また,長周期の自律神経活動を理学療法評価指標として確立する研究,身体活動量を増やすことで内部障害の予後を改善する研究に発展させることができる点で意義があると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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