理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-12
会議情報

ポスター発表
外反母趾形成術例の歩行時足圧分布の経時的変化について
西 恒亮小保方 祐貴長谷川 惇
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】 外反母趾は,疼痛がなければ放置することが大半であり,また,発生原因についても靴等の種々の要素が指摘されているが明確にはなっていない.歩行解析は,外反母趾例の歩行の特徴や発生原因を検討するために行われているが,手術例に対し経時的に歩行時足圧分布の変化について検討した報告は少ない.本研究の目的は,外反母趾形成術例の歩行時足圧分布を定期的に測定し,その経時的変化について明らかにすることである.【方法】 対象は,当院にて外反母趾形成術を受けた8症例で、年齢は67.0±6.1歳、性別は全員女性であった。術側は右が3症例、左が5症例で、術式は8症例がlapidus法であり,この術式の特徴は外反母趾の変形の強制と同時に,第1中足足根関節を固定する方法である.うち1症例がlapidus法と第2中足指節関節形成術を同時に行った症例であった。測定は,Medi capture社製のwin-podを用いた.サンプリング数60Hzにて自由裸足歩行を6回行い,自由歩行となる4歩目以降にて,歩行時の足底圧を左右3回測定し,その平均を求めた.測定項目は力,最大圧,平均圧とし,win-podの解析ソフトのエリア分析を用い,後足部,中足部,前足部外側,前足部中央,前足部内側,母趾に分けて算出した.足底圧測定は術前,術後3か月,6か月,12か月に行い,また,医師の治療上の必要から撮影された術前術後のレントゲン像より外反母趾角(以下HV角),第1,2中足骨間角(以下M1M2角)を求めた.統計解析にはSPSS ver.17.0 for windowsを使用し,Wilcoxonの符号付順位検定を用い,術前と術後3か月,術後6か月,術後12か月,術後3か月と術後6か月,術後12か月,術後6か月と術後12か月,そして,HV角とM1M2角の術前術後の差を求めた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言を遵守し,外反母趾の治療のため手術を目的に当院に入院した症例に対し,当院で通常診療として実施している測定データを本研究に使用することを口頭にて説明し,書面にて同意を得た方を対象に測定データを使用した.【結果】 HV角,M1M2角に関して,ともに有意な改善が認められた(HV角術前47.4±8.7°術後18.03±5.6°p<0.05,M1M2角術前20.6±3.8°術後7.3±3.7°p<0.05).また,足圧分布に関して力,最大圧,平均圧ともに,後足部は術後3か月,術後6か月、術後12か月と増加する傾向があった。これに対して、中足部と前足部外側では逆に減少する傾向がみられた。前足部内側と母趾では術後3か月,術後6か月,術後12か月すべてにおいて術前よりも力,最大圧,平均圧それぞれに有意な増加を認めた(p<0.05).【考察】 外反母趾形成術により,HV角,M1M2角はともに有意な改善を認めた.また,歩行時足圧分布は,力,最大圧,平均圧ともに術後3か月,術後6か月,術後12か月と経時的に後足部にて増加,中足部,前足部外側にて減少,前足部中央,前足部内側,母趾にて増加といった変化がみられた.特に変化が大きかったのは母趾と前足部内側であった.これらの結果は,外反母趾形成術による形態の改善が前足部内側荷重と母趾荷重を改善させ,少なくとも術後6か月には歩行時のpush offが確実に可能になったことを示唆している.よって,同術式が形態の改善のみならず,機能改善に寄与することが明らかとなり,足部形態と歩行機能に関係性があることが分かった.また,有意差は認めなかったが後足部や中足部の足圧分布の変化の傾向に関しては,今後,実際の歩行スピードの変化や第1リスフラン関節部でのアーチ高の変化を検討していきたいと考える.【理学療法学研究としての意義】 外反母趾形成術後の歩行時足圧分布の変化を経時的,かつ12ヶ月間の長期にわたりに追跡したことは,長期的な観点からの外反母趾形成術症例の歩行能力の変化を説明するための知見として意義が高い.

著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top