理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-19
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一般口述発表
関節リウマチの疼痛および身体機能と精神心理因子との関係性
島原 範芳松原 貴子
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抄録

【目的】我々はこれまで関節リウマチ(RA)患者において,疾患活動性の増悪により痛みに固執しやすく不安や抑うつが強くなる精神心理的な傾向があることを報告した。RAでは,病状進行に伴い疼痛症状や身体機能障害が増悪し,精神心理的問題を含め,その障害像は経年的に複雑化しながら進行する。そのようなRAにともなう疼痛,機能障害,精神心理的問題は,罹病期間や治療経過の影響を受けることが推測される。そこで今回,RA患者の疼痛,機能障害度,心理状態を評価し,それらの関係性を調べるとともに,病期による比較検討を行った。【方法】対象は,内科および整形外科的加療ならびに理学療法目的で当院に入院した女性RA患者15名(平均年齢66.9±8.7歳,平均罹病期間19.4±17.6年,classI:3名,classⅡ:12名)とした。評価は,疼痛の有無と部位および強度をvisual analogue scale(VAS),機能障害をpain disability assessement scale(PDAS)とhealth assessment questionnaire(HAQ),精神心理的問題をpain catastrophizing scale(PCS:「反芻」,「拡大視」,「無力感」)とhospital anxiety and depression scale(HADS:「抑うつ」,「不安」)について,それぞれ入院時と退院時に行った。統計学的解析は,各項目間の相関関係の検討にピアソンの相関係数を用い,さらに,対象を病期により発症後5年未満の早期群(6名,67.0±8.2歳)と発症後5年以上の維持期群(9名,66.8±9.6歳)に分類したうえで,群間比較にはマンホイットニのU検定を用い,それぞれ有意水準を5%未満とした。【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき,研究内容,個人情報保護対策,研究への同意と撤回について文面と口頭で対象者に説明し,同意を得て実施した。また,調査に際しては個人情報保護に努めた。【結果】疼痛の発生部位は手と膝に多かったが,その強度ならびにHAQは両群とも退院時に有意に減少した。また, PCSの反芻も両群とも退院時に有意に減少し,PCSの拡大視およびHADSの不安は維持期群でのみ有意に減少した一方で,PCSの無力感とHADSの抑うつは両群ともに変化を認めなかった。また,疼痛強度とHAQ(r=0.60)およびPCSの反芻(r=0.64)との間に中等度の相関が認められた。【考察】全対象で加療による疼痛の軽減とともに,機能障害,catastrophizingの反芻の改善がみられた。病期による検討では,病期の長い維持期であっても,疼痛の改善とともにcatastrophizingの反芻に加え拡大視,さらに不安感が改善する一方,病期に関係なく全RA患者で無力感と抑うつが改善しづらいこと,また,RAの疼痛が無力感および抑うつとの相関がないことより,RA患者の無力感や抑うつはRAの主症状である疼痛や機能障害とは無関係で異なる病因によって生じる精神心理的問題であることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】RA患者の疼痛,身体機能,精神心理因子の関係性について明らかにするとともに,病期によるそれら因子の変化を比較検討した点に本研究の意義がある。RA患者では病期によって精神心理的問題が異なり,維持期であっても加療後の疼痛軽減により機能障害や精神心理的問題は変化しうるが,抑うつやcatastrophizingの無力感については改善しにくいことから,RA患者のマネジメントにおいては身体機能に対する介入だけでなく,認知・情動面へのアプローチも積極的に取り入れていく必要があると考える。

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© 2013 日本理学療法士協会
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