理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-19
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一般口述発表
慢性痛患者に対する集団的リハビリテーションプログラムによる介入効果について
井上 雅之井上 真輔中田 昌敏宮川 博文梶浦 弘明長谷川 共美稲見 崇孝森本 温子櫻井 博紀長谷川 義修山口 節子池本 竜則新井 健一西原 真理牛田 享宏
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抄録
【はじめに、目的】慢性痛患者に対する集団的リハビリテーションプログラムは,欧米諸国において広く普及し,その有効性についてこれまでに多くの報告がされている.しかしながら我が国においては,保険制度やマンパワーなどの問題から,このようなプログラムを実施している施設は少ない.我々は平成23年10月より,愛知医科大学学際的痛みセンターと運動療育センターの共同で,慢性痛患者を対象とした少人数制による集団的リハビリテーションプログラムを「慢性痛教室」の名称で実施している.この教室では“痛みがあっても前向きで活動的な人生を送る”ことをテーマに,痛みに対する直接的なアプローチではなく,医師,コメディカルによる集学的,全人的アプローチを試みている.今回,慢性痛教室の詳細とその介入効果について報告する.【方法】対象は第1回(平成23年10~11月)から第4回(平成24年7~9月)までの慢性痛教室に参加した20名(男性8名,女性12名),平均年齢64.0歳(47~76歳)である.教室は週1回,全9回のスケジュールで実施し,定員は5~7人に限定した.プログラムは痛みに関する講義(30分),リラクセーション,ストレッチングなどのエクササイズ(30分),マシンを使用した有酸素エクササイズ(10分),歩行を中心とした水中エクササイズ(30分)から構成される.講義は痛みのメカニズム,認知行動療法,睡眠,栄養などについて医師(整形外科,精神科,麻酔科),理学療法士,管理栄養士が担当し,適宜グループミーティングを交えて行った.また運動指導は理学療法士,トレーナーが担当した.教室開始時と終了時に下記の評価を実施し,教室前後における各評価項目の変化について調査,検討した.評価項目は,1.痛みの強さ:Visual Analogue Scale(VAS),2.QOL:Pain Disability Assessment Scale(PDAS),3.心理・精神機能:Hospital Anxiety and Depression scale(HADA,HADD),Pain Catastrophizing Scale(PCS),4.形態:体重,Body Mass Index(BMI),体脂肪率(%FAT),腹囲周径(腹囲),5.身体機能:握力,全身反応時間(反応),長座位体前屈(前屈),開・閉眼片脚立位保持時間(開眼片脚、閉眼片脚),10mジグザグ歩行(10m歩行),起居動作テスト(起居動作),身辺作業テスト(身辺作業),6分間歩行距離(6MD),等尺性体幹屈曲・伸展筋力,等尺性膝屈曲・伸展筋力とした.統計学的処理は,各評価項目の前後比較に対応のあるt検定を使用し,危険率を5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】参加者は全て愛知医科大学学際的痛みセンターを受診する患者であり,教室参加に先立ち,主治医から1)教室内容,2)安全に十分に配慮して実施すること,3)参加者の機密保持に関する事項等に関し,十分な説明を行い参加同意を得た。【結果】全評価項目のうち,VAS(開始時:69mm,終了時:49mm),PDAS(27.0,20.1),HADD(8.5,6.1),PCS(30.0,25.8),体重(58.2kg,57.2kg),BMI(23.3,22.8),前屈(-0.4cm,2.8cm),開眼片脚(44.9秒,64.8秒),10m歩行(9.4秒,8.4秒),起居動作(10.6秒,8.0秒),身辺作業(9.1秒,7.4秒),6MD(477m,528m)において有意な改善を認めた.【考察】慢性痛患者は痛み以外にも意欲低下,睡眠障害,不安,抑うつ傾向,食欲不振,活動量低下などがみられ,身体的症状のみならず心理・社会的要因が複雑に絡み合っているとされる.今回の教室開始時における評価結果でも同様の傾向を示し,痛み,心理・精神機能,形態,身体機能に低下がみられたが,集学的アプローチで講義や運動指導を組み合わせたプログラムを実施することにより,痛みへの理解度を深め,合理的な認知の構成や,運動に対する恐怖を取り除いて活動量を増加させ,終了時における結果の改善に繋がったと考える.また慢性痛患者は社会的に孤立しがちなため,集団内でのコミュニケーションにより,心理面の不安も軽減できたと推察する.今後の課題として,教室終了後の介入効果の持続期間を調査し,フォローアッププログラムの導入について検討が必要と考える.【理学療法学研究としての意義】本研究は,難治性の慢性痛患者に対する我が国における集団的リハビリテーションプログラムの有効性について明らかにしたものであり,今後の慢性痛患者に対する治療アプローチの一助になるものと考える.
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© 2013 日本理学療法士協会
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