理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-11
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ポスター発表
通所リハビリテーション利用者における主観的幸福感に関連する因子の検討
大門 恭平生野 公貴尾川 達也岡本 昌幸瑞慶覧 朝樹谷中 沙友里
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抄録
【目的】高齢化率の急伸に伴い、維持期リハビリテーション(以下,維持リハ)の重要性が高まっており、効果的な維持リハの構築が急務である。維持リハにおける目的の1つにはQuality of Life(QOL)の向上があり、QOLの構成要素として主観的幸福感がある。近年では高齢者の主観的幸福感をいかに高めるかが社会的に重要な課題とされており、様々な分野で主観的幸福感に関する報告がされている。先行研究では主観的幸福感が高い人ほど身体的活動が多く健康増進につながるとの報告や、ポジティブな感情体験の割合や他者との関わりとの高い相関が示されている。しかし、リハビリテーション分野における主観的幸福感に関する報告は少なく、維持リハにおいて主観的幸福感の向上を目的とした介入報告はない。そこで本研究は、維持リハにおいて主観的幸福感を向上させるための介入手段を検討するために、予備的に当院通所リハビリテーション(以下,通所リハ)利用者における主観的幸福感に関連する因子を検討することとした。【方法】対象は当院通所リハを利用している106名中、身体機能等の測定が全て計測可能な者のうち、認知症等により著しくコミュニケーション能力が低下している者を除いた42名(男性19名、女性23名、平均年齢77.9±3.4歳)とした。介護度別内訳は要支援1:4名、要支援2:5名、要介護1:9名、要介護2:12名、要介護3:9名、要介護4:3名である。研究デザインは横断研究とし、主観的幸福感は生活満足度尺度(Life Satisfaction Index:LSIA)を用いて評価した。主観的幸福感に関連する因子として、基礎情報は年齢、性別、介護度、疾患、同居家族、通所リハ開始日からの日数、身体機能・能力は10m歩行時間、Timed Up & Go test、2分間歩行距離、Barthel Index、Functional Independence Measureの歩行項目、心理機能は、人生全般にわたるポジティブな心理機能を測定する「心理的well-being尺度」の全6項目の中から「人生における目的」と「積極的な他者関係」の2項目を調査した。「人生における目的」は人生における目的と方向性の感覚であり、「積極的な他者関係」は信頼できる他者関係を築いているという感覚を測定している。統計学的解析は、主観的幸福感を全対象者のLSIA得点の中央値より高い者(LSIA高得点群)、低い者(LSIA低得点群)2群に分け、従属変数を主観的幸福感、独立変数を基礎情報、身体機能・能力の評価項目、心理機能評価項目としてステップワイズ法による多重ロジスティック回帰分析を行なった。【説明と同意】本研究は実施施設長の許可を得て実施し、対象者には本研究で収集される資料の使用意図、個人情報を含めた資料の管理方法、同意の撤回の自由について口頭および書面にて説明し、同意を得た。【結果】LSIA高得点群は20名(平均10.9±1.9点)、LSIA低得点群は22名(平均4.9±1.9点)であった。多重ロジスティック回帰分析を行なった結果、LSIAに関連する因子として心理的well-being尺度の「積極的な他者関係」のみが抽出された。寄与率は17%であった。【考察】本研究より、主観的幸福感には信頼できる他者関係を築いているという心理機能が関連している可能性が考えられた。先行研究では、主観的幸福感が高い人ほど身体的活動が多く、身体能力との相関があると報告されているが、本研究ではLSIAと身体機能・能力の評価項目との関連性はなかった。これは、維持リハ対象者には身体機能・能力の高い人が、必ずしも主観的幸福感が高いとは限らない可能性を示す。つまり、維持リハ対象者に対して身体機能の維持及び改善を目的とした介入だけでは主観的幸福感の向上を目的とするには不十分であるといえる。本研究では心理的well-being尺度の「人生における目的」項目には関連がなかったが、「積極的な他者関係」項目において関連がみられた。よって、対象者自身が信頼できる他者関係を築いているという心理を促進させる介入プログラムや通所リハシステムを考える必要がある。【理学療法学研究としての意義】現在の理学療法学研究の治療介入研究は治療の方法論や介入戦略に注目した報告が多い。しかし、超高齢化社会を迎える日本のリハビリテーションにおいて、特に高齢者の幸せや最良の予後を生み出すためには、主観的幸福感を向上させることが重要である。主観的幸福感を向上させるためには、身体機能および能力の改善を目的とした従来の理学療法に「積極的な他者関係」という新たな介入戦略を付加する必要性を示唆する有意義な報告である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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