理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-18
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ポスター発表
歩行速度変化が底屈トルク・関節角度に与える影響
丹保 信人舘内 くみ子星 智彦千葉 さなえ布施 陽介渡邉 大貴遠藤 千秋平山 陽太白井 由貴根岸 映子
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抄録
【はじめに、目的】川村義肢社製Gait Judge System(GJ)は、歩行中の荷重応答期底屈(IC)トルク(ファーストピーク:FP)、遊脚前期底屈トルク(セカンドピーク:SP)、足関節運動角度を計測、数値化が可能な機器である。先行研究では歩行速度向上にはSP値増大が関与すると言われている。しかし歩行速度が向上した際に、FP値や歩行中の足関節運動角度の変化に関しての報告は少ない。今回、GJを使用し速度条件を変化させ10m歩行を評価した。本研究の目的は歩行速度の変化がFP値、SP値、歩行中の足関節運動角度とどのような関連があるか調査することである。【方法】対象は下肢に既往の無い20 代女性6 名(平均年齢24.7 歳± 1.3)。測定にGJを使用した。GJは短下肢装具Gait Solutionの油圧ユニットに発生する足関節底屈方向の制動力(Nm)や歩行中の足関節運動角度を計測する機器である。今回の調査では、対象者の左下肢にGJを装着し、10mの快適速度歩行、最大速度歩行をそれぞれ実施した。測定項目はFP値、SP値、ターミナルスタンス(TSt)からプレスイング(PSw)にかけての足関節運動角度(足関節運動範囲)の3 項目とした。GJの油圧抵抗値は2.6mm2/secであった。解析データは、快適歩行時、最大歩行時それぞれ2 回分から、波形が安定した歩行周期を選択、採集した。統計学的処理は、FP値、SP値、足関節運動範囲を快適歩行と最大歩行の群間にてt検定を行った。危険率は5%未満とし、数値は平均±標準偏差とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は対象者に書面にて同意を得た。研究、発表に際して当院倫理審査委員会の承認を得た。【結果】FP値は通常速度6.325 ± 2.879Nm、最大速度4.604 ± 1.892 Nmで群間に有意差は見られなかった(P=0.249)。SP値は通常速度3.921 ± 1.581 Nm、最大速度5.959 ± 1.241 Nmで最大歩行時において有意に増大した(P=0.032)。足関節運動範囲は通常速度12.075 ± 2.140°、最大速度11.049 ± 2.241°で群間に有意差は見られなかった(P=0.436)。【考察】研究結果から、歩行速度向上にSP値増大は関連があるが、FP値、足関節運動範囲は関連がないことが示された。SP値に関しては先行研究同様の結果が得られた。SP は、筋腱複合体の機能であるストレッチショートニングサイクル(SSC)により、TSt足関節背屈運動により下腿三頭筋‐アキレス腱に弾性エネルギーが蓄積され、プレスイングPSwで解放されることにより発生すると言われている。今回SP値が増大したのは、速度変化条件に応じてSSC活動が変化したためと考えられる。FP値に関しては、ICでの足関節やその他の関節肢位に個人差があったため一定の傾向が得られなかったと考えられる。足関節運動範囲に関しても、FP値同様にTSt〜PSw間での足関節肢位や、足関節肢位と上位分節との位置関係に個人差があったためと考える。今回の研究での疑問は有意差の見られたSP値と、有意差の見られなかった足関節運動範囲の関係である。SP値、足関節運動範囲の研究結果をまとめると、速度変化という運動課題に力の変化で対応し、関節運動角度の変化では対応していないことを示すこととなる。この条件に対応する身体組織は筋腱複合体以外該当しないと考えられる。この観点からも歩行速度向上には筋腱複合体の活動、SSCが重要であることが確認された。今後は、リハビリテーションプログラムにおいて、いかに効率的なSSCにつなげていくか考えていきたい。【理学療法学研究としての意義】本研究は、歩行速度の変化にSP値は関連があるが、FP値、足関節運動範囲は関連しないことを示すものである。結果を考察する中で、歩行速度向上には筋腱複合体の活動が特に重要であると考えられた。
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© 2013 日本理学療法士協会
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